私が眠ると暗い、暗い牢屋にたどり着きます。
ここは囚人たちの集まるアズカバンです。
でも私にとっては少し年上の『お友達』がいる場所でした。
「シリウスさん、こんばんは」
初めて彼にあってから、私は毎晩シリウスさんに会いに来ていました。
牢屋の月明かりが差し込むスペースにシリウスさんが座っています。
彼は私をちらりと見ると、ぷいと顔を逸らしました。
なんと、無視されてしまいました。凄くショック。
私はシリウスさんの隣にしゃがみ込みました。顔を覗こうとしますが、やっぱり顔を逸らされます。
「シリウスさん…」
シリウスさんは私が嫌いになってしまったのでしょうか。
私はしょぼんとシリウスさんの隣で肩を落としました。ぐすん。泣きそうです
「………あー、そんな顔するな! 私が泣かしたみたいだろう!」
やっとシリウスさんが反応してくれました。
私の頬を両手で包みます。彼は私に触れられはしませんが(その逆も出来ませんが)、暖かい温もりが伝わって来る気がします。
よかったです。嫌われてしまった訳ではないようです。私はにへらと締まりなく笑いました。
シリウスさんが頬を膨らましています。
リーマスさんにも思いましたが、彼もとても可愛い大人の方だと思います。
「シリウスさん、どうして不機嫌さんなんですか? 私、何を…」
「リク、昨日、来なかった」
片言で言うシリウスさんに、私は失礼にもニヤニヤ笑いをしてしまいました。
シリウスさんもそれに怒ります。
「昨日、待ってたのに!」
「ごめんなさい。昨日、徹夜してしまって…。お守りを作っていたのです」
「お守り?」
「ミサンガなんですけど…。
今日ハリーくんのクィディッチの試合があったんですよ」
ハリーくんの名前を出すと、シリウスさんの表情がまた変わりました。
やっぱり可愛い方です。
「勝ったのかっ?」
「もちろんです! 凄かったんですよー!
対スリザリン戦だったんですけど――」
そしてまた今晩も長話になります。
別れる時に「明日また来ます」とちゃんと約束をして。
†††
もうすぐクリスマスになります。
クリスマス休暇が来て、生徒の殆どはお家に一旦帰るようです。
私も家にいるリーマスさんを思い浮かべます。
くたびれたカーディガンからのチョコレートの甘い香り。ふわふわと浮かべる笑顔。
約4ヶ月ぶりにリーマスさんに会えるのです。
でも。
「かわいそうに。家に帰ってくるなと言われて、クリスマスなのにホグワーツに居残る子がいるんだね」
ドラコくんが魔法薬学の時間に言っていました。ハリーくんの方を見ています。
それは悪口ですよね。ドラコくん。
ハリーくんは気にしていないようでしたが、私が少しむっとしてしまって、大きめの声でハリーくんに言いました。
「ハリーくん! 私もクリスマス、ホグワーツに残りますね!」
「えっ? リク、一緒に住んでいる人に会いたがってたじゃないか」
「はい。…ですが、私がお家に帰ってもお金かかってしまうので」
帰るだけでも食費だったりなんだりとお金がかかってしまうのです。
なるべくリーマスさんの負担にはなりたくない私は、それなら。とホグワーツに残ることを決めました。
リーマスさんには『友達が沢山出来て学校が楽しいので』という理由でお手紙を出しました。
ドラコくんを気にすると、彼は凄く不満そうに私を見ていました。
ぐしゃぐしゃと丸めた紙が私の頭に飛んできました。
ロンくんが怒って勢いよく振り返りましたが、スネイプ先生も近くにいましたし、必死に止めます。
「リク、だって…!」
「ありがとうございます。私は大丈夫ですよ」
丸まった紙を改めて見ると、何か文字が書いているようです。
私は慌ててハリーくんやロンくんに(もちろんスネイプ先生からも)見えないように紙を開きました。
『金がないなら僕の屋敷に招待してやってもいい』
とっても上から目線でしたが、どうやらお誘いの手紙のようです。
私はその紙に走り書きしてから小さく杖を振って兎の形にしました。
兎は誰にも見つからず、ドラコくんの机にたどり着きます。
『ありがとうございます。
でも、私もホグワーツでクリスマスを過ごしてみたいので。
また誘って下さいね』
ドラコくんがさらに不機嫌そうになるのをちらりと見ていました。ごめんなさい。
授業が終わり、階段を上がっていくと、上ではハグリッドさんがモミの木を運んでいました。
ロンくんが先に声をかけます。
「やぁ、ハグリッド、手伝おうか」
「いんや、大丈夫。ありがとうよ、ロン」
「すみませんが、そこをどいてもらいませんか」
「ドラコくん、意地悪は駄目ですよ」
ドラコくんが私達の後ろにいて声をかけたので、彼が言う前に私が先に言います。
ですがドラコくんは私を無視して、ロンくんに話し掛けました。
「ウィーズリー、お小遣稼ぎですかね? 君もホグワーツを出たら森の番人になりたいんだろう。
ハグリッドの小屋だって君達の家に比べたら宮殿みたいなんだろうねぇ」
ロンくんがドラコくんに飛び掛かろうとした瞬間にスネイプ先生が階段を上がってきました。なんというタイミング!
「ウィーズリー!」
「あ、あの、スネイプ先生、えっと何でもないんですよ! 仲良しさんですよ!?」
「スネイプ先生、喧嘩を売られたんですよ。マルフォイがロンの家族を侮辱したんでね」
私がせっかく取り繕うとしたのに、ハグリッドさんってば!
スネイプ先生はハグリッドさんを見て、言います。
「そうだとしても、喧嘩はホグワーツの校則違反だろう。ハグリッド。
ウィーズリー、グリフィンドールは5点減点。これだけですんでありがたいと思いたまえ。
さぁ諸君、行きなさい」
ドラコくん達はニヤニヤと笑いながら、先に行きます。
私はぷうと頬を膨らましながらも、ハリーくん達についていこうとしました。
「そういえば、Ms.ルーピンは先程嘘をいったようだな。グリフィンドール1点減点」
「はぅ」
後ろから聞こえた声に肩を落とすと、ハーマイオニーちゃんが慰めるように頭を撫でてくれました。
なんで私だけこんなに減点されるのでしょう。
あんまりしょんぼりしている訳にはいきませんので、気持ちを切り替え、ハグリッドさんについて大広間に向かいました。
大広間ではクリスマスの飾りつけをしていました。
わぁ…、キラキラと輝くツリー達に私達の目も輝きます。
「お休みまであと何日だ?」
「あと1日よ。
そういえば、ハリー、ロン、リク。昼食まで30分あるわ。図書館に行かなくちゃ」
「あぁそうだった」
大広間を出る私達。ハグリッドさんが不思議そうに私達に聞きました。
「図書館? お休み前なのに?
お前さんたち、ちぃっと勉強しすぎじゃないか?」
「勉強じゃないんだよ。
ハグリッドがニコラス・フラメルっていってからずっと、どんな人物が調べているんだよ」
「なんだって?」
ハグリッドさんが驚きます。
私は黙って成り行きを見ていました。
ハグリッドさんは不満そうでしたし、ハリーくん達の中でははフラメルさんを探すことは決まっているのです。
ハリーくん達は頑張って本を探していますが中々見つかりません。
私も何の本にかかれていたのか忘れてしまって、一緒に探しています。
もっと原作を読めばよかったです。本当に。