混乱しつつも、私はぬくもりが残っている気がする肩に少し触れて、長く息を吐きます。
目を伏せて気持ちを落ち着かせていると、いつのまにかリドルくんがすぐ私の隣に立っていました。驚きに思わず肩を震わす私を、リドルくんは呆れたように見ていました。

「スネイプはリクに何を求めているのやら」

きっとどこかで見ていたであろうリドルくんが、スネイプ先生が去っていった方向を見つつ、呆れたかのような声でそう言いました。
何も返事をすることが出来なくて、自分の肩に手を触れさせていると、リドルくんが寄り添って慣れたように私の頭を撫でました。見上げると、彼のどこか寂しそうな表情。

「…君は幸せそうだねぇ」
「…私、幸せそうに見えました?」

リドルくんは口を閉ざします。無言は肯定。私はリドルくんから顔を背けさせて俯きます。
ルーナちゃんが大変だという時期に、私は何を嬉しそうにしているのでしょうか。

内心、自分を叱責しながらも、自然と赤くなってしまった頬を落ち着かせるためには少し時間がかかってしまいそうでした。


†††


私は長い廊下を歩いて地下牢教室に向かいます。今日は魔法薬学の授業が入っていました。

ホグワーツ自体の本来の性質が壊れかけているといっても、授業自体がなくなることはありません。
以前のように宿題が出されるということも殆どないのですけれども。

1人、教科書を抱えたまま廊下を歩いていると、向こう側から慌ただしい音が聞こえてきました。

反射的に杖を取り出しながら音が向かってくる方向を見つめていると、マクゴナガル先生の姿が見えました。
マクゴナガル先生ならば、と杖を下ろして走ってくる彼女を見つめていると、若干慌てた表情のマクゴナガル先生は気絶した小柄な生徒を抱えていました。私の肩が震えます。

マクゴナガル先生は私の姿に気が付いたようでした。ですが、特段何かを言うこともなく廊下をかけていきます。
そして先生とすれ違うその瞬間、私はその生徒を見つめてその子の容態を確認しました。
ハッフルパフ寮生のその女の子に、目立った外傷はありません。どうやらカローさんたちの罰則を受けたわけではなさそうです。

誰にもバレないように一息つく私ですが、気絶してしまったことに変わりはないということを痛感します。
きっとストレスや緊張から来た疲れで倒れてしまったのでしょう。以前ならばありえないこととであろうと、今のホグワーツではあまり珍しいことではありませんでした。

私はその場で足を止め、きつく瞳を閉じます。事実を確認し、それを受け止めつつ、私は再び地下牢教室に向かうために歩き出しました。
私は被害者などではなく、むしろ加害者側なのですから。

長い階段を下り、魔法薬学の教室に入ると、疲れを隠しているスラグホーン先生が、朗らかな笑みを浮かべていました。
どうやら少し遅れて来てしまったようで、既に集まっていた生徒達の視線が私に向きます。ですが、生徒全員が私と目を合うことを恐れるかのようにサッと視線を逸らしました。

その中で唯一視線をそらさなかったドラコくんの姿が目に入ります。ドラコくんもどこか体調が悪いかのように思えました。
私は彼に小さく微笑み返して、生徒達から少し離れた場所へと腰を下ろして教科書を置きます。ドラコくんは不安げに私を見ていました。


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