ハリーはリドルくんの使い方をまだわかっていないようでした。

完全復帰したハーマイオニーが色々と試していましたが、まだリドルくんは現れていないようです。

そんな日が続き、2月の14日になりました。

世はまさにバレンタインデー!
私は朝起きて、ハーマイオニーとロンに友チョコをあげました。
ハリーは昨晩のクィディッチの練習が響いているのか、まだ起きてきていませんでした。

チョコを渡された2人はきょとんと首を傾げていました。私はにこりと笑います。

「私が前に住んでいた日本では、主に女性から親しい友人や恋人にチョコレートを渡す日だったんです。
 ハーマイオニーにも、ロンにも、お世話になってますから」
「――知らなかったわ!! どうして言ってくれなかったの? それを知っていたら私も渡したかったのに!」

ハーマイオニーが飛びつくように私の身体を抱きしめてくれました。
むぎゅと埋まりながら私は締まりなく笑います。

「嬉しいです。ハーマイオニー」
「来年は絶対渡すわ。絶対よ」
「確かに、カードとかより食べれるものの方がいいや」
「まぁ。ロンったら」

ハーマイオニーがクスと笑いながらロンを見ます。
中々起きて来ないハリーとは大広間で合流しようと、私達は談話室を出ました。

入ると、私達は部屋を間違ってしまったのか。と、顔を見合わせました。

広い壁は一面ピンクの花で覆われ、淡い青の天井からハート型の紙吹雪が舞っています。

グリフィンドールの席に着いてから職員席を見ると、満面の笑みのロックハート先生と、対称的なスネイプ先生が見えました。

「凄い。ですね…」
「無いよ。これは無い」

呆然とする私とロン。ハーマイオニーだけがクスクスと笑っていました。
あとからやってきたハリーも、ぽかんと口を開けています。

私はまずハリーにチョコを渡しました。ハリーはまた当惑の顔。
先ほどした説明をもう1度して、ハリーがにっこりするのを見ていました。

「ありがとう。リク。僕、知らなくて」
「そんな。全然いいんですよ。私が贈りたかっただけですし」
「来年は僕も贈っていい?」

にこりと笑ったハリーに私は満面の笑顔を向けました。

「バレンタインおめでとう!」

その時、ロックハート先生が叫びました。

それからはまた大変でした。

46人からバレンタインカードをもらったと嬉しそうに言ったあとに、フリットウィック先生に『魅惑の呪文』を、スネイプ先生から『愛の妙薬』を教えて貰うことを奨めました。
私はスネイプ先生の表情を見て、またクス。と笑ってしまいました。怖いです。とっても。

それにしかめつらをした小人さんがバレンタインカードを渡そうと、1日中配り歩いていました。
時には教室に乱入し、先生達を困らせていました。

小人さんはハリーも存分に困らせていきました。

グリフィンドールの1年生の前でハリーを引き止め、1曲歌っていったのです。


あなたの目は緑色、青い蛙の新漬のよう
あなたの髪は真っ黒、黒板のよう
あなたがわたしのものならいいのに。あなたは素敵
闇の帝王を征服した、あなたは英雄


ハリーには悪いとは思ったのですが、私は精一杯笑わせていただきました。
ムスとしたハリーが私を見ます。
私は必死に無表情に戻そうとしますが、すぐに笑ってしまいました。

「さぁ、もう行った。行った。すぐ教室に戻れ」

パーシー先輩が私達に声をかけました。任務を全うした小人さんはすぐにいなくなりました。
喧騒を見に来たドラコくんも、ここにいました。

手には何故か黒の日記。ハリーが落としてしまったのでしょう。ハリーはすぐにそれに気づきました。

「それは返してもらおう」
「ポッターはいったいこれに何を書いたのかな?」

見ていた1年生の中に、ジニーちゃんもいて、表情がサッと変わるのが見えました。
ドラコくんはハリーの日記だと思い込んでいますが、いい状況ではありません。

私がドラコくんに話し掛けようとすると、ハリーが杖を取り出し叫びました。

「エクスペリアームス(武器よ 去れ)!」

ドラコくんの手から日記が離れ、日記はロンが受け止めました。
怒り狂うドラコくんの隣でパーシー先輩も、監督生としてハリーを叱っていました。

満足そうなハリー達が教室に向かう前に、私はドラコくんを追いかけました。

「もう授業始まって――」
「すぐに行きます!」

ドラコくんに走って追いつくと、彼は私を見て苦い顔になりました。私は首を傾げます。
が、私は鞄からチョコを取り出しました。

「ドラコくん、この前はごめんなさい…。
 あの、これ、チョコ作ったんです。よかったら」
「リク、ここじゃまずい」

サッと表情を変えるドラコくんが廊下の隅に寄りました。
チャイムが鳴り、廊下に人影が見えなくなります。

私はもう1度首を傾げました。ドラコくんが困り顔のまま、チョコを受け取りました。

「ありがとう。リク。
 でもこのことは内緒にしてくれ」
「? は、はい」
「スリザリンとグリフィンドールじゃ、駄目なんだ…。
 父上が、許さないんだ」

小さく呟いたドラコくん。
私は最近ドラコくんが私を避けていた理由が少しわかった気がしました。

ドラコくんは純血の、貴族のお家です。
私では、身分とか、何とかが合わないとか言われたのでしょう。

私は小さく聞きます。

「お手紙なら、書いてもいいですか?」
「は?」
「私達、お友達。ですよね」

私がきくと、ドラコくんは少し止まったあと、ニヤッと笑ってくれました。

「あぁ。当たり前だ」

私も満面の笑顔を返しました。


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