煌びやかなハロウィンパーティーは気が付けばすぐに終わってしまいました。

出入り口に近い生徒から徐々に大広間を抜けていきます。
そして突然、先に出て行った生徒達の悲鳴が大広間まで聞こえてきました。

残っていた生徒や先生達の視線が一気に大広間の入口に向かいます。
その時には既に私は立ち上がって歩き出していました。スネイプ先生はすぐに私を追いかけます。

沢山の生徒達が徐々に野次馬として扉へと向かっていました。その生徒達の間を通って、私は生徒達の視線が集まる場所へと急ぎます。

「すみません、通ります。通してください」
「通したまえ」

私に追いついたスネイプ先生が、野次馬している生徒に声をかけると、生徒達は少し怯えた顔をしてすぐに道を開けてくださいました。

「おまえだな!」

その時、フィルチさんの声が廊下に響き渡りました。私とそしてスネイプ先生の足が速くなります。

生徒達をかき分けて騒ぎの中心へと出ると、大きな水溜りがそこら中に出来ていました。

そしてその水溜りの上。松明の腕木に尻尾を絡ませ、ぶら下がっているミセス・ノリスがいました。
ミセス・ノリスは目を見開き、石のように硬直しています。

壁には赤い、血のような液体で書かれた文字が並んでいました。

『秘密の部屋は開かれたり。継承者の敵よ、気をつけよ』と。

硬直したミセス・ノリスの前には叫び声を上げるフィルチさん。
それを見るようにハリー、ロン、ハーマイオニーの3人が呆然と立っていました。面々を見たスネイプ先生の表情が険しくなります。

フィルチさんはハリーを指差して悲鳴のような叫び声を上げていました。

「おまえだ! お前が私の猫を殺したんだ!! あの子を殺したのはおまえだ! 俺がお前を殺してやる! 俺が…!」
「アーガス!」

私達が到着するとほぼ同時にダンブルドア校長先生が辿り付きました。
ダンブルドア校長先生の後ろにはマクゴナガル先生やロックハート先生がいます。

私はミセス・ノリスに駆け寄り、彼女を松明の腕木から下ろします。ダンブルドア校長先生が声をかけました。

「アーガス、一緒に来なさい。君達もおいで」
「校長先生! 私の部屋が一番近いです。どうぞ、ご自由に」

ロックハート先生が手を上げてそう申し出ました。私はミセス・ノリスを抱えながら歩き出します。
あれだけいた生徒達は怯えた顔をして、私達に道を譲ります。

ロックハート先生の部屋に入ると、沢山のロックハート先生の肖像画が飾られていました。
私はミセス・ノリスを磨き上げられた机の上に優しく置きます。ダンブルドア校長先生がすぐにミセス・ノリスをくまなく調べ始めました。
マクゴナガル先生も身をかがめて目を凝らしてミセス・ノリスを見ています。

そしてロックハート先生となると私達の周りをウロウロとしながら意見を述べていました。

「猫を殺したのは呪いに違いありません。多分『異形変身拷問』の呪いでしょう。何度も見たことがありますよ。
 私がその場に居合わせなかったのは誠に残念。ぴったりの反対呪文を知っていましたのに…」

私は黙ってダンブルドア校長先生の手元を見つめます。気が付けば私のすぐ隣にスネイプ先生が立って、同じくミセス・ノリスとダンブルドア校長先生を見ていました。

暫くすると、ダンブルドア校長先生が優しくフィルチさんに言います。

「猫は死んでおらんよ。石になっただけじゃ。
 ただし、どうしてこうなったのか、わしには答えられん…」
「あいつに聞いてくれ!」

涙を流すフィルチさんがハリーを睨みつけていました。ダンブルドア校長先生がきっぱりと言い切ります。

「2年生がこんなことを出来るわけがない」
「僕、ミセス・ノリスに指一本触れていません!」

ハリーがすぐに大きな声で反論します。ハリー達も今の状況に混乱しているようでした。

「校長、一言よろしいですかな」

その時、スネイプ先生が意地悪な声をかけました。

「ポッターもその仲間も、単に間が悪くその場に居合わせただけかもしれませんな。
 とはいえ、連中は何故3階の廊下にいたのか? 何故、3人はハロウィーンのパーティーにいなかったのか?」
「意地悪言ってはいけませんよ。パーティーは強制参加ではないのですから」

私は思わずスネイプ先生に声をかけます。スネイプ先生はじろりと私を睨みつけますが、私はぷいと顔を背けました。

ハリー達は一斉に『絶命日パーティー』の話をし始めました。
彼らは大広間で行われているハロウィンパーティーではなく、ほとんど首なしニックさんの『絶命日パーティー』に参加していたのだといいます。

「何故夕食も食べず、パーティーにも来る事もなく、3階の廊下に行ったのかね」
「疑わしきは罰せずじゃよ、セブルス」

未だ不満げな顔をしているスネイプ先生でしたが、ダンブルドア校長先生がそう言うと口を一文字に結びます。
フィルチさんも同じく不満を抱いたままで、金切り声を上げました。

「私の猫が石にされたんだ! 刑罰を受けさせなけりゃ収まらん!!」
「アーガス、君の猫は治してあげられますぞ。
 スプラウト先生がマンドレイクを手に入れられてな。十分に成長したら、すぐにもミセス・ノリスを蘇生させる薬を作らせましょうぞ」

マンドレイクは大抵の解毒剤の主成分となっている植物です。貴重で扱いづらい材料ではありますが、スプラウト先生なら大切に育ててくださるでしょう。
そしてそのマンドレイクで魔法薬を作ればこの石化の症状も治すことが出来ます。

そこでロックハート先生がにっこりと笑顔を見せました。

「私がそれをお作りしましょう。
 何百回作ったかわからないぐらいですよ!」
「この学校では、我輩と彼女が魔法薬の先生のはずだが」

スネイプ先生が冷たく言った言葉に、とっても気まずい沈黙が流れました。
私は肩を竦めてロックハート先生をかばうようなことは言わずに、スネイプ先生の隣で彼に同意します。

さすがのロックハート先生もこれにはたじたじになって、スネイプ先生の鋭い視線から逃れます。
未だじとりと睨んでいるスネイプ先生の腕に触れて、あんまりロックハート先生を虐めないようにと私に意識を向けてもらいます。
彼は私をちらりと見下ろして鼻で笑いました。

「帰ってよろしい」

ダンブルドア校長先生がハリー達にそう言います。ハリー達は走りこそはしませんでしたが、いそいそとその場を離れていきました。


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