「そろそろ完成でーす」

声をかけると、私の作業台の上に、形の違う小瓶が3つ浮遊してきました。煮詰めた毒薬はいつの間にか無香無色透明になっていました。
零さないように気をつけて瓶に詰めると、丁度スネイプ先生も調合が終わったようで、2種類の魔法薬をそれぞれ違う小瓶に詰めていました。

ですが用意されている小瓶はまだ2つ残されています。
首を傾げると目の前にイラクサ酒が飛んできました。これを詰めるということなのでしょう。

再び零さないように小瓶に詰めると、スネイプ先生が作った魔法薬と合わせて7つの魔法薬入り小瓶が出来上がりました。

使い終わった大鍋を浮遊させて纏めながら、7つの瓶を並べます。
様々な瓶に入った魔法薬達は中には毒薬やイラクサ酒も混ざっていますが、瓶の美しさも相まってどれも綺麗に見えます。

ふふと頬を緩ませていると、スネイプ先生が私の前に羊皮紙を差し出しました。

それは私が持っている7つの瓶がそれぞれ何の薬であるのかを、謎謎のような形式で書かれたものでした。

文章からして、既に並べられている状態から、必要な薬を探し出す試練のようです。

映画ではスネイプ先生の試練はなかったかのように思います。原作ではあったのでしょうか?
私は『知っている』といえども、『以前の経験』と私がこの世界に来る前に見た『映画』での記憶しかありません。映画の記憶なんてもう何年も前の話ですのでほぼ覚えていないも同然でした。

「正しく並べられますかな」

不意に掛けられた声に、小瓶を持っていた私はぴたりと固まり、途端に羊皮紙を睨みつけます。

「わ、私…、こういうの苦手なんですよね…」

小さく零した私が口を尖らせながら、ゆっくりと瓶を並べ替えていきます。

毒薬の2つはイラクサ酒の左に置いて、右端と左端は種類は違うもの。そしてそのどちらも前に進める薬ではなくて。
一番小さい瓶と一番大きな瓶は毒薬ではなくて、左端から2番目と右端から2番目は同じ味。

「…出来ました!」

瓶を傾けて中身を確認しながら並び終えると、スネイプ先生はいつの間にか後片付けを全て終わらせていました。私はどうやら夢中になりすぎていたようです。

振り返った彼に得意げな顔をしながら並べた瓶を見せると、スネイプ先生は鼻で笑ったあとに、2つ目と3つ目を入れ替えてしまいました。間違っていたのです。

「君は通れないようで」

嫌味を言うスネイプ先生から目線を逸らして、しょんぼりと肩を落とします。苦手なんですってば。

「でも、貴方が得意ならいいじゃないですか」

たとえこのような障害を通らなければならなくなったとしてもスネイプ先生が解いてくだされば問題はないのです。

スネイプ先生の隣に並んで彼を見上げると、スネイプ先生は怪訝そうに私を見下ろしました。

「何故、我輩が解く前提なんだ?」

本当に不思議そうに問いかけてくるスネイプ先生に私ははたと気が付いて、そしてムスと頬を膨らませてそっぽを向きます。

私はスネイプ先生の傍にいるのが当たり前だと思っていましたし、そこに疑問などありませんでした。
ですが、スネイプ先生は違うのです。彼に取って私はただの同僚ですし、ずっとそばにいるとは限りませんし、その理由もありませんし、私が勝手に思い違いをしていただけですし!

モヤモヤとした気分になった私は固く口を閉ざします。

スネイプ先生はそれに気づいているのかいないのか、何も言わずに並べていた瓶を纏めて鞄に詰めていました。

「設置してくる。君はここにいたまえ」

何の躊躇いもなく私を残していくスネイプ先生を、一切の非がないというのにじっと見送って、私だけがふくれっ面のまま、地下牢教室に残っていました。


(最初の冬の日)


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