「クラムさんとはどこで待ち合わせですか?」
「玄関よ。私、先に行っているわね」
「はい。頑張ってくださいね」
「何を頑張るのよっ」
顔を赤らめたハーマイオニーに手を振ります。
悩みつつもヴォルデモートさんからのペンダントを首からさげます。
寝室から降りてグリフィンドール寮に向かうと、ジョージ先輩に出会いました。
にっこりと微笑むとジョージ先輩は口笛を吹きました。
「リク、似合ってんじゃん」
「あ、ありがとうございます。
ジョージ先輩も格好いいです」
深い紺色の燕尾服に白いワイシャツ、ネクタイ。
胸ポケットからは白い男性用ドレスグローブが覗いていました。
格好いいです!
照れたように頬をかいたジョージ先輩の腕に手を乗せます。
「あの、私、ダンス練習をしたのですが、まだまだ苦手で…」
「じゃあエスコートは任せて。お姫さん」
にっこりと笑って私の髪を一束持ち上げてキスをしたジョージ先輩に、私も照れたように微笑み返しました。
「……あー、そういや、フェインはどこ?」
「ハンドバッグの中にいますよ?」
「シュー」
「よーし、変なことしないでおこうかな」
ハンドバッグから顔だけを出したフェインに、ジョージ先輩はパッと手を離しました。
†††
大広間に向かうと賑やかな人混みに私は目を輝かせました。
大きなツリーの下には、待ち合わせの方もたくさんいて、私はジョージ先輩の腕を引きます。
「ジョージ先輩、ジョージ先輩、ほら綺麗ですね!
あ、フレッド先輩がいますよー」
「はいはい。今日は俺だけ見てなさいって。
それに代表選手、呼ばれてる」
「い、行きましょー」
表情を険しくしてからマクゴナガル先生に指示されるまま、別室に行きます。
気付けばネクタイを下げようとするジョージ先輩を何回か窘めていきます。
中には既にハリーの姿もありました。
ジョージ先輩がニッと笑いながら片手を上げます。ハリーも笑みを返しました。
クラムさんの隣にいたハーマイオニーに微笑むと、ジョージ先輩が目を丸くしました。
じーっとハーマイオニーを見つめるジョージ先輩の腕を突きました。
「え? 誰、まさかハーマイオニー?」
「ジョージ先輩、今日のパートナーは私ですよ。嫉妬しちゃいますよー」
「悪い。もちろんリクが1番」
「それに、ハーマイオニーは最初から可愛いんですからねっ」
ふいっとジョージ先輩と反対を向くと、苦笑を零して私の頭を撫でてくれました。ふふふ。と口元を緩ませます。
そこでまた、マクゴナガル先生の指示があり、私達はそれぞれ組みになって大広間に入りました。
沢山の拍手に包まれながら、大広間の1番奥にある大きな丸テーブルに向かって歩きました。
まっすぐ歩きながらも私は真っ赤になる頬を隠せずにいました。
き、緊張します…。スネイプ先生と練習をした成果を…!!
審査員の席にはいつもの審査員さん達と、クラウチさんの席に座るパーシー先輩がいました。
クラウチさんはどうしたのでしょう?
空いていたパーシー先輩の隣にハリーが座ったので、あとでハリーに聞くことを内心誓います。
ジョージ先輩を見ると、何故かムスとしたような顔をしていました。
丸いテーブルに座り、私は目の前にあったメニュー表を開きました。
ちらりと横を見ると、ハーマイオニーはクラムさんと楽しそうに話し込んでいました。
またメニュー表を見て、小さくジョージ先輩を見つめました。
「……ジョージ先輩、「ピエルニック」ってなんでしょう…。ニックさん…?」
「リクはメニューあると駄目なタイプ? ちなみにそれはケーキな」
メニューに並ぶカタカナ(翻訳薬でそう見えるんです)に少しだけ顔をしかめながら、ローストビーフを食べているジョージ先輩に微笑みました。
私は現れたケーキを食べます。とっても甘くて、口元を緩ませました。
鞄にいるフェインがもぞもぞと動いていたので、誰にもばれないように、気づかれないように、鞄の中にチキンを忍ばせました。
食事が片付いてくると、ダンブルドア校長先生が立ち上がり、杖を振るとテーブルが避けられ、広いスペースが出来ました。
沢山の拍手に包まれ『妖女シスターズ』が現れました。
彼女達がそれぞれ楽器をとりはじめると、ジョージ先輩が立ち上がりました。
エスコートされながらダンスフロアに歩み出ます。
ジョージ先輩が笑いながら私の手をとりました。
「じゃ、リクの練習の成果を見ないとな」
「そーいう先輩も。
全てお任せいたします」
「了解」
スローな物悲しい音楽に合わせてゆっくりとステップを踏みはじめます。
最初足元を見つめていた私でしたが、スネイプ先生の言葉を思い出し、ジョージ先輩の顔を見上げました。
緊張しすぎて周りの様子を見る余裕はなく、頭の中を真っ白になって1曲踊りきりました。
1曲終わると代表選手以外もステージに上がってきたので、私はジョージ先輩の手を引っ張ってステージから離れようとします。
「リク、踊らないのか?」
「やだやだ、先輩、もうやだです」
「うっわ、本気で嫌そうだな。
じゃあ飲み物持ってくるから、待ってて」
ステージから離れて、壁際に寄ります。真っ赤な頬をぱたぱたとあおいで風を送ります。
壁に背中を預けると、ジョージ先輩がニコと微笑んで、何故か私の額をでこぴんしました。
「いたいですっ」
「他の男に誘われても断われよー」
「では早く戻ってくださいね。壁のお花は淋しいんですからー」
そしてジョージ先輩が飲み物を取りにいってくれました。
なんにせよジョージ先輩の足を踏まなくてよかったです。
練習で何度スネイプ先生の足を踏んでしまったのか、考えたくもありません。
壁に身体を預けていると、隣に真っ黒いいつものローブに身を包んだ、スネイプ先生がいました。
「スネイプ先生です!!」
「煩いですぞ」
「いらっしゃったんですね。
来ないと言っていませんでしたか?」
きっと気が変わったのでしょうね。
にっこりと微笑みながらスネイプ先生の隣に寄りました。
大広間は人混みでガヤガヤとしていましたが、スネイプ先生に気がついた生徒は自然と離れていきます。
これはジョージ先輩を待つ間、男の方は近寄って来ませんね。
「ウィーズリーは?」
「飲み物持ってきてくれているんです。
あ、ドレスどうです? リーマスさんに選んで頂いて貰ったんですよー」
その場でくるりと回ってスネイプ先生を見上げると、スネイプ先生は黙って私の頭を掴みました。
「酷い! 髪型崩れてしまいますっ」
「黙って立っていたまえ」
困惑しつつも立ち止まります。スネイプ先生は私の腰に飾られたリボンを手にとっていました。
「あ、解けてましたか?」
「本当、はしたないですぞ」
「すみません」
リボンを縛ってくださったスネイプ先生に振り返り、微笑みます。
その時、スネイプ先生の姿越しにジョージ先輩の姿が見えました。
ジョージ先輩に軽く手を振って、スネイプ先生を見上げました。
「スネイプ先生、私、行きますね。
先生は踊らないんですか?」
「…今日は用があっただけだ」
「?」
スネイプ先生は厳しい表情を崩さないまま、何故か左腕を押さえていました。
不思議に思って、スネイプ先生の左腕に軽く触れました。
「どうかしたんですか?」
「………」
怪我でもしたんでしょうか?
そう思ってから、スネイプ先生の左腕には闇の印があることを思い出しました。