暫く歩いていると、都合よく空いていたコンパートメントがあり、私はやっと一息つくことができました。
その4人乗りのコンパートメントに入り、押していたトランクを棚の上に載せようとしますが、動き始めた列車の中でそれはとても難しいものがありました。
諦めたくもなりますが、通路に置いてあっても邪魔ですしね…。やっぱり載せなくてはいけません。
「大丈夫なのか?」
振り返ると、入ってきた男の子は何も言わずに私のトランクを棚に上げてくれました。なんて英国紳士! ではなくて。
「お久しぶりですね。ドラコくん!」
振り返った先にいたのは、ドラコくんでした。変わらずの綺麗な金髪に、私は表情を和らげます。
「久しぶりだな。リク。それよりこの席は空いているのか?」
「はい。空いていますよ〜。
なんだか、懐かしいですね。1年生の時も、こうやってドラコくんにトランクあげてもらったの、覚えてます?」
懐かしい記憶を辿るように、私は微笑みを浮かべて席につきます。あの時からもう5年も経ったんですね。歳月を感じてしまいます。
私の前の席についたドラコくんは、頬杖をついたまま私を見ていました。
「リクは変わっていないな」
「ドラコくんは背も伸びて格好よくなりましたねぇ」
「…………」
膨れるように黙り込むドラコくんに、私は微笑みをこぼします。
そこで、私はドラコくんのローブに監督生バッチが輝いているのを発見しました。それへと手を伸ばしながら、私は感嘆の声をあげます。
「ドラコくんも監督生バッチを頂いたんですね!」
「ふん。僕なら当然だ」
「ふふ。お似合いです」
にっこりと私は微笑みます。その緑色のバッチは綺麗に輝いていました。
「そういえば、私と一緒にいても大丈夫なんです?」
「あぁ。もう、大丈夫だ。リクは特別になったから」
そう言ったドラコくんはほんの少し真剣に私を見ていました。私が詳しく話を聞こうとしましたが、その視線はすぐに逸らされてしまいました。
廊下には販売カートのおば様が通っていました。立ち上がったドラコくんがにやりと笑って私に振り返りました。
「リクも何か食べるか? また蛙チョコ?」
「今日はドラコくんのオススメが食べたいです!」
一緒に立ち上がった私は、ひとつだけなら。とお財布を握りましたが、ドラコくんがいつの間にかお支払いを済ませてしまっていました。
頬を膨らます私の掌に、無理矢理お菓子を押し付けたドラコくんは、「また今度な」とにやりと笑っていました。
†††
暫くすると、汽車が徐々に速度を落としはじめました。到着したのです。
ドラコくんと一緒にコンパートメントを降りると、いつの間にか私達の側にゴイルくんとクラッブくんの姿がありました。
私は1度ぺこりと頭を下げて、離れようとしますが、ドラコくんは機嫌良さそうに「大丈夫だ」と一言だけそうこぼしました。
首をかしげつつも、私の腕を掴んで歩き出すドラコくんについていきます。
私の数歩後ろにゴイルくんとクラッブくんがついてきます。私は不思議な感覚を受けながらも、ドラコくんと並んで歩いていました。
やがて通路にいる生徒の中に混じります。そこに毎年いるハグリッドさんの姿は見えませんでした。
ドラコくんは少し嬉しそうに笑いました。
「あのデカ物、やっと辞めたか」
「それはありませんけどねーっ」
「獅子寮生はあのデカ物の何がいいんだ?」
本気で不思議そうなドラコくんに、私はいーっと歯を向けます。
ハグリッドさんはとってもいい方ですもん。そのハグリッドさんはまだ騎士団のお仕事の最中なのです。
きっと今も巨人の方々への説得に向かっているはずでした。
そして馬車にこの4人で乗り込みます。私は馬車の前を見ながら、ぽつりと呟きました。
「………この子達、前もいましたっけ…?」
馬車の前を見ると虚ろな瞳をし、コウモリ翼をもった馬の姿が見えました。驚く私。1年生の頃からこんなことは無かったからです。
ですがその馬はドラコくんには見えていないようでした。それでも、ドラコくんは私に答えをくれました。
「セストラルでもいるんだろう」
「セストラル?」
「『死』を見たものだけが見える馬だ。父上にそう教えて貰った。
リクは去年『死』を見たんだろう?」
私の脳裏に思い出されるのは、仰向けに倒れ、一瞬で死んでしまったディゴリー先輩の死体。
悪寒が身体を貫き、私はその馬から視線を背けました。なんだか、それがとっても怖いものに見えてしまったのです。
ドラコくんはそれを察してくれたみたいでした。
「着くまで寝ていればいい。僕が起こす」
「………ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ」
私は肩に乗ったフェインに頬を寄せました。
やがて馬車は城の前まで着き、私はドラコくん達とお別れしました。
大広間に入ると、賑やかなホグワーツの明かりに包まれました。
グリフィンドール寮のテーブルにつくと、大分離れた席にハリー達の姿が見えました。
私が教職員席を見渡すと、ダンブルドア校長先生の隣に、上下ピンクの服を着た女の人がいました。ドローレス・アンブリッジです。
大広間のがやがや声が静まって来ると、マクゴナガル先生に引かれ、1年生が入ってきました。
用意された組分け帽子の前で、列の前の子が不安そうな表情を浮かべています。
新入生の不安げな視線を受けつつ、組分け帽子が歌いだしました。