クリスマスまであと1週間という頃、大広間で朝食をとっていた私達の元にピッグが帰ってきました。

ピッグと、隣には見たことのないコノハズクがいます。
コノハズクは何やら大きな包みを抱えていました。

コノハズクがまっすぐ私の前に降り立つ中、ピッグは3年生の女の子にサービスしてから、飛んできたので、ロンに怒られていました。

クスクスと笑った私達はシリウスからの手紙をとり、急いでグリフィンドール寮へ戻りました。

シリウスの手紙をハリーが読み上げます。

内容は、私達が第1の課題を無事クリアしたことへのお祝いと、ハリーのやり方に感心したこと、私のやり方へのお怒り。
そしてこれからも油断をしないで十分に気をつけて欲しいとのことでした。

「……怒られてしまいました」
「ムーディにそっくりだ。『油断大敵!』って、まるで僕が目をつぶったまま歩いて壁にぶつかるみたいじゃないか…」
「だけど、貴方達、シリウスの言う通りよ。
 まだ2つも課題が残ってるのよ」

心配顔のハーマイオニーに私はのんびりと、ハリーは渋々と返事をします。
ですが、ハリーはそのままロンに誘われるままチェスをはじめてしまいました。

溜め息をつくハーマイオニーにクスクス笑いかけてから、私はもう1つの包みに手を伸ばしました。
リーマスさんからの贈り物のようです。

「リク」
「それはなんだい?」

包みをガサガサと開いていると、何やら羊皮紙の束を持ったとフレッド先輩と、お菓子を抱えたジョージ先輩が顔を覗かせました。

私はその羊皮紙の束に目を向けます。

「リーマスさんから届いたんです。
 フレッド先輩もそれなんですか?」
「んー、内緒」
「お菓子あげるから」
「カナリア・クリーム入りのお菓子を私がリクに食べさせると思う?」

ジョージ先輩が差し出してくれたお菓子を受け取ろうとして、ハーマイオニーに止められてしまいました。
フレッド先輩とジョージ先輩がニッと笑っています。
私はカナリア・クリームに気がついてなかったのでハッとこっそり口元を覆っていましたけれども。

ガサッと広げた包みの中が見えて、私は慌ててジョージ先輩からそれを隠しました。
背の高いフレッド先輩にジョージ先輩が覗き込もうとしますが、私はハーマイオニーに隠れ、包みの中身を隠します。

「「どうしたんだ?」」
「内緒です! ジョージ先輩には特に!
 ハーマイオニー、もう寝ましょー!」
「あ、逃げた」
「逃げた。逃げた」

ハーマイオニーの腕を掴んで私は寝室へと上がっていきます。
ニコニコと微笑むハーマイオニーが改めて私の包みをのぞました。

「あら、可愛いじゃない!」
「ジョージ先輩に見つからなくてよかったです」

包みの中身はクリスマスで着るドレスでした。
あとで贈ると言われていたのに、すっかり忘れていました。
一緒に行くジョージ先輩には内緒にしてなきゃいけませんよね。

私は笑みを浮かべます。

「リーマスさんにお礼のお手紙書いて寝ますね」
「本当にルーピン先生が好きなのね」
「はい! あ、あとついでにシリウスにもお手紙書きます」
「ついでなのね」
「シリウスにはハリーがいますから」

