リアは暫く前からシリウスの実家であるグリモールド・プレイス12番地で暮らしていた。

以前までは、父が残した広く大きな家に住んでいた。
だが、家の中には屋敷しもべすらもいないため、リアはだいぶ前からシリウスの実家で過ごしていた。

ぼんやりと窓の外を眺めていたリアは、同じ車内にいるシリウスへと視線を向けた。

彼は窓の外をずっと見つめており、リアは静かに自分の指先を見つめた。
いつからだろう。彼を見つめることが苦しくなって、自分の指先を見つめることが多くなったのは。

車が、家の前へたどり着いた。


「ヴァルブルガおば様、オリオンおじ様。
 お久しぶりです。とってもお会いしたかったですわ」
「リア。よく帰って来てくれましたね。
 成績は見ましたよ。これからも精進してくださいね」

シリウスは実の母ヴァルブルガ・ブラックと、リアが話す声を離れた位置で聞いていた。

リアが夏休みを嫌うのと同時に、シリウスも実家に戻らなければならない夏休みが嫌いだった。

現に、シリウスの存在を無いものとして、リアばかりに微笑む、彼の母ヴァルブルガ。父のオリオン。
実の息子であるシリウスは1歩引いた場所でその様子を見つめていた。

代々スリザリンになっていたこの家系では、グリフィンドール寮に決まったシリウスは酷く、差別されていたのだ。

リアはそんなシリウスを寂しげに見たあと、シリウスの両親に満面の笑みで口を小さく開いた。

「『シリウス様』には学校でもいつもお世話になっています」

笑顔を向けたまま、黙り込んだ2人にリアは深々と頭を下げて、シリウスの腕に親しげに手を載せる。
甘えるような猫撫で声を出しながら、シリウスを見上げるリア。

「『シリウス様』。よろしければ荷物をお部屋に入れるのを手伝って貰えませんか?」
「………えぇ『リアさん』。貴女のその白い腕には厳しいでしょうね。
 僕に任せてください」

目も合わせずに言い切ったシリウスがリアの荷物を持ち上げ、そそくさと自室へと向かっていった。

両親と擦れ違う瞬間だけ、小さく声を出した。

「………ただいま。母様、父様」

帰ってこない返事に、シリウスよりもリアが寂しげに俯いていた。


(Don't be a stranger.(他人行儀はよして))

たとえ本当に他人だったとしても


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