数日たった日、私は朝寝坊してしまって(彼と長話をしすぎました)、慌てて大広間に向かっていました。
朝ごはん、食べ損ねてしまいます!

「リク、今起きたの?」

途中、ハリーくんとロンくんにすれ違いました。
何か長く大きな荷物を抱えています。

「はい! おはようございます。
 それ、何ですか?」
「ニンバス2000っていう箒さ! 僕がシーカーになったから、マクゴナガル先生がくれたんだ」
「凄い箒なんですか?」

聞くと、今度はロンくんが興奮した様子で答えてくれた。

「そりゃもう凄いんだ。
 今年はグリフィンドールの優勝さ!」
「わぁ…素敵ですね。
 私、応援してますね!」
「ありがとう。
 ……あ、リク、朝ご飯は」
「そうです、食べてきます!」

ハリーくんとロンくんに手を振って、大広間に向かいました。

ホグワーツの生活に慣れて来ていることに、私は喜びを感じていました。


†††


今日はハロウィーンです。

ハロウィーンはこの世界では沢山のことが起こっています。
少なくとも今年と、あと来年のハロウィーンは忙しいでしょうね。

本当にお化けさんが沢山ホグワーツに集まっているのではないでしょうか。
皆さんもっと頑張ってジャック・オー・ランタンを作るべきです。

「ハーマイオニーちゃん、おはようございます。
 Trick or Treat?」
「おはよう、リク!
 Trickって言ったらどうなるの?」
「ふふ。ハーマイオニーちゃんにあげるお菓子はジョージ先輩とフレッド先輩から貰ったお菓子になりまーす」
「あまり食べたくはないわね」

ハーマイオニーちゃんは笑いながら、私に沢山のクッキーをくれました。
私はお返しに手作りのバウムクーヘンをあげました。

「ありがとうございます! 凄く美味しそうですね」
「でもリクの口に合うかわからないの」
「ハーマイオニーちゃんが選んだものですから、間違いないですよ」

そんな話をしながら、私達は「妖精の魔法」の授業に向かいました。

今日は物を飛ばす練習をするそうです。
前からみんなが楽しみにしていたものでした。

フリットウィック先生は生徒を2人1組に組ませて、練習させました。

私はロングボトムくんと組み、ハーマイオニーちゃんはロンくんと組んでいました。
ハーマイオニーちゃんは暫くロンくんやハリーくんとお話していないのです。

大丈夫かな。と振り返りましたが、これもお話にあったことを思い出し、私は頑張って渡された羽を浮かせようとします。

「うぃんがーであむ れびおーさ!
 ………って、わわわっ、ごめんなさい!!」

何故か私は浮かすはずの羽を大量に空から生み出していました。
羽が大量に舞います。ど、どうしましょう!?

「エバネスコ(消えよ)! 大丈夫ですか、Ms.ルーピン」
「は、はい…」
「全体的に少し訛っているようですね。特にVの発音を頑張るように!」
「はいー…」

全く難しいです。Vは日本にはない発音なんですよー。
歎くとペアのロングボトムくんが首を横に振っていました。

「リク、大丈夫だよ、僕なんて日本人じゃなくても何も出来てないもの」
「そんなことないですよ、ロングボトムくん!
 あと…、んー杖の振り方でしょうか?」

話していると後ろでハーマイオニーちゃんが羽を1、2メートルほど浮かせていました。

「オーッ、よくできました! 皆さん、見てください。グレンジャーさんがやりました!」

誇らしげなハーマイオニーちゃんを見て、私も満面の笑顔がうかびました。

「凄いハーマイオニーちゃん!」

ですが、私にはロンくんが嫌そうな顔をしていたのも目に入っていました。

「―――まったく悪夢みたいなヤツさ」

授業が終わったあと、ロンくんがハーマイオニーちゃんの悪口を言っているのが聞こえました。
ハーマイオニーちゃんが私をおいて、ハリーくんにぶつかりながらも走っていってしまいます。

「ハーマイオニーちゃん…!」

私も追いかけようとしましたが、私が追い掛けてしまうとお話が変わってしまいそうで、私の足は止まってしまいました。

「…………」

私は、彼女に何もしてあげられないのでしょうか。

一人立ち尽くしているだけでした。


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