先生達がアンブリッジ先生のいない廊下や教室でひそひそと会話をする中、もう年号目かはわからなくなってきている『教育令』に基づいたホグワーツ高等尋問官令が、掲示板に張り出されていました。
その内容は、ホグワーツに働いている教師は自分の科目に関すること以外の情報を、生徒に一切与えるな。というものでした。

アンブリッジ先生が廊下を歩いて、だらしない姿をしている生徒がいないかどうか目を凝らしている姿も多くなりました。

そんな、学校が再開し、ホグズミード行きの週末も過ぎ、数週間経った日。

大広間でフェインと一緒に朝食をとっていると、1羽のフクロウを皮切りに、数え切れないほどのフクロウがグリフィンドール寮のテーブルに降り立ちました。
私は驚きで目を丸くしつつ、その中心を見つけます。中心にはハリーの姿がありました。

ばさばさと沢山のフクロウが羽を散らしています。フクロウに流れされてきた一冊の雑誌の表紙に、私は満面の笑みを浮かべました。


ハリー・ポッターついに語る
「名前を呼んではいけないあの人」の真相。――僕がその人の復活を見た夜


いつの間に取材など受けていたのでしょう。でも、煽り文はこれで十分です。私はにこにこと笑みを浮かべ、流れてきた雑誌を1冊手に取ります。
そして読者から届いたであろう沢山の手紙を開封しているハーマイオニーに、声をかけました。

「ハーマイオニー! 1冊頂いても?」
「もちろん、OKよ!」

楽しげなハーマイオニーが返事をして、また次の手紙を開いていました。

私はその雑誌『ザ・クィブラー』を素早くしまい、アンブリッジ先生が困惑しながら、ハリーに近づいて言っている間に、教職員の席に近づきました。
私とお話しようと身を屈めるマクゴナガル先生に、私は『ザ・クィブラー』を差し出しました。

表紙の煽り文を見たマクゴナガル先生の厳しい、でも愉快そうな表情。私はにっこりと笑顔を浮かべました。

「次の教育令が楽しみです」

その日の朝食後、私が思っていたとおり、すぐに掲示板や廊下に新しい教育令が出されていました。
内容はもちろん『ザ・クィブラー』を所持していたものは退学処分に処するというもの。

この教育令のおかげで、『ザ・クィブラー』の存在を知らなかった生徒でも興味を持つこととなり、そして興味を持った全校生徒が『ザ・クィブラー』を読み終わるまでに、あまり時間はかかりませんでした。

アンブリッジ先生よりも、生徒達の方が数枚上手だったようで、表紙に透明の呪文をかけたり、開くとただのノートに見えるようにしていたりと。アンブリッジ先生が違反者を見つけ出すことはできなかったようでした。

そしてそんな日々が何日か続きました。

私は廊下をご機嫌に歩きます。これで、一般人の何人か、何十人か、そして何百人かがヴォルデモートさんの復活を信じたでしょう。ホグワーツ内でのハリーを見る目も変わったような気がします。
魔法省は未だにヴォルデモートさんの復活を否定していますが、それ以外が信じてしまえば、なんの理由もなくなります。

私は上機嫌で廊下を歩いていました。

その悲鳴が聞こえるまでは。

思わず、身を固くさせた私が杖を抜き取ります。鞄の中からするするとフェインが顔を覗かせ、辺りを見渡していました。
私の周りにいた生徒も何事かと、表情を困惑に包みます。その間に2度目の悲鳴。

「……玄関ホールです。いきましょう、フェイン」

悲鳴を追いかけるように、私は玄関ホールに急ぎます。何事かと大広間から溢れてきた生徒の間をくぐり抜け、玄関ホールにたどり着くと、そこには半狂乱のトレローニー先生と、アンブリッジ先生がいました。

私は前に出て、その2人を見つめます。

「いやよ!」

トレローニー先生が甲高く叫び声をあげました。

「で、できないわ…! あたくしをクビになんて! あたくし、もう、16年も、ホグワーツは、…あたくしの…家です!!」
「家、だったのよ」

アンブリッジ先生は毒の滴る笑みを浮かべたまま、泣き崩れるトレローニー先生を見ていました。私はぐっと息をこらえました。
騒ぎに駆けつけてきたマクゴナガル先生が、つかつかとトレローニー先生に近寄り、背中をぽんぽんと数回叩きました。アンブリッジ先生の怪訝な顔。

「さぁ、シビル。落ち着いて…ホグワーツを出ることにはなりませんよ…」
「あら。マクゴナガル先生。そうですの? そう宣言なさる権限がおありですの?」
「それはわしの権限じゃ」

アンブリッジ先生の毒の言葉に、いつの間にか現れたダンブルドア校長先生が静かにそう言いました。アンブリッジ先生はとびきり不快そうな声で小さく笑いました。

「あなたの? ですが、このとおり――」

アンブリッジ先生は丸めた羊皮紙を取り出して、厳粛に読み上げました。
トレローニー先生の教育は魔法省が要求する基準を満たさなかったとして、トレローニー先生を停職させ、解雇した。という内容でした。

ですが、その内容を受けても、ダンブルドア校長先生は微笑みを浮かべたままでした。

「もちろん、貴女のおっしゃるとおりじゃ。高等尋問官として、貴女は確かにわしの教師達を解雇する権利をお持ちじゃ。
 しかし、この城から追い出す権利は持っておられない。遺憾ながら、まだその権利は校長がもっておる」

ダンブルドア校長先生はそういうと、トレローニー先生を抑えているマクゴナガル先生を見ました。

「ミネルバ。シビルに付き添って、上まで連れて行ってくれるかの?」
「承知しました。お立ちなさい…シビル」

マクゴナガル先生がトレローニー先生の手を引きます。人並みからスプラウト先生が飛び出し、トレローニー先生のもう一方の手を掴みました。そして、その後ろからフリットウィック先生が出てきて、トレローニー先生のトランクを『ロコモーター(運べ)』で、動かしました。

先生方がいなくなる中、ダンブルドア先生は微笑みを浮かべながら、アンブリッジ先生にさらなる言葉を投げかけました。

「それにのう、わしはもう新しい「占い学」の教師を見つけておる」
「見つけた――?」

アンブリッジ先生が驚きの声を上げる中、ダンブルドア校長先生は微笑みを浮かべたまま、玄関扉の方を向きました。
そこから聞こえるのは蹄の音。頭と胴は人間で、その下は黄金の馬であるパロミロの身体。

「フィレンツェじゃ。貴女も適任だと思われることじゃろう」

にっこりと微笑みを浮かべるダンブルドア校長先生。アンブリッジ先生の大嫌いな『半獣』のその美しい姿に私は思わず微笑みを浮かべたのでした。


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