【tell a lie. not a liar.】(ファイ)
私は子供の頃からすぐに他人の嘘・偽りを見抜いてしまう子だった。
母が父につく嘘。
父が母につく嘘。
私に言い聞かせる嘘。
友人達の偽り。
それは見栄? 騙そうとしているのか無意識なのか。
世界は嘘で溢れ返っていた。
「セレス国の魔術師、ファイ・D・フローライトです」
私が雨の降るあの場所に居合わせた時、少なからず驚いた。
ただ名前を名乗っただけなのに、私にはその言葉が『嘘』に聞こえたのだ。
偽名? 最初の違和感は私に付き纏った。
私が彼を気にし始めたのはこの時からだった。
彼は旅が始まってからも時折嘘を交えて、しかも笑顔でわからない嘘を言うものだから、私は余計に意識してしまっていた。
†††
「マリアちゃん、寝れないの?」
振り返るとそこにファイさんがいた。
にっこりと笑うファイさんの手にはマグカップが2つ握られている。
その1つを受け取った私は曖昧に微笑んだ。
「この国、私達が来てからずっと満月なんです。
満月に桜。風情がありますよ」
ここは桜都国。カフェの窓辺の席に座ると、満月と降り注ぐ桜が見える。
幻想的なその夜桜に私は見惚れていた。
ファイさんが私の隣に腰掛けた。
「ホントだー、綺麗だねぇ」
そういったファイさん。金色の柔らかい髪。
それが月明かりに照らされてキラキラと光っていた。
(……ファイさんが綺麗)
今まで窓の外の桜に魅入っていた筈なのに、私の視線はいつの間にかファイさんに注がれていた。
あまりに見つめ過ぎたのか、ファイさんが桜から視線を外して私を見た。
慌てて視線を外すのも不自然に思い、苦笑を浮かべるとファイさんは私ににっこりと笑った。
「どうしたの? マリアちゃん」
「いいえ、特には」
当たり障りなく返事をすると、にっこり笑ったままファイさんが私の頬に手を伸ばした。
いつの間にかファイさんとの距離が縮まり、彼は私の口にキスをしていった。
触れるだけのキス。そして私の髪を優しく撫でた。
「ふぁ、いさん…?」
「マリアちゃん」
まっすぐに私を覗き込むファイさん。私は思考が鈍るのを感じながら視線を反らせずにいた。
未だ吐息の触れ合う距離のまま、ファイさんが囁いた。
「スキだよ。マリア」
私は溢れてきた涙を堪えながらも、にっこりと微笑み返した。
ファイさんももう1度微笑んで、また私に優し過ぎるほどのキスを落とした。
(――――――嘘、つき)
嘘だとわかったのに、断れなかった事に胸が痛みだすのを感じていた。
私は、私はファイさんがどうしようもなく、『好き』だったから――。
嘘をつく貴方が苦手だった
だから常に見つめて、警戒していた
いつの間にか、好きになってた
貴方の嘘に気が付かないふりをして
貴方が私をスキだと言って、私も好きだと答えた
そんな私が1番の嘘ツキ
(tell a lie. not a liar.)