何故か不服そうな顔をしているフレッド先輩とジョージ先輩に首をかしげつつ、中に入ると、幾分楽そうにしているアーサーさんを見て、安堵の微笑みを浮かべました。
アーサーさんは私達の姿を見て、にっこりと笑いかけてくれました。
「やぁ、リク。君も来てくれたんだね。ありがとう」
「いいえ…。何も出来なくてすみません…」
「君のせいじゃないさ」
「そうよ。貴女が気に病むことなんてないわ」
アーサーさんに肩を抱かれたモリーさんの言葉。私は微笑みを浮かべて、軽く頭を下げました。
そして、アーサーさんはすぐに顔を険しくすると、トンクスさんに向き直り、囁くように問いました。
「それで、私が倒れたあと、どうなったんだ?」
「……地下を隈なく探したけれど…、蛇はどこにも見つからなかったらしいのよ」
トンクスさんはそう言うと、同じく表情を険しくさせて、ムーディ先生をちらりと伺いました。
「『例のあの人』は蛇が中に入れるとは期待してなかったはずだよね?」
「わしの考えでは、蛇を偵察に送り込んだのだろう。やつは立ち向かうべきものを、より、はっきりと見ておこうとしたのだろう」
「じゃあ、アーサーさんの見張りがなかったら、ナギニはもっと時間をかけてあそこを見て回った可能性があるってことですか?」
「だろうな。やはり、あそこの見張りを欠かしてはいけない…」
騎士団としての会話をしながら、それぞれがそれぞれに思案顔をしていました。ムーディ先生が確認するように聞きます。
「それで、ポッターは一部始終を見たと言っておるのだな?」
「えぇ…」
モリーさんの声はかなり不安そうな声でした。
「今朝、私がダンブルドアとお話したとき、ハリーのことを心配なさっているようでしたわ」
「むろん、心配しておるわ。
あの坊主は『例のあの人』の蛇の内側からことを見ている。それが、何を意味をするのか、ポッターは当然気づいておらぬ、
しかし、もし『例のあの人』がポッターに取り憑いているなら、事は急を要す」
病室に沈黙が落ちました。ですが、本当にヴォルデモートさんがハリーに取り憑くだなんてことができるのでしょうか。私は小さく言葉を零しました。
「……ハリーなら、大丈夫ですよ。
それこそきっと、ロンやハーマイオニーと一緒にいたら、ハリーがヴォルデモートさんに負けることはないはずです」
「それはそうと、最近、あの小僧達と別行動をしているとマンダンガスから聞いているが? 護衛任務は――」
「アラスター。思春期にはありがちなことよ!」
私に問いただそうとしたムーディ先生の言葉を遮り、トンクスさんがムーディ先生の足を踏みつけました。苦笑を零す私にトンクスさんが微笑みかけました。
モリーさんが立ち上がります。そろって私達もゆっくりと立ち上がりました。
「じゃあ、アーサー。また顔を出すわ」
「わかったよ、モリー」
そう言って、私達はアーサーさんに別れをいい、病室の外で待っているハリー達の所に向かいました。なにやらハリー達は顔が青ざめているようでした。
†††
グリモールド・プレイス12番地についたあとも、ハリーは体調が優れないようでした。
モリーさんが気を使って、ハリーを寝室に上げていました。
何かあったのかと心配になりましたが、ハリーに話しかけることもできず、そのままハリーは寝室に上がって行きました。
厨房に戻ると、置いてきていたホグワーツから荷物が届いていました。荷物に混じって不機嫌そうに佇んでいたフェインを抱き上げ、私は優しく頭を撫でました。お疲れ様でした。
トンクスさんは別の仕事がある。と夕食前に立ち去ってしまいましたが、クリスマスをみんなここで暮らすことになったということで、シリウスはみんなと一緒に上機嫌でクリスマスの飾りつけを行っていました。
夕食の少し前になると、ハーマイオニーが顔を出しました。本当はご両親とスキーに行っていたようですが、ハーマイオニーだけはこちらに戻ってきたみたいです。
ハーマイオニーはロンの姿を確認してから、不思議そうにハリーを探していました。
「リク、ハリーを見ていない?」
「先程気分悪そうにしていたので…多分、上の階にいるとは思うんですが」
「ハリーは私達を避けているのよ」
私とハーマイオニーの近くに来たジニーちゃんが困ったようにそう言いました。ハーマイオニーは怪訝そうな顔をします。
「避けている? どうして?」
「……リクには、悪いけれど…。ハリーも病室での話を聞いちゃったのよ」
「病室での?」
「その…『例のあの人』がハリーに取り憑いているんじゃあないか。って話」
ジニーちゃんの言葉を聞いて私は顔をしかめます。迂闊でした。フレッド先輩やジョージ先輩は『伸び耳』を持っていたんですっけ…。
表情をしかめている私の横、ハーマイオニーは胸を張って、大きく溜め息をつきました。
「全く、ハリーってば。私、呼んでくるわ!」
そう言って帽子もマフラーもつけたまま駆けていくハーマイオニーを、ジニーちゃんと私がぽかんと見送ります。時々、ハーマイオニーの行動力の高さに驚かされてしまいます。
くすくすと笑ったジニーちゃんが私の手を掴んで、一緒にハーマイオニーとハリーを待つことを提案しました。私は苦笑をこぼします。
「私は…」
「私達を避けているのはリクも一緒よ?
クリスマスぐらい、何も気にせず楽しみましょうよ」
微笑むジニーちゃんがとっても眩しくって、私ははにかむように微笑みを浮かべていました。
手を繋いだまま、ハリーとロンの寝室に向かう間、私は不安げな声を零していました。
「ですが、ハリーは私を許してくれるでしょうか」
「リクは何か、ハリーに悪いことをしたと思っているの?」
私は…。ジニーちゃんの問いかけに、私は困惑するばかりでした。
「私は、ハリーを全力で助けたいと思っています。
でもあの時…、あの墓場で、私は本気でヴォルデモートさんの復活を止めようとはしていなかった。…気がします」
あの醜く爛れた赤ちゃんの姿のヴォルデモートさん。私はヴォルデモートさんが、その赤ちゃんの姿のまま死んでいくのがとっても嫌でした。
「………でも、そんな不安定な私のせいで、ハリーを傷つけてしまいました。それに、ディゴリー先輩は……」
もう2度と戻らないディゴリー先輩。傷つけてしまったハリー。
それでも、ヴォルデモートさんを絶対的な悪として見れていない、私。
深く黙り込んだ私を、ジニーちゃんがじぃっと見つめていました。そして、寝室の扉の前まで来たあたりで、ジニーちゃんはにこりと微笑みました。
「大丈夫よ、リク。
リクはそれでも、今でも、ハリーを守ろうと思って、騎士団にいるんですもの。
ハリーもきっと、わかってくれているわ」
「……そう…でしょうか」
「きっと、そうよ。ほら、入って。リク」
ジニーちゃんは満面の笑みで、私の手を引いていきました。中にはロンの姿だけがあります。ロンは不思議そうな顔をしていました。
「どうしたんだ?」
「これからハーマイオニーが、ハリーを連れてここに来るわ」
「おっどろき。さすがハーマイオニー」
そう言ったロンに、ジニーちゃんが溜め息をつきました。私はクスクスと笑みを零しました。