あまりの恐怖に私はハッと目を覚まします。短い息を何回も繰り返しながら、隣のスネイプ先生を起こさないようにゆっくりと上半身を起こしました。

何か嫌な、とても嫌な夢を見ていたような気がします。
ですが、夢の内容は全て覚えていません。

寒さが苦しくなってきてしまって自分自身をぎゅうと抱きしめていると、隣から小さな声が聞こえてきました。

「…、Ms.?」

起こしてしまったのでしょう。掠れた声を出すスネイプ先生が手を伸ばし、身を起こしている私の髪に触れます。
そのまま肩を引かれ、私はまた横になります。先生は私を抱き寄せながらあやすかのように私の頭を撫でていました。

「…怖い夢でも?」
「………た、ぶん」

短く答えるとスネイプ先生は何度も私の頭を撫でてくださいます。不安だけが私を包んでいます。
ぎゅうと彼の胸を掴んで打ち震えていると、目を閉じたままの彼は囁くように私に言葉をかけます。

「眠ればすぐに朝が来る。…それに我輩はずっとここにいる」
「…傍に…?」
「あぁ。ずっと」

スネイプ先生のしっかりとした声に私の不安が少しだけ薄れていきます。
優しく何度も撫でられているとだんだんと眠たくなってきました。ぎゅうと彼を抱きしめて、静かな息を零します。
また先生に助けられた私は小さく微笑んで、スネイプ先生の頬に自分からキスをします。

驚いたスネイプ先生は閉じていた目を開いて、胸元にいる私を見つめています。私はにっこりと微笑んで再びスネイプ先生に擦り寄ります。
目を閉じて擦り寄ったまま小さくお願い事を告げます。

「…先生。私は先生がずっと好きです。
 ……だから先生も、そう言ってください」

子供みたいなお願いに私を撫でていたスネイプ先生の手が止まります。
そして不意にぎゅうと彼から抱きしめ返されました。先生からそうされるのはそう多いことではなかったので、驚きつつも私も思わず抱きしめ返します。

「…我輩が執念深いのを知っていると思ったが」

スネイプ先生は私の耳元にぼそぼそと言葉をかけます。吐息のくすぐったさにクスクスと笑みを零しながら私は彼に囁きかけます。

「声にしたくなったんです。言葉を、聞きたくなったんです。だから…」

お願いをすると、少し止まったあと声が私に降り注ぎました。

「君をいつまでも愛そう。いつまでも。この身体が朽ち果てても、永久に」

あまい、あまい、体中に染み渡る…、蜂蜜のような黄金の甘い言葉。
先程まで感じていた不安が一掃され、彼から伝わる愛おしさに涙が出そうになります。

私からお願いしたことなのに、スネイプ先生にまた涙を見せるわけにはいかなくて私はぎゅうと彼を抱きしめます。震える声で私は感謝を告げました。

「……ありがとう、ございます。ふふ、冗談には聞こえませんね」
「Ms.の耳は正常なようだ。冗談ではないのだから」

自惚れではありません。私は彼を愛していて、彼も私を愛してくれています。
胸が詰まりそうな幸福。私は今、幸せで満ちていました。

スネイプ先生に優しく身体を抱きしめられたまま、私はゆっくりと目を閉じました。優しげな声が私に聞こえてきます。

「眠りたまえ。朝になったら我輩が紅茶を淹れよう」
「お砂糖たっぷりの甘い紅茶にしてくださいね」

再三のお願い事を告げるとスネイプ先生はお返事の代わりに私の額にキスをしてくださいます。にっこりと笑みを返して私は先生の胸元に顔を埋めて、ようやっと眠りに落ちたのでした。


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