魔法省令
ドローレス・ジェーン・アンブリッジ(高等尋問官)は、アルバス・ダンブルドアに代わり、ホグワーツ魔法魔術学校の校長に就任した。

以上は教育令第28号に従うものである。


次の日、その掲示を見て、私は息を飲みました。ダンブルドア校長先生が、このホグワーツからいなくなってしまったのです。

『DA(ダンブルドア軍団)』の存在が魔法省側にバレてしまったダンブルドア校長先生は、その場にいた闇祓い達をも退け、姿現しが出来ないはずの校内から逃走したのだといいます。
ダンブルドア校長先生が全ての責任を負って逃亡したので『DA』を組織していたハリー達にお咎めはなかったと聞きます。

そうしてやっと校長の座を手にしたアンブリッジ先生は新しく『尋問官親衛隊』というスリザリン生中心の組織を作り、彼らに生徒を罰則させる権利を持たせました。
大広間に飾られた寮の点数を記録する大きな砂時計は、今やスリザリンだけがその場を維持し、他の寮は殆ど石が溜まっていませんでした。

廊下を歩く生徒は極端に少なくなりました。そして、スリザリン生だけが大手を振って廊下を歩いていました。他の寮生は自寮の談話室に篭ることが多くなったように思えました。

そして、私は今、静かな地下牢教室にいました。
ふうと落ち着いた様子を見せる私と、それを呆れたように睨んでいるスネイプ先生。

「ここで寛ぐな」
「ここはいいですねぇ。少し冷たくてひんやりしてますけど、どこよりも静かです」

ぐたーっとのんきに伸びをしながら、受注されてきた薬草を分別する私。
スネイプ先生は私の向かい側に座りながら、私が分別した薬草をすり潰したりして、加工していました。

私の隣ではフェインが、スネイプ先生と一緒に乾燥したバイアン草を粉々にしています。
そして、分別して出てきた蜘蛛の死骸をキラキラとした目で見るフェイン。私はフェインの頭を撫でました。

「食べちゃ駄目ですよ」
「………ひとつぐらいなら構わん」

宥めた私でしたが、スネイプ先生が表情ひとつ変えないままそう言ったので、私は驚きの視線を向けました。
蜘蛛の死骸を杖で動かし、フェインのもとに下ろすスネイプ先生。嬉しそうにおやつを飲み込んだフェインが満足げにまた作業に戻っていきました。

私はくすくすと笑みを零します。本当、いつの間にかスネイプ先生とフェインが仲良くなってくれて、私はとっても嬉しく感じます。

と、その時、地下牢教室の扉がノックがされないまま開かれました。
扉に背を向けていた私はビクリと肩を震わせましたが、スネイプ先生が私を制するように、そのまま素早く立ち上がりました。

「これは、これは校長先生。いかがなさいましたか」

甲高い、作られた女の子のような声が聞こえました。アンブリッジ先生です。
私は変わらず分別を続けます。いつの間にかフェインは私の影に隠れていました。私のペットは聡明です。

「スネイプ先生。『真実薬』を出していだだけません?」
「『真実薬』を? 何故?」
「ポッターに使用したいんですの」

甘い声が聞こえました。スネイプ先生の気配が薬品棚の方に向かいます。
やがて、先生は1つの赤いラベルの貼られた小さめの瓶を持ってきました。思わず息をのむでしたが、そのまま作業を続けました。

「3滴もあれば十分でしょう」
「ありがとう、スネイプ先生。
 ところで、あれは何をしているのかしら?」

アンブリッジ先生の興味は私に移ったようでした。スネイプ先生は嘲るような声を零します。

「あぁ…。グリフィンドールは既に減点出来るよな寮点は残っていないのでな。罰則を受けさせている」

アンブリッジ先生はその言葉に満足したようでした。そして、地下牢教室から出て行くアンブリッジ先生。
私は作業を一時中断し、くるりとスネイプ先生を振り返りました。私には笑み。

「お気遣い、ありがとうございます」
「罰則以外で生徒がここにいる理由もない。普通はな。
 怪しまれるわけにもいかない」

元の位置に戻り、不満そうにするスネイプ先生。私はにこにこと笑みを浮かべました。

「でも。とっても甘そうな『真実薬』をお渡ししたんですね」

私はスネイプ先生がお渡しした赤いラベルのついたその瓶がただのガムシロップ入れだというのを知っていました。
忌々しそうな溜め息をついた先生の前、私は微笑んでいました。本当の『真実薬』は私がお預かりしていたのですから。

「下手に騎士団の情報が流れても良くない。あの程度で構わないだろう。
 『本物』は今どこに?」
「トランクの中に入れてあります。フェインにも悪戯しないように言ってあるので、大丈夫ですよ」

そう言いながら、分別を終わらせた私は、目の前の根生姜に手を伸ばし、それを刻み始めます。


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