【タイプだと思いました】(ハートの海賊団)
小さめの身長。
よく危なっかしいと言われているマリア。
高めの身長。
クールビューティといった感じのサヤ。
それはトリップ。だと思う。
気付いたら彼女達は海賊船の目の前で呆然としていた。
本当、何事もなく船に乗せてもらって本当によかったとマリアは思う。
『ハートの海賊団』。これが彼女達が乗った海賊団。
†††
「ペンギンさーん!」
「っ、…マリアか」
他の船員とお揃いのつなぎを着たマリアが、甲板に出ていたペンギンに後ろから飛びついた。
ほわほわと笑いながらマリアはペンギンに腕を回して、背にくっついたそのままで歩き出す。
ペンギンは慣れているのか苦笑だけを零した。
「マリア、歩き辛い」
「ペンギンさんの抱き心地がいいんです」
「うわ。マリアとペンギンが朝からいちゃついてる」
「仲いい奴らだなー」
笑いながら近付いてきたのはマリアの親友であるサヤとキャスケット帽子をかぶったシャチだ。
マリアはペンギンから離れずにサヤとシャチを見て笑いかける。
「おはよーマリア」
「はよー、サヤ、キャスくん」
親友2人は笑いながら朝の挨拶。
ペンギンとシャチ(愛称:キャスケット)もそれとなくおざなりに挨拶。
そしてシャチとサヤの興味は、くっついているマリアとペンギンに移る。
ぎゅうと抱き着いているマリアは心底楽しそう。
抱き着かれているペンギンも無表情ではあるが微かに頬が赤い気もする。
その2人が兄妹の様にも、さらには付き合いはじめのカップルの様に見え、サヤとシャチはからかいだす。
「確かにペンギンはマリアのタイプだよねー。身長とか胸板とかww」
「えっ!? そうなのか?」
「サヤ! キャスくんに変なこと言わないで!!」
大袈裟に驚くシャチにマリアが頬を膨らませて怒る。
そんなマリアを見て微笑んだペンギンを、マリアは困ったように見上げた。
「あの、サヤの事はあまり気にしないで下さいね…。
タイプとかじゃ……あ、ペンギンさんは格好いいですよ!?」
「気遣わなくていい」
笑うペンギンにマリアは頬を染めて笑い返す。
既に2人で話しているマリアとペンギンに、サヤとシャチが手をあわせて目を輝かす。
「やっぱあの2人来てんじゃね!?」
「マリアは乙女なとこあるから、面倒見のいいペンギンとはお似合いだって!」
「ペンギンも満更じゃなさそうだしな!」
きゃっきゃっとはしゃぐシャチとサヤ。
だが次の瞬間沸き立った殺気に悲鳴を上げつつ2人(とペンギン)は振り返った。
「来た、cv神谷さん…ッ!」
「せ、船長…」
不機嫌そのものといった感じのこの船の船長、トラファルガー・ローが白熊のベポと一緒にじとりとマリア達を睨んでいた。
「cv神谷さーん」
「サヤ、『船長』だ。
俺は「カミヤ」とかいう名前じゃない」
「あー、いい声っスね。不機嫌な声もまたいい感じっス」
「…………心底どうでもいい。 …マリア!」
濃いクマがついた鋭い視線をマリアに向け、ひたすらに不機嫌そのもので彼女を呼び付けた。
マリアは?を浮かべながらペンギンから離れ、ローに近付く。
「きゃぷてん、おはようございます!
どうかしましたか?」
「珈琲入れてこい」
「? あいあいきゃぷてん!」
ベポの真似をしながら食堂に走るマリアの背中を見ながら、ローは殺気を飛ばしながらペンギンを見ていた。
「あまりマリアを甘えさせるな」
「…はい」
明らかに怒っているローにサヤはニヤニヤしながら横に並んだ。
「キャプテーン、無事にペンギンとマリアは離れましたっスよー?
