昼食を取り終わったあと、私はやってきたアンブリッジ先生のDADAの授業に顔をしかめました。

溜息をついて諦めた私が教室に入っていくと、アンブリッジ先生は既に教壇に座っていました。
ハリー達も来ていて、真ん中ぐらいの席に座っていました。私は空いていた1番後ろの席につきました。

クラス全員が座ると、アンブリッジ先生は「こんにちは!」と挨拶をしました。
何人かがぼそぼそと返しますが、先生は「チッチッ」と舌を鳴らして首を振りました。

「それではいけませんねぇ。皆さんどうぞ、こんなふうに『こんにちは、アンブリッジ先生』。
 もう1度いきますよ、こんにちは、皆さん!」
「こんにちは、アンブリッジ先生」

今度は全員が答えました。アンブリッジ先生はにっこりと微笑みました。
それから、生徒に杖をしまうように指示すると、黒板に浮かび上がった文字を写すように言いました。

そこには、闇の魔術に対する防衛術 基本に返れと、それに合わせた授業の目的が現れました。

1.防衛術の基礎となる原理を理解すること
2.防衛術が合法的に行使される状況認識を学習すること
3.防衛術の行使を、実践的な枠組みに当て嵌めること

この3つを写すようにそう言うと、優しく言い聞かせるように話しだしました。

「さて、みなさん、この学科のこれまでの授業は、かなり乱れてバラバラでしたね。
 先生がしょっちゅう変わって、しかも、その先生方の多くが魔法省指導要領に従っていなかったようですからね」

ものの数分で私の中でのアンブリッジ先生に対する評価は底辺を彷徨っていました。
これまでのDADAの先生の中には私の大好きなリーマスさんも含まれているのです。さらりと大好きな人をけなされて、私は既に不機嫌になっていました。

アンブリッジ先生は教科書の5ページを読むように言います。
教科書を読むのは嫌いではありませんが、『初心者の基礎』とかかれたそのページは、5年生の私達が読むにはあまりにも退屈で、教科書を開きつつも顔をしかめました。

その時ハリーの隣でハーマイオニーが真っ直ぐに手を挙げているのに気がつきました。教科書を開いてもいません。
私は静かに前に座るハーマイオニーを見つめていました。そして、嫌な予感も感じ取っていました。

アンブリッジ先生はというと、そんなハーマイオニーの様子を頑なに気が付かないフリをしていました。
が、やがてクラスの半数以上がハーマイオニーに気が付きはじめると、アンブリッジ先生はやっと気が付いたかのようにハーマイオニーに話しかけました。

「この章について、何か聞きたかったの?」
「この章についてではありません。違います」
「おやまぁ、今は読む時間よ。
 他の質問なら授業が終わってからにしましょうね」
「授業の目的に質問があります」

黒板には3つの目的が書かれているままでした。
私はじぃとアンブリッジ先生を見つめつづけていました。

異変に気が付いたフェインが鞄から顔をだそうとましたが、私はそれを軽く押さえます。

アンブリッジ先生はハーマイオニーを見つめていました。

「貴女のお名前は?」
「ハーマイオニー・グレンジャーです」
「ではMs.グレンジャー。ちゃんと全部読めば、授業の目的ははっきりしていると思いますよ」
「でも、わかりません。防衛術を使うことに関して何も書かれていません」

確かに、実践で防衛術を使うことは想定されていません。
ハーマイオニーの視線は真っ直ぐに僅かに笑っているアンブリッジ先生を捕らえていました。

「防衛術を使う?
 まぁMs.グレンジャー。貴女が防衛術を使う必要がある状況が起ころうとは考えられませんけれど?」
「魔法を使わないの?」

ロンが声をあげました。

「私のクラスで発言したい生徒は手を挙げること。Mr.…?」
「ウィーズリー」

ロンの手が高く上がりました。アンブリッジ先生はにっこりと微笑み、ロンに背を向けました。
すぐにハリーとハーマイオニーが手を挙げました。

「Ms.グレンジャー、他に何を聞きたいの?」
「『DADA』の授業は防衛呪文の練習をすることではありませんか?」
「残念ながらMs.グレンジャー。貴女よりもっと賢い魔法使い達が新しい指導要領を決めたのです。
 貴女方が学ぶのは、安全で危険のない方法で――」
「そんなの何の役に立つ? もし僕達が――」
「挙手、Mr.ポッター!」

ハリーの拳が宙に突き付けられました。ですが今度は他の何人かの生徒の手も挙がりました。

「貴方のお名前は?」
「ディーン・トーマス」
「それで、Mr.トーマス?」

トーマスくんが戸惑うように。しかし、はっきりと言いました。

「ええと、ハリーの言う通りでしょう?
 もし僕達が襲われるとしたら?」
「貴方はこのクラスで襲われると思うのですか?」
「いいえ、でも――」

アンブリッジ先生はトーマスくんの言葉を押さえ込むように言いました。


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