「色々なお話はあとにしましょう」

そう言って、私はジニーちゃんの肩を支えながら出口へと歩いていきます。
来た道を戻っていくと、ロンが私達を見つけ、そしてジニーちゃんの姿を見て、歓声の声を上げました。
1人楽しそうに歌っているロックハート先生を横目に、私は先程落ちてきたパイプを見上げます。

「さて、私も考えなしに降りてきてしまいました。結構深くまで来ちゃいましたね」

私がパイプを見上げていると、私の前にフォークスが華麗に飛んできました。そして私の前で羽をぱたぱたとさせています。
そうです。不死鳥のフォークスならば。

「捕まれって言ってるように見えるんですけれど…」

当惑を浮かべるロンに、ハリーもはっと気づいたように声をかけました。

「フォークスは普通の鳥じゃない。
 みんなで手を繋がなきゃ」

私はジニーちゃんと手を繋ぎます。ポケットから顔を覗かせたフェインに、私は隠れていてくださいね。と声をかけます。
そしてみんなで手を繋いで、フォークスに捕まります。すると次の瞬間にはフォークスに連れられて空を飛んでいました。
今まで滑り落ちてきたパイプを上がっていきます。

気付けばすぐに飛行は終わっていました。トイレに戻って着地をすると、沈んでいた手洗い場が元の位置へと戻りました。

秘密の部屋は再び閉じられたのです。

マートルちゃんがぽかんとした表情で私達を見ていました。

「生きてるの」
「そんなにがっかりした声を出さなくてもいいじゃないか」

ハリーが真顔で答えます。マートルちゃんが残念と声をかけながら頬を染めていました。恋する女の子は可愛いものです。

いそいそとトイレから抜け出して、傍を離れた時になって、ロンがハリーをからかうように声をかけていましたが、ハリーも、そしてジニーちゃんも疲れていてそれどころではないようでした。

私は未だにぼたぼたと泣いているジニーちゃんの手を引いて、ゆっくりとマクゴナガル先生のお部屋へと歩いて行きました。

ノックをして、扉を開くと、そこにはモリーさんとアーサーさんがいて、ぽかんと私達をみていました。
ですが次の瞬間には叫び声が上がります。声はジニーちゃんを呼んでいました。

モリーさんはジニーちゃんを強く抱きしめて、アーサーさんも2人ごと抱きしめるように腕を伸ばしました。
フォークスがスーっととんていって、暖炉のそばにいるダンブルドア校長先生の肩に飛び乗りました。ダンブルドア校長先生も帰ってきていたのです。
近くにいたマクゴナガル先生が驚きの表情で私を見ます。

「リク、貴女が?」
「私は何も出来ませんでした。2人が頑張ってくれたのです」

視線が一斉に2人に向きます。そしてハリーがちょっと悩んだようにしてから、デスクの近くまで歩いていき、デスクの上に、組み分け帽子と、ルビーが散りばめられた剣と、そして穴の空いた黒い日記を置きました。

ハリーはゆっくりと語り始めました。

今年1年間にあったことを。姿のない声を聞いたことを。それがバジリスクだったということを。ハーマイオニーが先に気が付いていたはずだということを。ロンとハリーで禁じられた森の中に入り、アラゴクと会ったということを。『嘆きのマートル』が住んでいるトイレが『秘密の部屋』への入口ではないかと、考えたことを。

そして、黒い日記の正体のことを。

ハリーの言葉を聞いて、アーサーさんが驚きの声を上げて、しゃっくりを上げるジニーちゃんの肩を掴みました。

「ジニー! パパはお前に何にも教えてなかったのというのかい!?
 パパがいつも言っていただろう? 脳みそがどこにあるか見えないのに、一人で勝手に考えることできるものは信用しちゃいけないって教えただろう?」

ジニーちゃんはぼたぼたと涙を流してまたしゃっくりと上げます。

「あたし、し、知らなかった。ママが準備してくれた本の中にこれがあったの。あたし、誰かがそこに置いて行って、すっかり忘れてしまったんだろうって、そう思った…」
「Ms.ウィーズリーはすぐに医務室に行きなさい。
 過酷な試練じゃったろう。処罰はなし。もっと年上の、もっと賢い魔法使いでさえ、ヴォルデモート卿にたぶらかされてきたのじゃ」

ダンブルドア校長先生はきっぱりとそう言って、そして優しく微笑みかけました。
熱いココアを飲むことをおすすめして、アーサーさんとモリーさんがジニーちゃんを医務室に連れて行きます。次にダンブルドア校長先生は次にマクゴナガル先生に向きます。

「のう、ミネルバ。これはひとつ、盛大に祝宴を催す価値があると思うんじゃが、キッチンにそのことを知らせに行ってはくれまいか?」
「わかりました」

マクゴナガル先生も小さく微笑んで、ドアの方へと向かいます。部屋に残されたのは私とダンブルドア校長先生、ハリーとロンとそして酷く大人しいロックハート先生の5人でした。
緊張した顔のハリーとロン。彼らはこれ以上校則を破ったら退校処分になる予定ではあったのです。

ダンブルドア校長先生もそのことを1度口にして、それからお茶目な風に微笑みを浮かべました。

「どうやら誰にでも誤ちはあるものじゃな。わしも前言撤回じゃ。
 2人とも『ホグワーツ特別功労賞』が授与される。それに、うむ、1人につき、200点ずつグリフィンドールに与えよう」

ロンの顔が真っ赤に染まりました。ダンブルドア校長先生は次に静かなロックハート先生を見ました。
声をかけると、ロックハート先生はきょとんとしていました。ロンとハリーが再び彼の状況について説明します。
彼はあろうことかハリーとロンに忘却呪文をかけようとして、そしてそれが暴発し、自分自身へと当たって、大抵のことは何もかも忘れてしまったのです。
ダンブルドア校長先生は、ロンにロックハート先生を医務室に連れて行くようにお願いしていました。

部屋に残る3人。ハリーの視線がおずおずと私を見上げ、次にダンブルドア校長先生と私を見比べていました。

ハリーは先程の説明で、私の名前を出さなかったのです。それはきっと意図的に。
ダンブルドア校長先生の視線が私へと移りました。彼は朗らかに微笑みかけます。


prev  next

- 36 / 60 -
back