嫉妬は醜いですよー」
「"ROOM"」
「うわ! 冗談!? キャプテーン!!」
サークルを出現させたローに、初対面の時に学んだサヤは思い切り距離をとる。
だがサヤのニヤニヤは止まらず、スススとシャチの近くに寄った。
「やっぱキャプテンってマリアの事……」
「ペンギンにはシャンブルスかけられねぇし、相当苛々してるよな…」
「マリアは鈍感だしね…」
と、こそこそしている間にマリアが珈琲を持って戻ってきた。
ローは甲板に出してある椅子に腰を下ろしていた。
「きゃぷてんお待たせしました。無糖で大丈夫でしたか?」
「あぁ」
「ベポちゃんも紅茶飲む? お茶の準備してきたよ」
「飲むー!」
マリアはニコニコと笑いながらベポの腕に抱き着く。
またローの眉間にむっと筋が入る。
気付かないマリアはくるりと振り返って3人に笑いかけた。
「サヤ! ペンギンさんとキャスくんもお茶しましょー?」
マリアはベポの腕を離し、今度は真っ正面からペンギンに飛びついた。
これにはさすがのサヤやシャチも悪寒に身を震わす。
爆発的に跳ね上がった殺気に当のペンギンは冷や汗を浮かべた。
「あー、マリア…?」
「どうしました? ペンギンさん」
「………いや、あまりくっつくな。いい加減船長に睨み殺される」
たじたじのペンギンにマリアはまた首を傾げるが、ペンギンを抱きしめるのが心底、心地好さそうだ。
と、そこで何を思ったのか、サヤが突然、座っているローを後ろから抱きしめた。
苛立ったままのローはサヤに振り返り彼女の頭をたたき落とした。
「何してやがる」
「痛い……。いやちょっと確認スよ…」
頭を抑えながらサヤはふらふらとしつつ、ペンギンの元に向かった。
そしてまた背中からペンギンに抱き着いた。
前からマリアと後ろからサヤに抱き着かれたペンギンは心底驚いている。
というかハーレム。
だがサヤはすぐに離れ、あーとマリアの顔を覗き込んだ。
「わかったよマリアがペンギンばっかに抱き着く理由」
「ペンギンさんばかりに抱き着いている訳じゃないもん」
サヤの言葉にマリアは照れ臭そうに頬を膨らましている。
ベポは呑気にマリアに煎れて貰った紅茶を飲んでいたが、ローはちらりとだけサヤを見た。
サヤはニヤニヤとマリアを見て、口争いを始めた。
「ペンギンに抱き着いたらマリアの身長だったら丁度胸板辺りに顔埋まるでしょ。
あとペンギンの方が筋肉質ww
マリアは胸板フェチだしー?」
「言っちゃ駄目サヤ!」
「うわ、言っちゃ駄目って事は、マリア、実は自覚あったでしょー」
「ないもん!」
「ないなら否定なんかしないもんねー!
何年一緒にいると思うのさ、マリアの好みぐらい熟知してますぅー」
「だったらサヤはきゃぷてんが好みど真ん中じゃん!
『お似合いだもん!』」
マリアが言った瞬間、静まる回り。
急に静かになったのでマリアの方が不安になってきていた。
サヤは無言でローを眼力で倒す勢いで睨み、ローは似たように、だが目標はマリアを睨みつけていた。
「え、あ、サヤ…? きゃぷてん?」
「マリア、今、1番船長には言っちゃいけないこと言ったぞ、多分」
パニックになるマリアにシャチがやれやれとマリアの肩に手を置いた。
マリアが心配そうにサヤを見ると、サヤは満面の笑みだった。
「マリア…?
ちょっと……『体育館裏に来いや』」
「のー!? ここ体育館裏無いよ!?」
「誰か好き好んでハイパー鈍感なマリアに一途な物好きキャプテ―――」
「"ROOM"、シャンブルス」
素早い動きにサヤの姿が避ける間もなく海に放り込まれる。
マリアが慌てて船の縁に駆け寄る。
「きゃぷてん! サヤはあれでも女の子です! 優しく!」
「あれでもっていうなぁぁッ、ぷはッ、ペンギン、縄投げてよー、上がれない」
「ペンギン。船長命令だ。30分は見張っとけ」
「はぁ!? てめ、このもこもこー!!」
非情なローの命令にマリアはしょんぼりとしながらも、不思議そうにシャチへと首を傾げていた。
「きゃぷてん、いきなりどうしたんだろ…?」
「は? あ、いや、んー…。
照れただけ?」
「照れた? サヤに? え?」
「シャチ、お前も水浴びするか?」
「いえ、遠慮しまーす!」
これ以上被害を被っては困る、とシャチはすまなそうにマリアへと手を合わせ、走って甲板の掃除をしに行った。
マリアは首を傾げながらローを見上げ、その彼の腕に自分の腕を絡ませた。
ローの息がわかりやすく止まり、わかりづらく耳に赤みがさした。
マリアに特に深い意味はなかったらしく、彼のフードについた帽子などでじゃれている。
それを少し離れたところでペンギンが見ていた。
「船長も大変だな」
「…あー、マリアって魔性の女って感じ」
自力ではい上がってきたサヤが船の縁に身を預けていた。
「キャプテンはマリアに対してはへたれるし…、進展する前にマリアが誰かに取られそう」
「お前、また船長に落とされる前に戻っておけ。あと18分だ」
そういうと非情にもペンギンはサヤを海に突き落とした。
溺れないように浮輪だけは投げながら。
「てめ…、ペンギ…ン!!」
「悪魔の実の能力者じゃないんだ。大丈夫大丈夫」
「きゃぷてん。ペンギンとサヤって仲良いよね。
どう思います? 私、恋愛に敏感なの!」
「………敏感ねぇ…」
心底呆れたように溜め息をつくローにマリアは首を傾げる。
ローはマリアの肩に置こうと持ち上げた手を静かに降ろしてしまった。
(好き知らず)