11月に入りました。
11月といえばクィディッチシーズン! らしいです。
ハリーくんの初試合が近づいているということで、彼は少し緊張気味。
昨日のハロウィーンに倒れた私はポンプリー先生に心配されながらも、無事に授業に復帰しました。
ずっと頭が痛かったのですが、それはすぐに止まったからです。
クィレル先生が関係あるのかないのか。深く考えることはやめました。
お話は、お話通りに進んでいるからです。
「クィレル先生!」
私は廊下を歩いていたクィレル先生を引き止めました。
なんにせよ、助けてくれたお礼を言わなくてはいけません。
「み、Ms.ルーピン、ど、どうし、ましたか?」
「昨日、助けて頂いたようで、ありがとうございました。
私、覚えてないんですが、ポンプリー先生に聞きました」
貴方が黒幕と知っていても、私にはどうすることも出来ないのです。
クィレル先生は少し驚いたように見えました。
が、またおどおどと、でも笑顔を浮かべました。
「か、身体の、調子はど、どうですか、?」
「はい。もう大丈夫です! とっても調子がいいぐらいです」
「そうでしたか。よかった」
クィレル先生がどもることなく笑いました。
違和感と、少しの怖さ。でも私はその怖さには気付かないふりをして笑い返しました。
大丈夫。大丈夫。まだ先生は動かないのですから。
「Ms.ルーピン。よかったら、お茶でも?」
「yes. Of course」
私はそのままクィレル先生についていきました。
「Ms.ルーピン」
ついていこうとしました。
振り返るとそこにはスネイプ先生の姿があります。
私がびっくりしていると、スネイプ先生は呼び掛けた位置から動かずに私を見ると、口を開きました。
「Ms.ルーピン、お茶もいいが、薬はいいのかね?」
「あ」
そういえば金平糖の薬がもう、少ししかないのでした。
明日、魔法薬学の授業があったので、明日でもいいやと思っていたのですが…。
私はクィレル先生に向き直ります。
「あの、先生、私…」
「い、いや、だ、大丈夫ですよ」
「すみません。誘って頂いたのに…。
では…失礼します」
ぺこりと頭を下げてから、私は歩き出していたスネイプ先生の背中を追い掛けました。
「先生、待ってください」
スネイプ先生は何も言いませんでした。
そこで先生が足を引きずっていることに気がつきました。
「先生、足…どうかしたんですか?」
先生はまた何も言いませんでした。触れてはいけなかったのでしょうか。
この世界に来ることが知っていれば、もっと原作の小説を読み込んだのに。どうして私は映画しか見てこなかったのでしょう。
今更どうしようもない後悔をします。
そのあとも先生との会話はないままに地下牢教室についてしまいました。
私は金平糖型の薬を受け取り、頭を下げました。
「ありがとうございます。少なくなったらまた言いますね」
「Ms.ルーピン」
「はい。なんでしょうか」
スネイプ先生が口を開いたので私は真っすぐ先生を見ました。
「なるべくクィレルには近寄らぬように」
「…………はい」
先生は私をクィレル先生から助けてくれたのでしょうか。…考え過ぎかも知れませんね。
私は大人しく頷きました。頷いて、少し俯きます。
また地下牢教室は無言になります。
ふと、私は顔をあげました。
「先生、今年はグリフィンドールがクィディッチ優勝しますね!」
「! ……ポッターがスニッチを見付けられるとは思わぬがね」
「いいえ。絶対、優勝頂きますね! では、ありがとうございました!」
言い逃げるように私は地下牢室から笑顔で飛び出て行きました。
後ろでスネイプ先生の声が聞こえましたが、私は既に走り出していました。
†††
その夜、ガヤガヤと談話室は騒がしかったです。
グリフィンドール対スリザリンのクィディッチの試合があったのです。
ハリーくんの初試合にもなります。
私はハリーくんとロンくんが宿題をしている所を見つめていました。
時々、指をさして間違っている箇所を言おうとしますが、ハーマイオニーちゃんが「甘やかしちゃだめ!」と笑っていました。3人ともとっても仲良くなったみたいです。
「…駄目だ。僕、スネイプから本を返してもらってくるよ」
ハリーくんは午前中に「クィディッチ今昔」という本をスネイプ先生に没収されていたのでした。
「1人で大丈夫?」
ロンくんとハーマイオニーちゃんが口を揃え聞きます。が、ハリーくんは大丈夫と言い、職員室に向かって行きました。
「明日…ハリーくん、試合ですね」
「絶対勝つよ。ハリーだもん」
「そうよ」
「わかってますけど…」
私が試合に出るわけでもないのに緊張してきました。
なにかハリーくんにできることはないでしょうか。
「………あ。そうだ。私、先に寝室に行きますね!
ハーマイオニーちゃん、ロンくん、おやすみなさい!
ハリーくんにもおやすみなさい、伝えていてください!」
「えぇ、リク! 急にどうしたの?」
「やりたいことがあるんです!」
2人に手を振って、私は先に談話室に上がっていきます。