今までの課題の日の朝より、第3の課題の朝は頭が冴え渡っていました。

私がやることはこの課題を誰よりも先にゴールすること。
今はこれだけを目指さなくてはいけません。

「リク? 起きたの?」

同室のハーマイオニーが私のベッドのカーテンを開けて笑いかけました。
私も振り返ってハーマイオニーに笑いかけます。

「おはようございます、ハーマイオニー」
「おはよう。今日は頑張ってね」
「ありがとうございます」

起き上がってぎゅうとハーマイオニーを抱きしめます。

彼女を抱きしめていると、ベッドの脇で「シャー」と怒ったようなヘビの声が聞こえました。
振り返るとそこにはシリウスの元にいるはずのフェインの姿が。

「フェイン! スニッフルズは…?」
「シャ」
「……ハリーがいないとわかりませんが…、今日は私の側にいてくれるんですね?」

再びシューと鳴くフェインを肩に乗せて、私は微笑みました。なんて心強いんでしょう。

それから2人して身支度を済まし、大広間に降りてハリーとロンの隣に座りました。

「あれ。フェインもいる」
「シュー、シャー」
「『リクが心配だから一緒に行く』って」

やっぱりハリーのパーセルマウスは素敵です。
私も蛇語が使えればフェインとお話が出来るんですけどねぇ。

やがて、フクロウの飛び交う時間となり、シリウスから「頑張れ」とかかれた犬の足型が押してある手紙を受け取りました。
さらにハーマイオニーの所に日刊予言者新聞が届き、彼女の表情が歪みました。

私とハリーが顔を見合わせる中、ロンがハーマイオニーから新聞を引っ張りました。

「うわ…、よりによって今日かよ」
「またリータ・スキーター? 僕のこと?」
「いいや」

ロンから新聞を隠そうとしますが、その新聞の内容がハリーが関連していることは明らかでした。
ハリーがもう1度ロンに新聞を見せるように言うと、ロンは渋々とハリーに新聞を渡しました。

私も一緒になって除いてみると大見出しにハリーの写真が掲載されました。


ハリー・ポッターの「危険な奇行」


そんな見出しにはハリーがこの前の『占い学』の時間に額の傷痕が痛んだことや、ハリーが蛇語を使えることなどがかかれていました。

さらにはハリーは狼人間や巨人と交遊があること。

「…ここ。リクの名前だ」


ハリーと同じ、三校対抗試合に不正疑惑のあるリク・ルーピンは、現在、狼人間と暮らしており、月に1度『脱狼薬』と見られる薬を親に送っているようである。
さらにはリク・ルーピン自身も毎日、薬を服用しているようだ。


2行分、私のことがかかれていました。

「僕にちょっと愛想が尽きたみたいだね」

ハリーが新聞を畳ながら気軽にそう言いました。
私も同じくにっこりと笑いながら気軽に答えました。

「リーマスさんの名前が出なくて安心しました。私の名前だけでよかったです」

すぐ隣のロンが私の声にビクッと肩を震わせましたが。

「ですが、どうして『占い学』のことや私の『常備薬』の事を知っているのでしょう?
 私は自室でしか薬を飲んでいませんよ?」
「『占い学』の時、窓が開いてた。僕が開けたんだ」
「まぁ、確かに自室でも窓は開けている時はありましたが…」
「でも北塔もグリフィンドール塔も、ずっと下の校庭にまで声が届くはずないわ」
「それもそうですけど…」

その時突然、ハーマイオニーがハッと自分の髪を抑えました。ロンが首を傾げます。

「大丈夫か?」
「……えぇ、でも…もしかしたら…いいえ多分そうだわ…!
 ちょっと図書館に行かせて! 確かめてくる!」
「ハーマイオニー!? もうすぐ『魔法史』の試験ですよね!?」

呆然とする私達を置いて、ハーマイオニーは大広間を飛び出して行きました。
す、凄いパワーですね。

「君達どうするの? 試験の間、また本でも読んでる?」
「うん。だろうね」
「そうですね」

代表選手はみんな、期末試験を免除されていました。
私とハリーはずっと試験の間、課題に使える新しい呪文を探していました。

丁度その時、マクゴナガル先生が私とハリーに近付いてきました。

「ポッター、Ms.ルーピン、代表選手は大広間の脇の小部屋に集合です。
 代表選手の家族が招待されています」
「リーマスさんが!?」

ぴょこんと立ち上がった拍子にぐらついた私のコップをフェインが支えました。
マクゴナガル先生が立ち去ったあと、私はハリーの腕を掴んで、ぱたぱたと腕を振るいました。

「ハリー! 行きましょう! リーマスさんはきっと来てくださる筈です!」
「僕は…いいよ。ダーズリーがいる訳はないし、ダーズリーには会いたくない」
「リーマスさんはきっとハリーに会いたいですよ」

私はハリーの腕をもう1度引きます。渋々と言ったように立ち上がるハリー。

ロンは『魔法史』の試験のため、反対方向に向かいました。ロンに「頑張って下さいね」と声をかけてから、私達は小部屋のドアを開けました。

中には既に代表選手とその家族が集まっていました。

そして暖炉の前にはなんと、ロンのお母さんとビルさんの姿が。

「ハリー! 貴方を見に来たかったのよ」

モリーさんはそう言うとハリーを抱きしめたあと、隣の私もぎゅうと抱きしめてくれました。

ビルさんがハリーと握手をしている中、私はキョロキョロと周りを見回しました。

お目当てのリーマスさんの姿がありません。しょんぼり。
満月まではまだ日があるので…と、思っていましたが、都合がつかなかったのでしょうか…。

ハリーが私を気遣うように見ていたので頬を膨らませて、ハリーのローブの裾を握りました。

「シュ」

その時フェインが私の足首に絡まりました。
道案内でもするかのように、扉の方へと視線を向けます。

私は首を傾げてから、ハリーやモリーさん達に手を振って動き出したフェインの後を追いかけました。

「フェイン、何処へ…」

そして小部屋を抜けた所、大広間のグリフィンドールのテーブルの近く、フードを深々と被った人の背が見えました。
私の表情が輝き、小走りになります。その人が振り返った瞬間に私は彼に飛び付きました。


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