その時、突然、2階の方から悲鳴が上がりました。
ぴたりと足を止めて、首を傾げる私は騒ぎの方へ向かいます。
すると、そこには今まではなかったらしき大きな沼地が出来ていました。
沼地にはまりながら悲鳴を上げる生徒が数名いる中、驚きながら遠目に見る私の両際に、フレッド先輩とジョージ先輩が私を包むように立ちました。
「あぁ、リク! あんまり近づくなよ」
「そこらへんで何本か『臭液』も投げてきたし」
「俺達の姫に被害が行ってもごめんだ」
「「こっちおいで」」
駆け抜ける2人に手を引かれ、私達はその廊下を退散します。
少し離れた所で立ち止まると、最初にジョージ先輩が私の左手の甲にキスを落としました。
「リク。今までお世話になった。俺達はやっとこの学校から離れようと思う」
次にフレッド先輩が私の右手の甲にキスを落としました。
「だけど、不安に思うことなかれ。寂しがることなかれ。
俺達はもうとっくに学業は卒業してると思ってるし、俺達はいつだってダイアゴン横丁にいる」
「ダイアゴン横丁に?」
「俺達の新店舗さ」
「『W・W・W(ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ)』。ダイアゴン横丁93番地」
「リクをいつだって歓迎しているよ」
「特典も用意しておくから」
「アンブリッジになんか負けるなよ」
最後にジョージ先輩がニヤッと笑って、私の頭を撫でていきました。
混乱する私をよそに『尋問官親衛隊』が2人を追いかけてきて、2人はまた駆け出しました。私はふふと笑顔を浮かべていました。
「絶対、行きますからねー!」
走っていく2人に声が聞こえたかはわかりませんが、2人は生き生きと廊下を走り、アンブリッジ先生が必死の形相で追いかけてきた時には、既に箒に乗って素早く逃げていってしまいました。
それから数日間語られたフレッド先輩とジョージ先輩の逃走劇は、ホグワーツの伝説になる兆しすら見せたのでした。
隠れてアンブリッジ先生に悪戯をする生徒があとを立たなくなったのも、その後からでした。
みんなが先輩達が発明した『ずる休みスナックボックス』を活用し、アンブリッジ先生の授業が度々成り立たなくなるほどでした。
みなさん、アンブリッジ先生に対する策は完璧みたいでした。
†††
『またやっているのかい?』
ベッドに寝転がりながら魔法史の復讐をしていた私の側で、リドルくんの黒い日記に文字が浮かび上がりました。
時刻は既に12時に迫っていました。もう少しで日付が変わるところでした。私は文字を書き込みます。
「だって、明日からは『O・W・L(フクロウ)』なんですもん」
『ちゃんと寝ないと記憶は定着しないよ。それに『O・W・L』は2週間続く。
体調を崩す前に休むのが得策だね』
どこまでも正しいリドルくんの言葉に私は、苦笑を零します。そして、私は魔法史の教科書をパタンと閉じました。
「では今はリドルくんのアドバイスに従っておきまーす。あと、試験に対する心意気とかあります?」
『さぁ? 僕は試験前に緊張したこともないしね』
はっきりとしたその文章を不満に思った私は、リドルくんの日記の中に可愛らしい狼さんの絵を描いてあげました。
すぅとその絵が消えてしまってから、リドルくんの不服そうな言葉。
『やめてよね』
ふふと静かに笑って、私はリドルくんの日記を静かに閉じて、ベッドサイドの明かりを消しました。
次の日。賑やかな大広間の中、5年生だけは黙々と教科書を読み返していました。
私も最初の試験である呪文学の教科書「呪文学問題集」を読み返しながら、復習を重ねていました。
フェインは試験中、試験監督の教授に預けられることになっています。朝食にチキンを一飲みしたフェインは満足そうに私の鞄の中に戻っていきました。
そして始まった試験に、私は緊張しつつも大きな失敗もすることなく、順調に進んで行きました。
どうやら試験監督は、ホグワーツの教師だけではなく、外部の人間も行うようで、実技試験の時に見知らぬ教授に出会って、いつも以上に緊張しました。
連日続く試験でしたが、私に出来ることはしたと思いますし…。思い違いでなければ魔法薬学では「優」をいただけたような気がします。
そのことを帰ってからリドルくんに報告すると、彼は『君は本当に魔法薬学は好きだよねぇ』と呆れたようにそう日記のページに浮かび上がらせました。
『DADA』の試験では、教授が私が『守護霊』の呪文を使えるということを知っていたみたいで、私は杖を振るって、小さな狼の守護霊を生み出したりしました。これが加点になればいいんですけれどね。
試験は何事もなく過ぎ去ろうとしていました。