ハリーの元に行くと、彼の視線が私に向きます。私は静かに話しだしました。

「ハリー。少しいいですか?」

ハリーは治療していた手を止め、ハッフルパフの生徒の横を立ち上がります。
ハッフルパフの生徒から離れるためにもハリーはゆっくりと歩き出します。私はハリーの横に並ぶように歩き出しました。リドルくんは何も言わずに私達を交互に見つめていました。

「………僕はリクのことがわからないよ」

すぐそばには私とハリーしかいないところまで来ると、ハリーは静かにそう言いました。続けられる言葉を私は黙って聞いていました。

「リドルを連れて、スネイプを助けて、なのにどうしてここにいるの?
 敵なの? それとも味方なの?」
「………これを、ハリーに」

私はハリーの質問に答えることなく、手に持っていた試験管を差し出しました。
試験管の中では白い靄のようなものが静かに漂っています。スネイプ先生の記憶が静かに漂っていました。

「憂いの篩で見てください。ハリーに知っていて欲しいのです。スネイプ先生がどんな人だったのかを。先生の本当を。
 ハリーがこれからしなくてはいけないことも、きっとこの中にあるはずです」

視線を上げて、私はハリーを見つめます。私はスネイプ先生のようにただ凛と背筋を伸ばして前を見ていました。ハリーを見つめていました。
スネイプ先生がしようとしたことを、彼の望みを、叶えられるように。

「終わらせましょう。ハリー」
「………うん」

一瞬黙り込んだハリーは短く頷いて、私が差し出した試験管を手に取りました。私は口元だけに笑みを浮かべます。
そしてじぃと私達を見つめていたリドルくんへと振り返りました。

「リドルくんは?」
「ここにいる。防御壁を張り直しておくよ。まだ僕の魔力は残ってるからね」

彼は片手で杖を弄びながら私に向かってにっこりと微笑みかけました。でも私は心配に表情を暗くします。

「でも…、大丈夫ですか?」

リーマスさんは未だリドルくんを信用しきれないでしょうし、ここにはリドルくんを誤解している人がたくさんいます。
そのことを思って口に出すと、リドルくんは優しげな表情を浮かべて私の頭を再び撫でてくださいました。

「理解してもらおうとも信頼してもらおうとも考えていない。そんなのリクにだけして貰えればいい」

リドルくんは紅い瞳に私だけをいれて、微笑んでいました。

「僕はリクを守り通す。リクの望みを叶える。
 そして、そのリクはこのホグワーツを守りたいと、君達を守りたいと思っている。
 なら僕は、ホグワーツも、君達も、守る。
 僕は僕の全力をかけて、リクの望みを叶える」

凛とした自信満々ないつもの声でそういうと、リドルくんは最後に少しだけ照れくさそうに「それだけさ」と言葉を続けました。

「……無理はしないでください」
「リクもね」

お互いに掛け合った言葉。私はいつもリドルくんがそうしてくれるように、軽く抱きしめながら少し背伸びをして彼の髪にキスをしました。
離れた時、まんまるに目を大きくさせて驚いているリドルくんが見えて、私は少し笑ってしまいます。僅かに頬を染めたリドルくんは不機嫌そうな顔をして、私の背中を押し出しました。


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