私達がシリウスと、リーマスさんに手紙を送って、談話室に戻って来るとお祭り騒ぎがすでに始まっていました。
周りには何故か星や火花が散っています。
絵の上手なトーマスくんがハリーや私の似顔絵を描いた旗を作ってくれていました。
クスクスと笑みを零しながら、アップルパイを口に運びました。
ロンやハーマイオニー、ハリーもそばにいます。私は幸せに頬を緩ませました。
「おっどろき。これ、重いや」
ジョーダン先輩がテーブルに置いてあった金の卵を持ち上げていました。
「これ、どっちのだ?」
「ハリーのですね。私のは寝室にありますから」
「じゃあハリー! 開けてみようぜ! 中に何があるか見ようぜ」
ジョーダン先輩の声に何人かが同調しました。立ち上がったハリーが卵についている溝に爪を立ててこじ開けました。
響き渡る悲鳴。卵からの音でした。
「黙らせろ!」
フレッド先輩からの叫び声が聞こえ、バチンと卵が閉じられました。
キーンと鳴っている耳を押さえながら、私はロールケーキに手を伸ばしました。
みんなはがやがやと次の課題について考えていました。
声は悲鳴に聞こえ、バンジー妖怪の声だとか、拷問の声だとか、磔の呪文だとか。
いろいろな案が飛び交う中、私はイチゴタルトを口に運びました。
タルトを食べ終わったあと、ミルクレープに手を伸ばした私を見て、側にいたジニーちゃんが声をかけました。
「リクって甘いもの好きよね」
「はい! いくつでもいけますよ。
でも1番はリーマスさんが作るデザートが好きです」
「本当にルーピン先生が好きなのね」
笑うジニーちゃんに私も笑顔を返します。
次にティラミスを食べようとすると苦笑するジニーちゃんに「でも太るわよ」と言われ、両手を膝の上におくことにしました。
†††
次の日の朝。廊下の先から現れたスネイプ先生が、1人で歩いていた私とすれ違う時に、思い出したかのように私を呼び止めました。
首を傾げてスネイプ先生を見上げていると、先生は持っていた教科書を、私の頭目掛けて振り下ろしました。
バシンという音と痛み。
「…!? …!?」
「よく考えてから行動したまえ」
「え? えぇ?」
いつもは私に何かあれば声を上げるフェインが、今日は大人しくスネイプ先生の方へと行ってしまいました。なんだか裏切られた気分です。
私はむぅと唸りながら、また歩き出したスネイプ先生とフェインを小走りで追いかけました。
「殆ど怪我もなく卵をゲット出来たんですよ?」
「やり方というのがあるだろう」
溜め息と共にそういったスネイプ先生は背中を向けてしまって、私はその背中を静かに見つめました。
「………………もしかして…心配してくれたんですか?」
「グリフィンドール10点減点」
「えぇ、酷い!」
†††
12月に入り、寒さが堪えるようになってきました。
さすがに4年目となれば慣れてきたものの、寒いものは寒いですよね。
マクゴナガル先生の変身術の時間、膝かけを握りしめていると、マクゴナガル先生が生徒を見回して、いいました。
「皆さんにお話があります。
クリスマス・ダンスパーティが近づきました」
このダンスパーティーでは、外国からの客人と知り合う機会でもあるらしく、4年生以上は参加を許されるそうです。
ダンスパーティーはクリスマスの夜8時から夜中の12時まで。
マクゴナガル先生は渋々といった声で生徒に注意を促しました。
「このダンスパーティーは羽目を外すチャンスです。
しかしだからといって決してホグワーツの生徒に期待される行動基準を緩めるわけではありません」
その時、丁度ベルがなりました。
鞄にいるフェインをさけて教材を詰め込んでいると、マクゴナガル先生が私とハリーを呼び止めました。
「ポッター、Ms.ルーピン。代表選手は伝統に従い、ダンスパーティーの最初に踊らなくてはいけません」
「え?」
「さ、最初にですか?」
目を丸くした私とハリーにマクゴナガル先生は深く頷いて、私達を交互に見ました。
「えぇ。最初に。それが伝統です」
「僕、ダンスするつもりはありません」
隣のハリーがそういいました。が、マクゴナガル先生はきっぱりといいました。
「貴方達はホグワーツの代表選手なのですから、学校代表として、しなければならないことをするのです。
ポッター、必ずパートナーを連れてきなさい」
問答無用といった風のマクゴナガル先生にハリーは顔をしかめました。
頭を下げて教室から出るとハリーは口を尖らせていました。
「どうしよう、リク。
僕、これならもう1度ホーンテールと戦うよ…」
「決まってしまったことは仕方ありません。
……私もパートナーが見つかれば、楽しみに出来るんですが」
私も深く黙り込みます。ハリーがききました。
「リクは誰か一緒に行きたい人がいるの?」
「えっ? あ、えっと、でも絶対一緒には行ってくれなさそうというか、えっと、ハリー!?」
「楽しそうだね、リク」
急に頬を赤らめてパタパタと手を奮う私を、ハリーがにっこりと微笑んで見ていました。
何故か1番最初に浮かんだ相手は、ハリーが「育ちすぎた蝙蝠」と称するあの人でした。
†††
「第1の課題、おめでとう」
私は耳を疑いました。おめでとうだなんて。あの暴虐武人なヴォルデモートさんから「おめでとう」と聞けるだなんて!?
自分の肩を両手で抱きしめながらヴォルデモートさんを見つめました。
「ヴォルデモートさん、何か悪いものでも食べました!?」
「失礼だな、貴様。
俺様からではないナギニからだ」
びっくりしました。
側を這うナギニに手を伸ばして撫でて、お礼をいいます。
ヴォルデモートさんも全くまぎらわしいですよね。
そんな思いが顔に出ていたのか、ヴォルデモートさんは深く溜め息をつきました。
「本当に貴様は俺様の扱いが適当だな…。
確かクリスマスにはダンス・パーティーがあっただろう」
「はい。三校対抗試合の伝統だとかなんとかで」
「ドレスは用意しているのか?」
今日のヴォルデモートさんはいつものヴォルデモートさんじゃありませんでした。今度は私のドレスを心配するなんて!
私は内心驚きつつも、にっこりと笑顔を返しました。
「私のお父さんが用意してくれているんです。クリスマスの前には届きますよ」
「……ふん。この屋敷にあるものを送らせる気だったが」
え。それってリドル家のドレス。ってことでしょうか。……凄い高価なもののような気がします…!!
「そんなの受け取れませんよ!?」
「いらぬ。邪魔だ」
「と、とにかく、私、ドレスはあります! ご心配ありがとうございました」
もう。今日のヴォルデモートさんはいつもよりはほんの少し優して、私の方がびっくりしてしまいました。