(セブルスの幸せセブルスの幸せセブルスの幸せーっ、リア、我慢するのよ!!)
何の因果か、リアの隣には不機嫌さが最骨頂のシリウス・ブラックがいた。
今日という日に限って、リーマスが体調不良で休みだったらしく、4人いる悪戯仕掛人が3人しかいなかった。
元からクラスは丁度偶数だったので、3人しかいない悪戯仕掛人を見て、リアの顔は青ざめた。
苦い顔をしたのはシリウスも同じで、ひたすらにリアの存在を無視しようとしていた。
だが。
「あ、リア。今日、1人なの?」
ジェームズ・ポッターが2人のブラックを裏切ってリアに話し掛けてきたのだ。
リアは内心、構わないで。と叫びながらも返事をする。
「………セブルスと喧嘩。したの。
あ、魔法薬学は私の得意分野だし、1人でも大丈夫よ!」
「そんなこと言っても、もし失敗したら大変だろう?
ほら、シリウスを貸すよ。僕らも丁度1人足りないんだ」
「ジェームズ!! 俺はピーターと組む!」
苛々とした声を上げたシリウスがピーターの腕を引いて、ジェームズをキッと睨んだ。
が、ジェームズもニヤニヤと笑顔を返すとピーターの逆の腕を引いた。
「残念。ピーターは僕と組むんだ」
「ピーターは俺と組むんだ」
「え、ぇ、え?」
「私とポッターが組めばいいじゃない」
間に挟まれたピーターがおろおろとする隣、リアが冷めたようにジェームズを見つめていた。
なんだかんだでそれも言いくるめられてしまったのだが。
リアの隣で作業するシリウス・ブラック。
ニヤニヤしたままのジェームズがリア達の1つ後ろの席で魔法薬を調合していた。
(ジェームズ・ポッターはあとで闇討ちね)
リアはジェームズへの殺気を浮かべたまま、些か乱暴に千切りを始めた。
成績は共に良いペアだったためか、2人は無言のままでも失敗などなく完璧な薬品を調合していく。
後ろのジェームズが口笛を吹いた。
「息ピッタリじゃないか。君達」
「ジェームズ、あとで覚えていろよ」
シリウスが殺気と共に振り返る。
ジェームズは肩を竦めて、ピーターの作業を見守ることに専念したようだ。
切れ味の悪くなった教室のナイフと格闘していたリアは、中々切れないヘビの皮に溜め息をついた。
それを見て、呆れた様子のシリウスが小さく言葉を出す。
「貸せ。俺がやる」
「……えぇ、お願い。
私、鍋を見てるわ」
立ち位置を交換する2人。その時に、シリウスはリアの首から下がるネックレスを見つけた。
「ソレ――」
思わず声を出したあと、シリウスはバッと自身の口を覆った。
リアも聞こえなかったふりをしたかったが、反射的にネックレスに伸びた手を戻せずにいた。
「………クリスマスに貰ったのよ。『知らない人』からだけど」
「…『知らない人』からのプレゼント、首から下げるのかよ」
「別に。可愛かったから。特に意味なんかないわ」
「……そうかよ」
無表情に言い返したリアに、シリウスも無表情に返す。
2人とも視線など合わせないまま、作業を続けた。
魔法薬はどんどん出来上がっていく。あとは仕上げにヘビの皮を入れればいい。
「……ねぇ、切れた?」
「まだ」
シリウスは本当に切りづらいナイフに苛々し、乱暴にナイフを振り下ろしていた。
その忙しそうなシリウスを見つめたリアは誰にも気づかれないように、優しく、微笑んでいた。
(Let's keep this between you and me.(ここだけの話にしておきましょう))
彼女はとても嬉しそうだった。