やがてクリスマス休暇が終わりを告げ、ホグワーツに沢山の生徒達が戻ってきていました。
いつの間にかあの『みぞの鏡』も姿を消していて、私は内心ほっとしていました。
ずっと鏡がある場所を覚えていては、また鏡のもとへと行ってしまいそうだったからです。
そして数日が過ぎた時、休暇明け初めてのクィディッチ試合の日がやってきました。
今日の試合は前回、ハリーの箒に細工がされたということがあり、スネイプ先生が審判を行うことになっていました。
スネイプ先生が箒に乗っているところなんて、滅多にお目にかかれません。
これは是非見なくては!と私は意気揚々と教師用の観客席についていました。
試合はグリフィンドール対ハッフルパフ戦です。グリフィンドールが勝てば7年ぶりにスリザリンから寮対抗杯を取り戻せるのだといいます。
クィディッチというかスポーツ関連に詳しくない私は、何故ハッフルパフに勝てばスリザリンから抗杯を取り戻せるのか全くわかりませんが、聞いた話だとそうなるのです!
「隣、よろしいかな?」
私に朗らかに声をかけたのはダンブルドア校長先生でした。
私は目をぱちくりとさせてから、肯定の微笑みを向けます。1度立ち上がって、校長先生が座るのをエスコートします。
そうしてから再び腰を下ろすと、試合開始のホイッスルが鳴り響きました。
生徒の間で飛び回り、審判をしているスネイプ先生が目に入ります。
やっぱり彼に箒は似合いませんね。思わずくすりと笑ってしまいます。
「セブルスとは仲良くやっているようじゃの」
不意にダンブルドア校長先生が試合から目を逸らさぬまま、そう言いました。
私も試合から目を逸らさずに口元に微笑みをのせます。
「意地悪な人に見えますし、実際にとっても意地悪ですけれど、根は優しい人ですから」
「ほっほっほ。仲が良いのはいいことじゃ」
視線の先でクアッフルが飛び交います。少し黙り込んだ私は、次にゆっくりとまた声を紡ぎました。
「……聞きました。貴方が彼に『私を1人にしないように』とお話してくださったことを」
小さな声はきちんと聞いていなければ、すぐに聞き落としてしまいそうなものでした。
ですが、ダンブルドア校長先生はまた朗らかに笑いました。
「老人のお節介じゃったかな」
「少し」
「正直じゃの」
口元を抑えてふふと笑っていると、校長先生は優しげな声で私に言いました。
「……君もセブルスの傍に居てやっておくれ」
目をぱちくりとさせて、私はダンブルドア校長先生の横顔を見つめます。
じっと見つめていても校長先生は、私に視線を向けることはありませんでした。
私は静かに視線を落として、指先を見つめます。手は酷く小さなものでした。
「…違いますよ。むしろ私の方が離れられないんです」
突然、生徒達の爆発したかのような完成が上がり、バッと顔を上げました。
見ると、既に地面に降りているハリーが高々とスニッチを掲げています。
「見事じゃ」
ダンブルドア校長先生が笑います。試合の決定的瞬間を見逃した私は短い悲鳴を上げました。
「ええっ!? もう終わっちゃったんですか!?」
「ほっほっほっ」
すぐさま沢山の選手に囲まれるハリー。そのすぐ近くに降り立ったスネイプ先生を見ながら、私は頬を膨らまします。
優しげに笑ったダンブルドア校長先生にぺこりと頭を下げて、興奮冷めやらぬ生徒達に紛れて観客席を降りていきます。
城へと戻る道の途中できょろきょろとスネイプ先生を探していると、視界の端でスネイプ先生とクィレル先生の姿が見えました。
私は表情を怪訝そうなものに変え、生徒達の波から離れて彼らに近づいて行きました。
2人は禁じられた森の方へ向かっています。近づいたことでよく見えるようになり、わかったのは、スネイプ先生が随分と乱暴にクィレル先生を引っ張っているということでした。
何かをスネイプ先生が問いただしているのを、少し離れた場所で見つめます。
そして不意にバッと振り返ったスネイプ先生に私はにへらと笑って手を振りました。スネイプ先生の舌打ち。
それをにっこりと笑顔でスルーして、先を歩く彼の後ろをついていきます。
クィレル先生から離れて、2人になったところで、スネイプ先生は口を開きました。
「聞いていたのか?」
「声は聞こえませんでした。
でも、クィレル先生を虐めているように見えましたよー?」
からかうようにそう言うと、彼は歩を早めてしまいます。
いつもは私に歩を合わせてくださっている彼が、普通に歩いてしまえば、私は小走りになるしかありません。
むすーと頬を膨らませて追いかければ、大広間の前あたりで追いつき、あとはまた歩幅を合わせてくださいました。