その後、私達にも指示を出し、数分後には全生徒が再び大広間に戻ってきていました。
「先生達全員で、城の中を隈なく捜索せねばならん」
マクゴナガル先生とフリットウィック先生が大広間中の窓を閉める中、ダンブルドア校長先生がそう言いました。
集まった生徒達は未だ当惑の表情を浮かべています。生徒達への説明は安全が確認されてからになりそうです。
「皆、今夜はここに泊まることになろうの。皆の安全の為じゃ」
ダンブルドア校長先生が杖をひと振りさせて、沢山の寝袋を現してから大広間を出ていきます。
私もその後ろについて、城内の搜索に移ろうとした時、スネイプ先生が私の肩に手を置いて引き止めました。
「君は残れ」
「私も探しに行きます」
先生は短くそう言います。私はぷくと頬を膨らませて反論しますが、スネイプ先生は厳しい表情を浮かべたままでした。
「ここを生徒だけにする気かね。君が残れ」
「………はい」
確かに生徒達だけにするわけにもいきません。私はむすと頬を膨らませたままでしたが、大人しく先生の指示に従うことにします。
私は鞄から顔をのぞかせたフェインを地面へと下ろしました。私の顔を見上げるフェインが短く頷きます。
「フェイン、貴方は探してきてください」
「シュー」
「……1匹で徘徊させるのかね」
「フェインはいい子ですから」
滑り出していったフェインを怪訝そうに見送ったスネイプ先生ですが、私はにっこりと笑顔を浮かべます。
フェインは、きっと誰よりも早くシリウスを探し出してきてくれるハズです。そして、きっとシリウスの手助けをしてくれるでしょう。
少し不服そうな顔をしていたスネイプ先生でしたが、彼も城内を捜索するために大広間から出て行きました。
私は大広間の入口の所に椅子を呼び寄せて、そこからまだ不安にざわついている生徒達を眺めます。
沢山の生徒達が寝袋に入り、その周りを監督生達が見回りをしています。
グリフィンドール生は、他寮の生徒達に何があったのかを話し、そしてシリウスがどこに行ったのか憶測しているようでした。
暫くざわついていた大広間でしたが、徐々に話し声が聞こえなくなってきて、ようやくみんなが寝静まる頃、時計は既に3時くらいを示していました。
そしてその頃、一通りの捜索を終えたらしいダンブルドア校長先生が戻ってきました。
椅子に座っていた私は校長先生の姿を見て立ち上がり、彼に駆け寄ります。監督生としてずっと起きていたパーシーくんも同じく駆け寄ります。
「先生、何か見つかりました?」
「いや。ここは大丈夫かの?」
「はい。特になにも」
答えるとダンブルドア校長先生は少しだけ安堵の色を見せました。眠っている生徒達を見回して静かに声をかけます。
「何も今すぐ全員を移動させることはあるまい。グリフィンドールの門番には臨時のものを見つけておいた。
明日になったら皆を寮に移動させるが良い」
「わかりました」
私は短く返事をして、生徒達を見回します。パーシーくんは心配そうに太った婦人が見つかったかどうかを問いかけました。
「3階のアーガイルシャーの地図の絵に隠れておる。合言葉を言わないブラックを通すのを拒んだらしいのう。それでブラックが襲った。
婦人はまだ動転しておるが落ち着いてきたらフィルチに言って、婦人を修復させようぞ」
そこでまた大広間が開く音が聞こえて、視線を向けるとスネイプ先生が帰ってくるのが見えました。
おかえりなさい、と声を掛ける私ですが、スネイプ先生は私に視線を向けることなく校長先生へとご報告していました。
「4階は隈なく探しました。ヤツはおりません。
フィルチが地下牢を探しましたが、そこにもいません」
どうやらシリウスは無事逃げ切ったようです。
フェインは未だ戻ってきていません。フェインはとってもお利口さんです。シリウスを見つけたあと、きっと彼の手助けをしてくれるはずです。
私は誰にもバレないように一息ついていると、厳しい顔をしているスネイプ先生が校長先生へと囁くように声をかけます。
「校長、ヤツがどうやって入ったか、何か思い当たることがおありですか?」
「いろいろとあるが、どれもこれも皆ありえないことでな」
「どうも…内部の手引きなしには、ブラックが本校に入るのは、ほとんど不可能かと」
「この城の内部の者がブラックの手引きをしたとは、わしは考えておらん」
ダンブルドア校長先生はきっぱりとそう言い、スネイプ先生がそれ以上何かを言うのを封じました。
その後、ダンブルドア校長先生は吸魂鬼達に会いに行くために大広間から出ていきます。
私は見るからに不機嫌そうな顔をしているスネイプ先生をちらりと見ます。
スネイプ先生はシリウスのことを手引きした者がいると思っています。そして手引きをしたのはシリウスと親友でもあるリーマスさんだと思っているのです。
リーマスさんが手引きをしているのではないことを知っている私は、不服げな顔をしているスネイプ先生を宥めるように腕にぽんと触れて、次に困惑の表情を浮かべているパーシーくんに微笑みかけました。
「監督生達も疲れましたよね、少しだけになってしまいますが、眠ったほうがいいですよ」
そう声をかけると、少しだけ困った顔をしたままのパーシーくんも、何かを言いたそうにしつつも、やっぱり疲れていたのでしょう。他の監督生達も緩慢な動作で寝袋へと入っていきました。少しするとすぐに寝息が聞こえてきます。
その様子に少し頬が緩んだ私ですが、隣で未だ険しい顔をして立つスネイプ先生を見上げ、苦笑混じりに笑いかけます。
「貴方も部屋に戻っていてください。私は少し残ってますね」
声をかけると彼はさらに不機嫌そうな顔をしていました。
動こうとしないスネイプ先生に私は短く声をかけます。
「ひとりでも大丈夫ですよ?」
「………本でも持ってこよう」
「ふふ。助かります」
このまま私が番をすることに、納得こそしていないものの、了承はしてくださるようです。
ふらりと大広間から抜け出ていくスネイプ先生を見送ってから、私は窓際に移動して、近くの椅子を静かに引き寄せます。
数分後、戻ってきたスネイプ先生は言葉通り、数冊の本を持ってきてくださいました。
私に本を手渡したあと、スネイプ先生も何も言わずに私の2つ程隣に新たな椅子を生み出して、持ってきた本のうち1冊を手に取っていました。
ぱちくりと瞬きをする私。彼はどうやら私の夜ふかしに付き合ってくださるようです。
その意図に気が付いた私は小さく微笑みを浮かべてから、微妙に開けられた距離を自ら詰めて、すぐ隣に並んだ私も本を開きました。