フィレンツェ先生の授業は本当に独特で、不思議なものでした。
1階にあった11番教室の中は、先生が住んでいる森の中のように沢山の樹木が生えていました。ダンブルドア校長先生がフィレンツェ先生の為に用意したのだと言います。
そして、その森の中のような教室の中で、先生が手を振るうと、天井に星が現れて、それをみんなで見つめました。
ヒトという枠を超えて、大きな動きや運命を教えるフィレンツェ先生に、私達は不思議な感覚を味わっていました。
フィレンツェ先生の深くて落ち着いた声を聞きながら、私は寝転んで星空を見上げていました。
外で授業終了のチャイムがなると、みんなビクッと驚き起き上がりました。まるで禁じられた森の中にいるように思っていたのです。
私も身を起こして、きょろきょろと左右を見回します。
近くの木に巻きつくようにして、フェインが身を落ち着かせているのを見て、私は彼を丁寧に肩に乗せました。フェインもこの教室が気に入ったようでした。
そんなこんなでアンブリッジ先生の圧政の元、日々が過ぎ去り、いつの間にか3月が訪れていました。
試験も残り3ヶ月と近付き、ストレスを感じた生徒がパニックを起こして『鎮静水薬』を飲まされる生徒が、数人出てきました。
ハリー達はそんな中でも『DA(ダンブルドア軍団)』の会合の回数を増やしているようでした。今日も、私に声をかけ、寝室を出て行ったハーマイオニー。
『調子に乗って、敵に見つかる時期だね』
日記を開くと、そんな文字が浮かび上がりました。私は頬を膨らませます。
「そんなこと言わないでくださいよ…」
『いいや。実際、ボロが出始めてもおかしくはない。
どんなにうまく隠していても、あの人数じゃあ見つからないわけはない。密告者でも現れたら1発だ』
そう言うリドルくんに、私は不安を募らせました。あまりにも不安そうな表情をしていたのか、紗幕を引いたベッドの上に、いつの間にかリドルくんが実体化していました。
「『必要の部屋』に行ってみる? 8階のバカのバーナバスの絵画はわかるだろう? その近くに必要の部屋は現れる」
「………はい。近くを通ってみたいです」
「乗り込んでしまえばいい。面白いことになる」
低く笑うリドルくんにジト目を向けます。それを物ともしないリドルくんは私のローブを手に取り、いつの間にか抜き取っていた私の杖でローブを大きくすると、そのローブを着込みました。私はリドルくんが着たローブを引っ張ります。
「もしかして、そのまま行く気ではありませんよね」
「その、もしかして。さ」
「駄目です!! 絶対駄目です! 誰かに見つかってしまったらどうするんです!」
「安心しなって。教師にさえ見つからなければどうにかなる」
「ほら、行くよ」と立ち上がって私の手を引くリドルくん。
未だに私は反抗の意を見せていましたが、リドルくんはそんなことを物ともせず、私の手を引いて、歩き出してしまいました。
不服そうな私と、反対に楽しげなリドルくんが、ホグワーツの廊下を手を繋いで歩きます。
一応はしっかりとローブのフードを被ったリドルくんが談話室を出て、図書室の前まできた辺りで表情を僅かに表情を険しくさせました。
私はリドルくんを見上げます。リドルくんは苦笑を零しつつ、私を図書室の中に連れ込みました。
「どうしたんです?」
「遅かったみたいだ。ご覧」
リドルくんが図書室の入口から、廊下を指します。そこでは慌てた表情で走っていく生徒が何人かいました。顔をよく確認すると『DA』メンバーのように思えます。
表情を険しくさせる私。リドルくんが図書室の奥の方へ私を誘導しながら、言葉を零しました。
「今行くと無関係のリクまで疑われる。大人しく待っていたほうが得策だ」
「………でもハリー達が捕まってしまったら……」
「最後はあの狸爺がどうにかするだけだ。
僕はリクに被害が及ぶのを黙って見ているつもりはない」
不安げな私の額にキスを落とすリドルくん。私が顔を真っ赤にしていると、ちょうどその時、図書室に何人かのスリザリン生が誰かを探すようにキョロキョロとしながら入ってきました。
深くローブをかぶるリドルくん。私は何もなかったかのように、近くの本へと手を伸ばしました。
やがて、いなくなったスリザリン生達を確認してから、私はリドルくんに振り返ります。
改めてリドルくんの姿を確認した私は、私のローブを、グリフィンドールカラーのローブを着るリドルくんににっこりと笑みを向けました。
「赤色も似合いますね、リドルくん」
リドルくんは不満げに鼻を鳴らしたあと、私の耳を少し痛いぐらいに齧っていきました。