クリスマス少し前のホグズミードは沢山の生徒達で溢れていました。そんな生徒達の中に混ざって目を輝かす私と、人混みに不満げなスネイプ先生と、そんなスネイプ先生を見て端へと避けていく生徒達。
スネイプ先生の隣にいると歩きやすいことは歩きやすいのですが、ちょっと顔の強ばった生徒達を見ると可哀想なことをしたと思ってしまいます。
「怖い顔してますよ?」
ちらりと横を見上げてそう言うと、彼の怖い顔はもっと怖くなります。もう。
この前まで雨が降っていたというのに、今では大粒の雪が降り注いでいます。
寒さ対策に巻いてきたマフラーをぎゅと握って、目当てのお店にたどり着きます。大通りは沢山の生徒達で溢れていましたが、ここは流石に生徒達も殆どいなく、静かな雰囲気です。
真っ先に目当ての魔法薬の棚に向かうスネイプ先生の後を追いかけて、私も一緒に棚を眺めます。
自分で作れるものも中には並んでいますが、市販のものを買ってみて自分が調合したものと比べてみたいですし。
じっと魔法薬を見つめて考えながら吟味をしていると、気付けばスネイプ先生は既にお会計を終わらせていました。
それに気がついた私ははたと目をまん丸とさせます。彼は買うものが決まっている時はとってもお買い物が早いのです。
「早いです!」
「必要分は揃えた」
「ちょっと、ちょっとだけ待ってくださいね」
待ってくださっている先生に少し慌てて魔法薬を数本選びます。店主さんの所へと持っていき、お会計を済ませると、スネイプ先生が私の荷物を持ってくださいました。
申し訳ない気持ちもありますが、魔法薬を入れた瓶はあまり軽いものではないので、とっても助かります。
「ありがとうございます」
ちらりと見上げてお礼を言うと、スネイプ先生はふいとまた前を向いてしまいます。
さて、本当だったらハニーデュークスにも行ってクリスマスのお菓子を買っていきたいところですが、今日の混雑具合の中スネイプ先生についてきていただくのはちょっと大変です。
でも、折角お出かけに来たのですから。
「ホッグズ・ヘッドにでも行きます?」
「…ホッグズ・ヘッド? 三本の箒ではなく?」
「今日ならあちらの方が空いてますよ」
ホッグズ・ヘッドはどことなく胡散臭さを漂わせているパブですが、それ故にいつも人気がなく静かなところでもあります。
お店の雰囲気だけだったら私も苦手なところではありますが、店主が誰なのかを知っているとたまに行ってみたくなるのです。
少し悩んだ様子のスネイプ先生でしたが、彼も人混みが好きなわけではありません。
特に何をいうでもなくホッグズ・ヘッドに向かって歩き始めるスネイプ先生と、ご機嫌な私もにこにこと頬を緩ませたまま並んで歩きます。
店内に入ると、やっぱり少し薄暗い雰囲気です。バーテンダーさんがちらりと私達を見て、何も言わずにまたコップを拭いていました。
2人分の飲み物を頼んでから、窓際の席に座るとスネイプ先生はぽつりと言葉を零しました。
「機嫌は治ったかね」
その言葉に私はぱちくりと瞬きをします。そして、苦笑を零して机に頬杖をつきました。
珍しいホグズミードへのお誘いはどうやら私のご機嫌取りだったようです。
「怒ってたわけじゃないですよ」
この前。満月の日のリーマスさんの代わりにスネイプ先生がDADAの授業を行いました。
『前』のことがあるので、リーマスさんの授業の進行状況や次にやる予定の項目等も聞いていたのですが、スネイプ先生はやっぱり前のように『狼人間』の事を授業で取り上げたのです。
生徒達からあとでそのことを聞いて、午前中はずっともやもやとしていましたが、ホグズミードへのお誘いを受けて幾分すっきりとしていました。
「というかご機嫌取りだったんです?」
にこりと笑って意地悪を言うと、スネイプ先生は見るからに顔をしかめていました。ひどいです。
「君の機嫌が悪いと洗い物が増えていくからな」
「たまには先生が洗ってくださってもいいんですからねー」
洗い物や掃除は好きでやっているからいいのですが、いーっと笑ってそう言うと、先生は肩を竦めて短く鼻で笑っていました。
たとえスネイプ先生でもリーマスさんに意地悪しているのを見るのは、とってももやもやしてしまいます。
スネイプ先生の性格を知っているが故に強く言及出来ない私も私ですが、だからといって先生から見て機嫌が悪いそうにしていたのなら少しだけ反省しておきましょう。少しだけですけど。
そこで私はふと思い出したかのようにスネイプ先生をじっと見つめます。
「あ、でもそれならハニーデュークスにも行きたいです」
「……混雑を避けてここに来たのでは?」
「ハニーデュークスに行ったら私のご機嫌は完全回復します」
「それは知っていたが…」
ふふんと得意げな顔をして、渋い顔をするスネイプ先生を見つめていると、彼は本当に渋々と言った風に短く頷きました。
わーいと素直に喜んで、ハニーデュークスで沢山のお菓子を購入しようと買う物リストを頭に浮かべます。
「貴方にも綿飴羽ペン差し上げますね」
「いらん」
冗談にも本気の拒否をされてしまいます。そんなのんびりしたいつもの雰囲気に、私はからころと上機嫌に笑うのです。