やがて入ってきたハーマイオニーとハリー。ハリーは私の姿を見て、驚いているように思えました。
ハーマイオニーちゃんはどんどんとハリーに口を開く間すら与えずに話していました。
「私『夜の騎士バス(ナイトバス)』に乗ってきたの。
ダンブルドアが私に何があったのか教えてくださったわ。でも、正式に学期が終わるのを待ってから出発しなくちゃいけなかったの。
貴方達に逃げられて、アンブリッジはもうカンカンよ。ダンブルドアは、ウィーズリーさんが聖マンゴに入院中で、貴方達にお見舞いに行く許可を与えたって説明したんだけど…、ところで――」
ハーマイオニーはそこで1度言葉を区切ると、ベッドに腰掛け、ハリーを見ました。
「気分はどう?」
「元気だ」
「まぁ、ハリー。無理はするもんじゃないわ。
ジニーから聞いたわ。聖マンゴから帰ってきてから、ずっとみんなを避けているって」
「そう言っているのか?」
ハリーは怪訝そうにジニーちゃんを見ましたが、ジニーちゃんは全く気後れしていないようでした。
「だって、本当だもの! 貴方は誰とも目を合わせないわ」
「へぇ。それはおかしいね」
「ねぇ。全然わかってもらえないと思うのは、よしなさい」
肩を竦めたハリーに、ハーマイオニーがぴしゃりとそう言いました。
ジニーちゃんは困惑の表情を浮かべたまま、言葉を続けました。
「私達、貴方と話したかったのよ、ハリー。だけど、貴方ったら、帰ってきてからずっと隠れていて…」
「僕、誰にも話しかけて欲しくなかった」
「あら、それはちょっとおバカさんね」
ジニーちゃんが怒ったようにそう言いました。
「『例のあの人』に取り憑かれたことのある人って、私以外にいないはずよ。
それがどういう感じなのか、私なら教えてあげられるわ」
ジニーちゃんがはっきりと言ったその言葉に、ハリーは深く深く黙り込みました。そうです。ジニーちゃんにはリドルくんに取り憑かれたことがありました。
「僕…、忘れてた」
「幸せな人ね」
「ごめん」
本当に申し訳なさそうにしたハリーがジニーちゃんに謝りました。
「それじゃあ………君は僕が取り憑かれていると思う?」
「そうね…。貴方、自分のやったことを全部思い出せる? 何をしようとしていたのかわからない、大きな空白期間があったりする?」
「ない」
「それじゃ『例のあの人』が貴方に取り憑いたことはないわ」
ジニーちゃんはこともなさげにそう言いました。
「あの人が私に取り憑いたときは、私、何時間も、自分が何をしていたのか思い出せなかったの。どうやって行ったのかわからないのに、気がつくとある場所にいるの」
「でも、僕の見た、君のパパと蛇の夢は…」
「私もそういった夢を見たことがありますよ」
ずっと黙って話を聞いていた私でしたが、ハリー側でにこりと小さく微笑みを浮かべました。
「私も夢で、何キロも先の、今起きている出来事を、夢で見ることが出来ましたよ。そこで出会う人とお話すらも。
今はもう、リスクが高すぎるので出来ませんが…」
「でも、僕は、蛇の中にいたんだ。僕自身が蛇みたいだったんだ」
「君はベッドを離れていないぜ」
ロンがそう言いました。
「僕、君が眠りながらのたうち回るのを見たよ。僕達が叩き起すまで少なくとも1分ぐらい」
そうみんなに言われて、ハリーは考えを纏めるかのように部屋の中を行ったり来たりを繰り返しました。
ですが、やっと、納得できたようでした。
「ありがとう…、僕…、不安で」
はにかむハリーに笑顔を零していると、下の階から私を呼ぶ声がしました。私はぴょこんと立ち上がります。リーマスさんの声です!
「リーマスさんが、帰ってきたみたいです!
私、先に厨房に下りていますね!」
「あ、リク、ちょっと待っ」
ハリーが何かを言い切る前に、私は既にその部屋を出て、階段を下りていました。
2段飛ばしでいきそうな勢いで階段を下り、私は厨房に向かいました。
厨房ではリーマスさんが微笑みを浮かべながら、私の姿を確認して、両手を広げました。その間へ、私はダイブ。
「おかえりなさい、リーマスさん」
「ただいま。リクちゃん。いい子にしてた?」
「してました!」
ぎゅうぎゅうとリーマスさんを抱きしめてそう言う私に、マグカップ片手ににやりと笑みを零したシリウスが顔を覗かせました。
「ん? いい子だったか?」
「いい子でしたよ! …多分」
「どうだったかなー」
「シリウス。リクちゃんがいい子じゃない訳、ないだろう?」
私を抱きしめ返しながらそう言い切ったリーマスさんに、私は表情を緩め、代わりにシリウスは表情を険しくさせました。
リーマスさんと一緒に帰ってきたらしきトンクスさんが、慰めるようにシリウスの肩に手を置いていました。