ふかふかのベッドで目を覚ますと。私は一瞬どこにいるのだろう?という疑問を抱き、すぐにヴォルデモートさんの家でお泊りしたことを思い出しました。
横には既に起きているフェインの姿。彼を優しく撫でていると、昨日はなかったマネキンさんが部屋に佇んでいることに気付き、驚きの声を上げました。
「こ、これを着た方がいいんでしょうね…きっと…」
昨日の服とは打って変わって、今度は真っ白いワンピースがマネキンさんに着せられていました。
ベッドの上で、用意された服を着ると、またキュッとサイズが変わり、私にぴったりの大きさとなりました。
この魔法、本当に便利ですね。覚えて帰りたいです。
「起きたか?」
扉の外から声が聞こえます。はい。と返事をすると、扉が開きヴォルデモートさんが入ってきました。
「おはようございます! ヴォルデモートさん!」
「ちゃんと着たか」
「は、はい…。えっと、ありがとうございます。服までご用意していただいちゃって」
私はベッドの端に座り、膝にフェインを乗せたままヴォルデモートさんを見上げました。
スカートの裾を少し持ち上げてみます。シンプルな形ですが、とっても可愛いです。
ヴォルデモートさんは特に何かを言うことなく、私の前に手を差し出してくれました。
にっこりと微笑んで私はその手をとって立ち上がります。
立ち上がると足元にスルスルとナギニが這い寄ってきました。
私の肩に乗ったフェインが短い威嚇の声を上げましたが、ナギニはふいと私とヴォルデモートさんを見比べているようでした。
そのままヴォルデモートさんに手を引かれて、昨日のパーティで使った部屋に入ると、丸いテーブルは片付けられ、代わりに長く長方形のテーブルに、真っ白いテーブルクロスがかかっていました。
中にはまだ誰もいません。
ヴォルデモートさんはテーブルの1番端につき、私にその斜め前に座るよう指示をしました。
続いてヴォルデモートさんはナギニに蛇語で何かを指示すると、ナギニは静かに部屋を抜けていきました。
私達は静かにしていると、やがて扉が開いてナギニが戻ってきました。
ナギニを従えながら中に入ってきた人物はぶつぶつと文句を言いながら、ヴォルデモートさんに近づいていきました。
「まだ本調子じゃないのに、朝食を取れとか…」
私の表情に驚きが満ちていきます。思わずガタッと立ち上がると、彼は小首を傾げたあと呆れたように微笑みを浮かべました。
「相も変わらず馬鹿面だね、リク」
そこには5年生の時のヴォルデモートさんの記憶――リドルくんが立っていました。
「リドルくん…!」
私は嬉しくなって思わず席を離れ、リドルくんの元に駆け寄って彼に飛びつきました。
肩に乗ったフェインがぐわんぐわんと揺れて悲鳴をあげていましたが、私はぎゅうとリドルくんを抱きしめていました。
「リドルくんです! ヴォルデモートさん! リドルくん!!」
「煩い」
ヴォルデモートさんの一喝。リドルくんが口元に笑みを浮かべながらヴォルデモートさんを見ていました。
「そうか。既に記憶の媒介だけの僕を復活させるだなんて。未来の僕も何していると思ったが。リクに絆された?」
「あまりふざけているともう1度消す。いいな?」
「せっかくリクに会えたんだから、やめてよね」
リドルくんとヴォルデモートさんとがお話をしています。私は2人を交互に見ながら目を丸くさせました。
「リドルくんの声が2重に聞こえます…! あれ? ヴォルデモートさんの声が2重?」
「同じことだ」
再び聞こえる呆れたような声。
私はぎゅうとリドルくんを抱きしめたあと、にっこりとヴォルデモートさんに振り返りました。
「ふふ。嬉しいです。ありがとうございます、ヴォルデモートさん!」
「……俺様にはもう必要ないからな。くれてやる」
「僕だって、ここにいるより、リクといたほうが面白い。
最初からここに残る気なんてない」
テーブルに肘をついたヴォルデモートさんが、私とリドルくんを見ていました。
私はわーいと素直に喜びます。またリドルくんと一緒にいることができるのですね!
そして、リドルくんから離れながら私は席に戻ります。
ヴォルデモートさんがリドルくんを睨んでいました。やがてリドルくんがにっこりと笑みを浮かべました。
「安心してよ。リクには手を出さないから」
「もし妙なことしたら、もう1度消す」
「えっと、喧嘩しちゃ駄目ですよ?」
首を傾げながらそう言うと同じ声音で2人分の溜め息を頂きました。失礼な。