羽ペンを手にとって、にっこりと微笑みました。


†††


「〜♪ 〜♪」
「シャーシャー」

鼻歌を歌いながら、以前にお借りしたスリザリンカラーのマフラーを抱えて、寒い地下牢教室にやってきました。

ですが、教室にスネイプ先生の姿は見えません。
フェインと顔を見合わせて首を傾げました。

「先生がいないのは珍しいですね。マフラー、どうしましょう」
「シュ」
「あ、待ってくださいフェイン」

肩を滑り降りていったフェインを追いかけます。
地下牢教室の机の間を進みます。フェインについていくと、スネイプ先生が奥の部屋から出てきました。

「………友人がいないのか?」
「本日出会って最初の言葉がそれですか。泣きますよ」

ムスと頬を膨らませてみせます。
先生を見ると軽くしゃがみ込んで、フェインを手に乗せていました。

そのままフェインを肩に乗せるスネイプ先生は溜め息をつきながら、地下牢教室の暖炉に火を点します。

笑顔で暖炉にかけよります。あったかいです。
スネイプ先生も暖炉の側にある2つ並んだ学習机に座りました。

「クリスマスの朝から教室に来る生徒はいませんぞ」
「………それもそうですけど…」

私は振り返ってスネイプ先生からお借りしたマフラーを差し出しました。

「これ、お返しします。ありがとうございました」
「我輩のものではない。新入生に配っているものだ」

スネイプ先生はそういうと、マフラーを杖で軽く叩きました。
掌からマフラーがさっと消えます。ホグワーツの倉庫? にでもいったのでしょうね。

私はスネイプ先生の隣に座ります。

「先生はクリスマス・パーティーに出席しますか?」
「出席するとでも?」
「やっぱりしないんですね。そんな気はしてました」

ふとスネイプ先生の肩あたりに手を伸ばそうすると、先生が怪訝そうに身を引きました。

首を傾げます。もう1度手を伸ばすと、また避けられてしまいました。

スネイプ先生の怪訝な顔。
私は頬を膨らませました。

「むー、スネイプ先生、狡いです」
「……何が」

もう1度手を伸ばそうと、右手を出すと、今度はスネイプ先生に手を捕まれてしまいました。
右手を捕まれたので、左手を伸ばすと、両手で捕まれてしまいました。

「何が狡いのですかな?」
「………」
「………」
「……………フェイン…」
「は?」

私は頬を膨らましながらスネイプ先生をムッと見上げました。

「私のフェイン、返してくださいよー」

スネイプ先生の肩にはフェインが乗ったまま、尾を揺らしていました。
先生が私の両手を話して無言のままフェインの身体を鷲掴みにしてそのまま私の胸元に投げつけました。

「あぁっ、スネイプ先生、フェイン投げちゃ駄目ですよっ!?」
「早く自分の寮に帰りたまえ」
「何で怒ってるんですか!?」

バッと立ち上がってスネイプ先生を見ます。
先生は生徒の席に座ったまま足を組んでいました。

その視線が冷たかったので、ふいっとフェインを見ると、彼の視線も何故か呆れているようでした。

「わ、私が何かしたんですか…!?」
「シャー」
「子供」
「2人して! 私、散々じゃないですか!」


†††


5時になるとダンス・パーティーにハーマイオニーと一緒に寝室に上がりました。
ハリーとロンには驚かれてしまいましたが、女の子は支度に時間がかかるんですよー。

「ハーマイオニー、髪まっすぐになりましたね!
 いつものふわふわがもったいないです」
「魔法だから明日にはなおっちゃうわよ」

ふわふわの髪を魔法で緩やかにしたハーマイオニーは薄青色のドレスに身をつつんで、軽くお化粧もして。
それは息を飲むような美しさでした。
クラムさんがハーマイオニーに惚れ込むのもわかります。

「ハーマイオニー素敵です。私が一緒にダンスしたいです」
「褒めすぎよ、リク。
 ほら、こっち向いて。お化粧してあげる」

お化粧が苦手な私のためにハーマイオニーが杖を手にとりました。
魔法でお化粧が出来るだなんて、本当に便利ですね。

「動かないの」
「ふふ。笑っちゃうんですもん」
「はいはい。出来たわよ」

ハーマイオニーににっこりと笑いかけます。

リーマスさんが用意してくださったドレスは、黒をベースにした大人っぽいデザインでしたが、腰あたりに大きなリボンが可愛く結ばれていました。
肘までの手袋をはめたところで、見たことがないフクロウが窓際にやってきました。

首を傾げつつも、フクロウから荷物を受け取ります。
小さな包みを開くと、何だか高そうなペンダントが出てきました。

包みをよく見ると一文字「V」とだけはいっています。
……まさか、ヴォルデモートさんからですか!?

「それ、ルーピン先生から?」
「は、はい。そうみたいです!」
「?」

ヴォルデモートさんから! とは言えませんし、ニコニコと曖昧に微笑みます。

ペンダントには緑の石(エメラルド…!?)が嵌められていて、スリザリンカラーがますますヴォルデモートさんらしいです。

…首にかけるのが怖いのですが、かけないのも(あとが)また怖いですね……。

「……スペシアリス・レベリオ(化けの皮、剥がれよ)」
「何やってるのよ、リク」
「い、いえ。念のために…」


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