次の日の夕食もまた豪華でした。

大広間に集まった生徒全てが料理よりも、誰が代表選手になるのだろうかと話し合っています。

グリフィンドールで入れたのはアンジェリーナ・ジョンソン先輩です。
フレッド先輩とジョージ先輩は年齢線に弾き出されてあえなく断念。真っ白な髭を生やした先輩が先程医務室に向かっていきました。

ホグワーツからの出場者にはセドリック・ディゴリー先輩の姿もありました。

「さて、ゴブレットはほぼ決定したようじゃ」

食事も大方過ぎたところでダンブルドア校長先生が言いました。
キラキラと輝くゴブレットに視線が集まります。

校長先生が振った杖で、大広間の明かりが失われ『炎のゴブレット』だけが輝いていました。

突然。ゴブレットの青白い炎が一気に燃え上がり、先から焦げた羊皮紙が飛び出しました。

「ダームストラングの代表選手は、ビクトール・クラム」
「そうこなくっちゃ!」

ロンの声が聞こえました。さすがは有名なクィディッチの選手です。人気は高いようで大広間は一気に拍手に包まれました。

そしてゴブレットから飛び出した2枚目の紙に、また大広間は静まり返ります。

「ボーバトンの代表選手は、フラー・デラクール!」

あの綺麗な女の子でした。(主に男子生徒の)拍手に包まれる中、彼女は優雅に前の方へと歩いて行きました。

さて、次はホグワーツの代表選手の発表です。
固唾をのむ、そんな空気の中、ダンブルドア校長先生の声が響きました。

「ホグワーツの代表選手は、セドリック・ディゴリー!」

隣のテーブル。ハッフルパフ生の大歓声が大広間を包みました。
ぐらぐらと揺れそうな程のハッフルパフ生の歓声に、私も合わせて拍手を贈ります。

にっこり笑っていると、頭の端がちくりと痛むのを感じました。

頭を抑えて、首を傾げます。この痛みはいつも未来が変わりそうな時にだけ現れる頭痛と同じでした。
でも、今は私、何もしていませんよね…?

不自然な痛みに首を傾げていると、微笑んだダンブルドア校長先生の言葉がまた大広間に届きました。

「結構、結構!
 さてこれで3人の代表選手が決まった。
 みんな打ち揃ってあらんかぎりの力を振り絞り、代表選手を応援してくれることと信じてい―――」

終わった筈の選考。ですがゴブレットがまた赤く燃え上がりました。

ちくちくと痛む頭は着々と悪化し、頭痛は私の身体を苛んでいきます。

「リク、貴女…大丈夫…?」
「…えぇ、ハーマイオニー、大丈夫…、です」

ハーマイオニーが心配の声をかける通り、私はいつの間にか歯を食いしばるようにして痛みを堪えていました。

どうして、こんなに、痛みが?

ダンブルドア校長先生はゴブレットから吐き出された紙を持っていました。
映画ではその紙は1枚しか無いはずなのに、それは2枚、校長先生の手に握られていました。

嫌な予感。そして声が響きます。

「ハリー・ポッター」

2枚目の紙には。

「リク・ルーピン」

どうしてゴブレットから私の名前が?


†††


割れそうに痛むその頭を強く押さえて、私はただ苦しげに息をしていました。

数秒の沈黙。

はっとしたようにハリーが呟きました。

「僕、名前を入れていない。
 君達、僕が入れてないこと知ってるだろう?」
「ハリー! リク! ここへ!」

ダンブルドア校長先生はいつもの笑顔を無くし、私達を呼んでいました。

頭を軽く抑えながら私はハリーの腕を引いて立ち上がります。彼の耳元で小さく囁きました。

「ハリー、私は信じてます。
 今は行きましょう」
「う、うん…」

背負っている鞄をぎゅと抱きしめます。
中にはフェインがいます。鞄に手を入れると、彼が私の指先を舐めるのを感じました。

沢山の視線を集めながら大広間から出る扉を抜け、小さな部屋へと入りました。

中では暖炉の火が燃え上がっていました。そこには既に先程選ばれていった代表選手達が集まっています。

不安げに周りをみるハリーの腕を、私はぎゅうと掴んでいました。

その時、バクマンさんが部屋に入ってきました。

「すごい。いや、まったくすごい、紳士諸君。――淑女もお2人。
 ご紹介しよう。信じがたいことかもしれんが、三校対抗代表選手だ。
 4人目と5人目の」

選手の反応はそれぞれでした。

クラムさんはムッとした表情で私達を見ます。
ディゴリー先輩は途方にくれた表情。
デラクールさんは顔をしかめています。

「でも、なにかーの間違いにちがいありませーん」

私達もそうでありたいと願っていますよ。デラクールさん。

背後の扉がまた開き、大勢の人が入ってきました。
ダンブルドア校長先生に、クラウチさん、カルカロフ校長先生、マダム・マキシーム校長先生、それにマクゴナガル先生とスネイプ先生です。

デラクールさんはマダム・マキシーム校長先生につかつかと歩み寄りました。

「マダム・マキシーム! この小さーい男の子も女の子も競技に出るとみんな言ってまーす!」
「ダンブリー・ドール。これはどういうこーとですか?」
「わたしもぜひ、知りたいものですな、ダンブルドア。
 ホグワーツの代表選手が3人も…」

校長先生2人の否定的な声。
確かに開催校から3人もの代表選手がいるなんて、不公平です。

そんな2人の校長先生の言葉を受けながら、ダンブルドア校長先生が私達に近寄り、強く肩を掴みました。

「ハリー、リク。君達は『炎のゴブレット』に名前をいれたのかね?
 上級生に頼んで『炎のゴブレット』に君達の名前をいれたのかね?」
「いいえ」
「同じく、私、も…」
「リク?」

ハリーは振り返って、頭を抑えている私を覗き込みました。その時、頭の痛みが今までよりも激しくなっていたのです。

心配そうな顔をしたハリーに曖昧に微笑みます。

部屋にいたスネイプ先生が突然、私の両耳を引っ張り、それにより顔を上げられ、無理矢理、スネイプ先生の方を見上げることになりました。乱暴です。

スネイプ先生は静かに一言だけ呟きました。

「…………いつものか」
「…えぇ。痛いです」
 でも大丈夫です。私は、大丈夫です」

弱々しく微笑むと、暫くしてからスネイプ先生の手は離れていきました。

ですが、やっぱり痛みがあまりにも酷いので、スネイプ先生のローブの裾を握らせて貰いました。
その時、不安げなフェインが鞄の中から出てきて、デラクールさんの短い悲鳴をいただきましたが。

ハリーや私は疑われています。潔白の無実であることは事実なんですけどね。

カルカロフ校長先生が中立の立場であるバクマンさんとクラウチさんに声をかけた。
クラウチさんのキビキビとした声が響きます。

「規則に従うべきです。『炎のゴブレット』から名前が出てきた彼らには試合で戦う義務がある」
「あぁ、そうだ。魔法契約の拘束力が働いているからな。都合のいいことにな、え?」

丁度ムーディ先生が部屋に入って来たところでした。
いつもの不気味な姿に私は掴んでいるスネイプ先生のローブを更に強く握りました。

「都合がいい?
 何のことかわかりませんな」
「わからんか?
 カルカロフ、簡単だ。こやつらが代表選手に選ばれれば戦わなければならぬことを知っていて誰かが名前をいれた。
 もし、ポッターとルーピンが死ぬことを欲したものがいるとしたら?」


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