イースター休暇が始まりました。生徒達には沢山の宿題を出してしまいましたが、休暇明けにはすぐクィディッチの優勝戦が予定されています。生徒達はもちろん、私も含め、先生達も優勝戦を楽しみにしていました。
そして禁じられた森の中にある暗い洞窟の中でも楽しみにしている人がもうひとり。
「ハリーは何の箒を乗っていた?」
サンドイッチを頬張るシリウスの問いに私は一瞬、戸惑います。私は箒に詳しくはないのです。
えっと、確かに箒の名前は聞いたことがあった気がするのですが…。ニンバス2000ではなくて。
「えっと、前にあったレイブンクロー戦で新しい箒に乗っていたはずなのですが、名前まではちょっと…」
「新しいものには乗っていたか、そうか」
嬉しそうなシリウスに私も頬が緩みます。気がついた私はにこにこと笑いながら声をかけました。
「…。暴れ柳に前に乗っていた箒が大破したあと、クリスマスの日に知らない誰かから急に届いたんですって。
マクゴナガル先生がシリウス・ブラックから届いたものじゃないのか、ってとっても心配していたんですけれどもも」
「さすがだな」
にやりと笑ったシリウスに私も合わせて笑います。やっぱりシリウスはハリーのことがとってもとっても大切なのです。
「では貴方が?」
「今までずっと誕生日プレゼントも何も渡せなかったからな」
ずっとアズカバンにいたシリウスからの13年分の誕生日プレゼントです。クィディッチが大好きなハリーの喜びようはそれはもう想像できるものではなかったでしょう。
にこにことしていた私はふとこの前のホグズミードの件を思い出して言葉を続けます。
「一通り落ち着いたら、貴方のお名前でホグズミードの行きの許可証も書いてあげてください」
「まさか、持っていないのか!?」
「彼、マグルの方と一緒に暮らしていて、それで」
ハリーのご家庭の事を思うと、暗い気持ちになりますが、シリウスにそれを伝えるべきかどうかは悩んでしまって、曖昧に濁してしまいます。
シリウスも少しそれを悟ったのか、一瞬黙り込んだあと、食べかけのサンドイッチを一気に頬張り込みました。
「いつもありがとう」
シリウスは空になったバスケットを閉じます。私もそれを受け取って立ち上がりました。
「では、私もそろそろ行きますね。クィディッチの優勝戦ももうすぐですが、試験ももうすぐなんです」
「あはは。頑張れ、先生」
先生と呼ばれるのはあまり悪い気はしません。またゆるりと頬を緩ませた私は、シリウスに手を振ってから禁じられた森を抜けるのでした。
†††
「今年の生徒達はみなさん優秀ですね」
私は採点をしながら生徒達の試験の出来に満足げに微笑みます。
クィディッチ優勝戦のあと、数日後に行われた学期末試験。
先生達も生徒達も1日中ぴりぴりとしていましたが、試験は無事何事もなく終わり、生徒達は試験終わりで開放感に満ち、そして先生達は大量の採点に追われていました。
ご機嫌で試験用紙に丸を付けていく私と、採点用の羊皮紙を手元において、生徒達が調合した魔法薬の採点をしていくスネイプ先生。
スネイプ先生の表情はご機嫌な私と反して、とっても不機嫌そうでした。
「……やはり来年からの試験は我輩が作ろう」
「筆記と実技と交互に決めることにしません?」
今年は各学年の筆記試験を私が、実技の魔法薬の選定をスネイプ先生がしました。
スネイプ先生は私が作った問題が簡単すぎたと不満げなのです。
「きちんと学習条件は満たした試験にはしましたもん。みなさんが頑張った結果ですよ」
そうは言いますが、やっぱりスネイプ先生は不機嫌そうです。そんなスネイプ先生の採点している魔法薬ですが、どの学年も難しいものが選ばれ、なかなか点数は入っていないようです。
私は沢山の羊皮紙に花丸をつけて、コメントを残しながら、試験管を傾けて難しい顔をするスネイプ先生をちらりと見て、くすくすと笑います。
「これぐらいがちょうどいいバランスだと思いますよー」
「生徒を甘やかすな」
「はーい」