ホグズミードへ行ける許可が下りた週末になり、 私はグリフィンドール色のマフラーをしっかりと巻きつけて、ホグズミードの通りを歩いていました。
何処へ行くでもなく通りを歩いていると、ある横道にジョージ先輩とフレッド先輩、ジョーダン先輩が入っていくのが見えました。
確か、あの先には何もないはずです。確か。
「あの先には『ホッグズ・ヘッド』がある」
突然聞こえた声に、私は飛び上がりそうなほど、驚きましたが、なんとか悲鳴を抑えることが出来ました。
「静かにしなよ、リク」
バッと横を見ると、スリザリンカラーのマフラーを身につけたリドルくんが微笑みを浮かべながら立っていました。
私は声を抑えながらもリドルくんのマフラーを引っ張ります。
「出てきたらダメじゃないですか! 見つかったら…」
「この人ごみだ。マフラーをしているし、大丈夫だよ。
それにしても『ホッグズ・ヘッド』は普通の生徒が行くところじゃあない」
微笑みながらその横道に入っていくリドルくんの背に、私は困惑しつつも、ついていきます。
辿りついた『ホッグズ・ヘッド』は、外見からしても普通の生徒が近寄るような場所ではないということがわかりました。
ボロボロの看板に、錆び付いた腕木。私達はガタガタ鳴りそうな窓の側に寄って、誰にもバレないように中の様子を伺いました。
中には何やら大勢のホグワーツ生が集まっています。そして、その全てがスリザリン生以外であり、中心にはハーマイオニーやロン、そしてハリーがいました。
私ははたと思いつきます。呟くように言葉をこぼしました。
「………DA。…『ダンブルドア軍団』」
「何それ?」
「ハリー達はアンブリッジ先生に対抗するために、自分達で防衛の術を学ぼうとしています」
「……そっか。君は「知っている」んだっけ」
私の零した言葉に、リドルくんが反応します。リドルくんは私が未来を知っていることを知っているのでした。
再び、窓から中の様子を伺ったリドルくんが、中心にいるハリーを見ていました。
「面白そうなことを考えるね。感心はしないけれど。
なんにせよ、僕には関係ない」
「……もう少し様子を見ていきます。場合によっては騎士団に報告しなくては」
私は隠れるように、壁に寄り添います。そんな私の隣にぴったりとリドルくんがくっつきました。
中からの声は聞こえません。少し時間が経つと、やがてハーマイオニーが何やら羊皮紙を出しました。
中にいる面々が次々に羊皮紙に何かを書いていきます。何を書いているのでしょう?
「名簿じゃないのか?」
「あぁ。なるほど」
「それと、僕なら名前を書かせる時に、同時に呪いでもかけておくけどね。裏切り者が出ないように。また、出てもすぐにわかるように」
続けてそう言ったリドルくんを、私はじとーっと見つめます。ですが、私は何も言わずに、また隠れるように中を覗き込みました。
会合は終わったらしく、ぞろぞろと人が出口に向かっていきました。私はリドルくんを引っ張りつつ、慌ててお店の影に回ります。
お店の影からちょこんと顔を出して、出てきた人物達の顔と、出来る限りの名前を確認していきました。
フレッド先輩とジョージ先輩、ジョーダン先輩の3人。ロングボトムくんに、トーマスくん、ブラウンちゃん。双子のパチルちゃん達に、ハリーが想いを寄せるチョウ・チャンが友人と並んで出てきました。
1つ下の学年で、レイブンクローであるルーナちゃんの姿もあります。それにベル先輩やスピネット先輩、ジョンソン先輩。
出てきたのは総勢25人のホグワーツの生徒でした。
「……でもホグワーツにこんな人数が集まれる場所なんてないですよね…」
「『必要の部屋』に出会えれば、なんだって出来るさ」
「『必要の部屋』?」
私は首を傾げます。リドルくんは微笑んでいました。
「言葉で説明するのは面倒だ。今度連れて行ってあげるよ。そこでは『必要』なものは大抵手に入る。
それより、ほら。行っちゃうよ」
リドルくんの言葉通り、沢山の人影が去っていき、最期にハリー達3人が出てきました。
すべての人影が去ったあと、私は頭の中でもう1度彼らの名前を繰り返します。
繰り返している途中で、とっても黒いベールで全身を包んだ小柄な魔女さんが出てきました。
お店にいたお客さんでしょうか。ですが、何か引っかかった私は、思わずその魔女さんに駆け寄っていました。
振り返った魔女さんが私の姿を見て、目を丸くします。私も目を丸くしました。
「あんた、リクじゃねぇかぁ?」
「え? マンダンガスさん!?」
魔女さんの正体は同じく騎士団員のマンダンガスさんでした。
何故か女装をしているマンダンガスさんに私はクスクス笑いが止まらなくなります。マンダンガスさんは不満そうでした。きっとハリーの護衛をしていたんでしょうね。
「笑い事じゃあないンだよぉ、ハリー達は何考えてんだぁ?」
「うーん…。でも、魔法省的には悪い話でしょうが、私達が防衛術を身につけておいて損はないと思いますよ。
マンダンガスさんは、これから本部に報告に戻りますよね。ホグワーツの先生方には私から報告します」
「んぉ、任せた」
私の言葉をきいて隣でバシンと姿くらましをする音が響きました。
さて。ホグワーツに戻らないといけませんね。
そう思っていると、隠れていたリドルくんが私の側まで来て、私の手を取りました。
私は困ったようにリドルくんを見上げます。
「そろそろ、ホグワーツに戻りますよ?」
「まだ、少し時間はある。ついでにデートでもしていこうじゃないか」
そう言ったリドルくんは私の手を引いて、ハニーデュークスの方へとどんどん歩いていきます。
鞄の中から出てきたフェインが彼を牽制するように、リドルくんの肩に登りました。私は慌てだします。
「さ、流石にハニーデュークスには入れないと思います!! リドルくんのことが誰かにバレちゃいます!」
「僕の顔を見たって、それが『トム・リドル』だとわかる人間はなかなかいないさ。
せいぜい、リクが、誰か見知らぬ蛇寮生と付き合っているという噂が流れる程度で」
「えぇ?」
繋いだ手を再び見て、ほんの少し頬を染めた私。隣のリドルくんはにっこりと笑顔を浮かべていました。
「ほら、行くよ」
数瞬迷って、そして諦めた私は、苦笑を零しながら、ご機嫌なリドルくんについて歩き出しました。
「リドルくんに『デート』と言われるとなんだか騙されている気がするんですが…」
「君って本当に僕に対しての扱いが酷いよね」
リドルくんに頬をぎゅーと引っ張られながら、結局、私達は2人でホグズミードでデートをしてからホグワーツに戻りました。
戻ってから、ちゃんと騎士団員の方々にご報告もすませましたよ!