お話の通りならハリーくん達は今日、夜に出歩いて、頭が3つある犬さんに会うはずです。
危険ではありますが、怪我はしない筈です。

お話を進めるためにも必要なので、私は特に気にすることもなく、ぱたぁーんっとベットに飛び込みました。

ハーマイオニーちゃんのベットを見ると、そこはやっぱり空っぽです。
心配だったのでしょう。ハーマイオニーちゃんは優しい女の子なんです。

ふわふわのベットでゆっくりと目を閉じると、すぐに睡魔が襲ってきました。


†††


目を開けると、そこはふわふわのベットではありませんでした。そこどころか暖かいホグワーツでもありません。

冷たく、暗い、牢屋みたいなところでした。

ここは酷く寒くて、私はきゅっと肩を抱きしめました。
私の白いネグリジェは、肩も二の腕も出るタイプでしたので余計に寒いです。

「だ…誰だ?」

急に聞こえた低く掠れた声に私の身体が跳ね上がりました。怖い。

振り返ると、そこには誰か、男の人がいました。

四角い何もない部屋、入り口や窓には鉄格子。
私はどうやら牢屋の内側にいて、そこにいる人に話し掛けられたみたいです。

出来るだけその人から離れながら、私は呟きます。

「……私はリクです。
 リク・ルーピン」
「……ルーピン…?」

牢屋の影から歩いてきた男の人の顔が月明かりに照らされてみえました。
はっと私は息を呑みます。

「私の、友人も…ルーピンという名だったんだよ…。
 私はシリウス・ブラック。
 お嬢さんは…、どちらからおいでに?」

私の目の前にリーマスさんの親友、ハリーくんの名付け親のシリウス・ブラックが立っていました。


†††


目が覚めました。

私はさっきまでの、ふわふわのベットの上で横たわっていました。
ゆっくりと身体を起こします。

「………夢、でしょうか」

でも、それにしては、牢屋の中の寒さや、ブラックさんの顔などははっきりと覚えています。

「…まだ、寒いです…」

なんだか寒くて、私はネグリジェにカーディガンを羽織って談話室の方に向かいました。

そこには椅子などにへたりこんでいるハリーくん達の姿が見えました。
ロングボトムくんもいて、私はびっくりしてしまいます。

「ハリーくん…? あ、決闘してきたんですか? 怪我は?」
「ないよ、ないけど…」

息を長く吐くハリーくん。ロンくんが口を開いた。

「あんな怪物を学校の中に閉じ込めておくなんて、連中はいったいなにを考えているんだろう」
「あんな怪物……?」

ということは3つの頭の犬さんにあったみたいですね。
ハリーくんが軽く私に説明してくれました。
私は全力疾走で息が荒いロングボトムくんの背中を撫でました。

ハーマイオニーちゃんが不機嫌そうに、つっかかるように言います。

「あなたたち、あの犬が何の上に立ってたか、見なかったの?」
「…床の上じゃない?
 僕、足なんか見てなかった。頭を3つ見るだけで精一杯だったよ」
「ちがう。床じゃない。仕掛け扉の上に立ってたのよ。
 何かを守ってるのに違いないわ!
 もしかしたらみんな殺されてたかもしれないのに、もっと悪い事に退学になったかもしれないのよ」

ハーマイオニーちゃんが立ち上がって目を吊り上げていました。

「では、みなさん、おさしつかえなければ、休ませていただくわ。
 リクは?」
「えっと…、私、もう少し火に当たっていきますね。先に行っていて下さい。
 おやすみなさい。ハーマイオニーちゃん」

笑うとハーマイオニーちゃんは寝室の方に向かって行きました。

ロンくんがぽかんとしています。

「あれじゃ、僕たちがあいつを引っ張りこんだみたいに聞こえるじゃないか」
「ハーマイオニーちゃんはロンくん達が心配だったんですよ」
「大きなお世話だよ」

言うロンくんに私は苦笑を返します。火に手を向けていると身体も温まってきました。

私も立ち上がります。

「じゃあ、私もおやすみなさい。また明日」

みんなに手を振って、ハーマイオニーちゃんと同じ部屋に入りました。
ハーマイオニーちゃんは疲れていたようで、もう寝ています。

私ももう1度ベットに入りました。

あの牢屋の夢は見ませんでした。


†††


次の日、私はドラコくんから何でまだハリーくんとロンくんがホグワーツにいるのかを聞かれましたが、にっこりと笑顔を返しておきました。

2人は昨日のことが大冒険だったみたいで、ホグワーツに何が隠されているのかを話し合っているようです。

逆にハーマイオニーちゃんとロングボトムくんは全く興味がないようでした。

ハーマイオニーちゃんがハリーくんやロンくんと離れて1人でいたので、私はハーマイオニーちゃんと普段過ごすことにしています。
お話通りに進んでいるとはいえ、ハーマイオニーちゃんを1人で泣かす訳にはいきません!

「あの人達ったら全く…! 退学になりたいのかしら」
「ふふ。男の子はみんなそんな感じなんじゃないですか?
 ハーマイオニーちゃん、次のDADA(闇の魔術の防衛術)、一緒に行きましょう?」

今日の授業もいつも通りでした。

クィレル先生はいつも通りビクビクしていましたし、ピーブズは私に意地悪です。

休み時間にはミセス・ノリスにご飯をあげたり、ジョージ先輩とフレッド先輩からお菓子を貰ったりしました。
(先輩のお菓子は食べると10分間、髪の毛の色を好きな色に変えられました)

夕食もハーマイオニーちゃんと食べて、私がまたパスタとサラダしか食べなかったのを見て、彼女に少し怒られました。

そんなこんなで1日は終わり、私は寝室でハーマイオニーにお話していました。
私は瓶に入った金平糖を振り、忘れないように枕元に置いておきます。

ハーマイオニーちゅんが興味津々でしたので、少し日本のことをお話して、明日も早いということで、ベットに入りました。

私は寝る前にネグリジェにカーディガンを羽織って寝転がりました。

もしかしたら、今日は、また彼に会えるかも知れなかったからです。


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