幸せそうな表情をしているマリアはマジバーガーを両手で持ちながら、美味しそうに頬張っていた。
「マリアちゃんよりも美味しそうにご飯を食べる子なんて、そうそういないんじゃね?」
マリアの向かいに座り、シェイクを飲んでいる高尾はそう呟く。マリアはにっこりと笑みを浮かべてマジバーガー1つを食べきった。
「ホントー? んー。あーでも、やっぱりチョークも食べたいー。
ねぇ、緑間くん、チョーク……」
マリアは隣の緑間を見つめる。深く黙り込んだ緑間は、鞄から静かに真っ白なチョークを取り出した。
チョークを受け取って満足げなマリアは、それをカリコリとお菓子のように食べ始めた。
「わーい、緑間くんありがとうー」
「ひとつだけなのだよ」
「あれ。なんで真ちゃんがチョーク持っているの?」
彼女の異食症を治そうとしていたはずではなかっただろうか。
高尾は不思議に思いながらも、緑間の苦々しい表情を見る。緑間は静かにマリアを睨んでいた。
「放っておけば、何本食べ続けるかわからないからな。見つける度に奪うよりも、いっそのこと管理をすることにした。
これで1日に1箱を食べていたのを、1週間で1箱にするまでとなったのだよ」
少し誇らしげな表情をした緑間。高尾は呆れた顔を見せた。
「……チョーク1箱が何本かわかんねぇんだけど。12本入り?」
「馬鹿め。それだったらどれほど良かったか。
……業務用チョーク72本入りだ」
「なな…っ!?」
えへへーと笑っているマリアを、驚きつつ改めて見る高尾。重度の異食症なのだろうが、流石に食べ過ぎだ。あの緑間が心配するだけのことはある。
「チョークだけを食べて腹を満たしていたからな。
ようやく最近、チョーク以外の『食べ物』を食べるようになってきたのだよ」
「うわー、なんだかんだ言いながら、真ちゃん、ちゃんと治療してあげてんじゃん…」
「……不可抗力なのだよ」
「お世話になってますー」
そういいながらごくんとチョークを飲み込んだマリア。
初めは驚き、少なからず引いてしまった高尾だっが、最近はなれてしまったということもあり、彼女が『何』を食べていても驚かなくなった。
慌てはするのだけども。
自分の指についた粉までぺろりと舐めたマリアは、名残惜しそうに掌を見つめていた。
「んー、食べ終わっちゃったー」
「今日はこれで終わりなのだよ」
「ぶはっwwww 真ちゃん、それ、完全お母さん役じゃんwwww」
「ままー」
「笑い事ではないのだよ!!」
楽しげにふざけあう高尾とマリア。ムスと不機嫌そうな緑間が、手元に残っていたまだ開封していない自分のマジバーガーを差し出した。
「これでも食べていろ」
「わーい! ありがとうー」
嬉しそうにまたマジバーガーを頬張るマリアのその姿は、可愛らしいただの女の子だった。
「んー、美味しー!」
幸せそうなマリアの口の端に、未だチョークの粉がついていることに気がつき、高尾は苦笑を零した。