リーマスさんのDADAの授業はすぐに大人気の授業となりました。
2回目以降の授業も面白く、私達はすぐに虜になったのでした。
「でも、リーマス先生のお部屋にみんなお話を聞きに言ったりするので、私が行きづらくなりました」
「それでまたここに?」
「そういうわけじゃないですけれど……」
久しぶりに、私はスネイプ先生の地下牢教室へやってきていました。
生徒に大人気のリーマスさんは、授業のわからない所も空き時間に教えていたりして、とっても忙しそうだったのです。
今、私は生徒に人気のないスネイプ先生の教室です。人気がないとは失礼ですけども。
リーマスさんを独占できないことに恥ずかしながらも嫉妬しながら、私はいつものように大鍋を綺麗にしていました。
最近のスネイプ先生は機嫌が悪い様子でした。
ネビルのおばさまの格好をしたボガード・スネイプ先生のこともあり、はリーマスさんの名前を出すたびに、キッと脅すように瞳が光るのでした。
私は大鍋の清掃、先生は何かの調合を進めながら、時々思い出したかのような会話をするのでした。
「この前、初日から授業に行かなかったと聞くが?」
「さ、サボったわけじゃないですよ、少し、体調が悪くて…。
あ、あの、リーマス先生も知っているんですか?」
「もちろん。暫く煩かった」
リーマスさんの名前にまた顔をしかめたスネイプ先生に私はクスクスと笑いました。
綺麗にし終わった大鍋を定位置に戻していきます。
この作業も既に手馴れたものとなっていました。
戻し終わったあと、私は1判前の席に座って先生の手元を見ていることにしました。
大鍋の中で青色をした液体の中に、大小様々な白や赤や緑の粒が泳いでいるのを見るのは退屈しませんでした。
小さく呟きます。
「いつもの授業もこんなふうに綺麗な色のものが出来たらいいんですけど…。
いつも、ドロドロとした液体で、薬っぽいですよね」
「吾輩は薬の作り方を教えているのだ。遊ばせる必要はない」
「凄い、綺麗ですね」
話を半分に聞いていた私はまたぼんやりと呟きました。
大鍋の中ではコロコロと大きな粒がぶつかり合って、小さく砕けていきます。
小さくなった粒はさらに小さくなって、丁度、金平糖くらいの大きさになりました。
さらにかき混ぜていくと、青い液体がすぅと消えていき、小さな粒達だけが残りました。
私が差し出した瓶に、それを詰めていくスネイプ先生。
これで私用の翻訳薬の完成です。
「いつもありがとうございます」
「いい加減覚えていただきたい」
「私が作ったらこの苦さが倍増するのです。
なんででしょう」
1度、手順を調べて作ってみたのですが、いつも食べている薬よりもずっと苦くなってしまって、それ以来作っていません。
本当、ジュースと一緒に飲めればいいんですけど…。
ぷくと頬をふくらませて瓶を睨んだ私を、スネイプ先生がじとと見ていました。
私はその視線に気がついて、首をかしげます。
「どうしました?」
「ルーピンといる時と態度が違うな」
「私の、ですか?」
言われて、少し俯きました。
そういえばリーマスさんと一緒にいる時は、スネイプ先生の前にいるのが、何故かモヤモヤして、すぐにリーマスさんの背に隠れてしまうのです。
私は首をかしげたまま、スネイプ先生を見ました。2人の時は普通にしていられるんですけれど。
「なんででしょうね」
困ったように笑うと、スネイプ先生はふいと視線を逸らしてしまいました。
また、首をかしげます。
†††
私のペットがヘビのフェイン。
ハリーはシロフクロウのヘドウィグ。
ハーマイオニーは猫のクルックシャンクス。
そしてロンはネズミのスキャバース。
フェインはその中でも、クルックシャンクスとはとても仲が良いようでした。
(ヘドウィグには未だにヤキモチを焼いているみたい)
それは悪いことに、ロンには気分がいいものではありませんでした。
2匹とも、隙あらばスキャバースを狙うのですから。
談話室で初めてのホグズミードへの日程が決まり、サインの無いハリーをどうにか行かせられないか。と話していました。
その時に、大きなクモの死骸を咥えたクルックシャンクスと、その背に乗ったフェインが帰ってきたのでした。
「わざわざ僕達の前でそれを食うわけ?」
顔をしかめるロンに、私は苦笑。確かに慣れていないとグロイ映像ですね。
ですが、ハーマイオニーはクルックシャンクスにベタ惚れの様子で、クルックシャンクスを抱き上げました。
「お利口さんね。クルックシャンクス。1人で捕まえたの?」
「シューシュー」
「『場所を教えたのは俺』だって。フェインが」
「いい子ですねぇ、フェイン」
ハリーがフェインの言葉を訳してくれました。
いいなぁとハリーを尊敬の眼差しで見つめていると、ロンがイライラとした様子で『天文学』の宿題である星座図に取り組みました。
「そいつをそこから動かすなよ。スキャバースが僕の鞄で寝ているんだから」
私とハリーの欠伸が重なりました。
目があったハリーとクスと笑い合いながらも、星座図の続きを始めました。
突然、クルックシャンクスがロンの鞄に飛びかかりました。
ロンが怒鳴りながらクルックシャンクスを鞄からもぎ取ろうとします。
が、クルックシャンクスは鞄を引き裂く勢いで爪を立てたまま離れません。
怒鳴るロンの声とハーマイオニーの悲鳴が重なりました。
「離せ! この野郎!」
「ロン、乱暴しないで!」
「クルックシャンクス、やめてください!」
確かにスキャバースを捕まえなければなりませんが、こんなふうに捕らえてしまったら、ロンとハーマイオニーの仲が悪くなってしまいます。
私は傍観していたフェインを見つめました。
「フェイン、彼女を止めてください!」
「……シャウ」
渋々。といった感じで、フェインがクルックシャンクスに飛びつきました。
首根のあたりに巻きつくと、シューシューと何度か鳴いています。
クルックシャンクスはロンの鞄から離れて、サッと離れていきました。
談話室を飛び出すクルックシャンクスを私とフェインが追いかけました。
後ろではロンとハーマイオニーの言い争いが聞こえていました。
「待ってください、クルックシャンクス。待ってください!」
走っていくクルックシャンクスを私は追いかけました。
本当、これから先が思いやられます。