シリウスの部屋は親に反抗する意を込めて、マグルのポスターを張ったり、壁や家具をグリフィンドール寮色にしていた。
殆どがスリザリン色である緑と銀に覆われたブラック家で、ここだけは赤く包まれていた。
リアはこの部屋に入るのが好きだった。
緑と銀は優雅で美しい。が、赤と金の華やかな装飾もリアは好きだった。
昔からこんなにグリフィンドールカラーにしていたわけではないが、昔もこの部屋が好きだった気がする。
それが、何故かもわからないまま。
リアはノックをし、返事が無いことを知りながらも部屋に入っていった。
中ではベッドに寝転がったシリウスが怪訝そうにリアを見たあと、また枕に頭を落とした。リアの溜め息。
「……いるなら返事しなさいよ」
「…返事が無いのに、開けんな…、眠いんだよ」
「クリーチャーが夕食の準備をしたわ。私は呼びに来ただけ」
入り口から1歩も動かず、リアは目を閉じたシリウスの顔を見つめていた。
黒髪が流れるようにシリウスの頬にかかっている。伏せた瞳、長い睫毛。
シリウスはまた居眠りを続けたようで、反応が無くなった。
(黙っていれば格好いい。……確かに、黙っていれば、ね。よく言ったものね)
リアはぼんやりとそんな事を考え、ベッドの脇まで近寄った。起こさない訳にもいかない。
隣に立ったまま、リアは声をかけた。
戸惑いつつも寝転んだシリウスの肩に触れた。
「夕食、冷めてしまうわ。起きた方がいいと思うけど」
「………」
「ねぇ、聞いてる?」
反応が無いシリウスに、リアは機嫌を損ねながら、ベッドの端に腰をかけ顔を覗き込んだ。
(……やっぱり、綺麗…、まだ寝るのかしら)
リアの手が肩から離れ、シリウスの頬に触れ、すぐに離した。
透き通った肌が指に心地好い。リアは怖ず怖ずと、再び触れてみた。
バッとリアの手を掴むシリウス。
目覚めたシリウスがじっとリアを見つめていた。
リアが手を引こうとするが、シリウスはリアの手を握ったままだった。
彼女はだんだん慌てはじめるが、視線はシリウスから離すことが出来ずにいた。
シリウスがゆっくり身体を起こし、そのままリアの手を引いて、彼女の身体を抱きしめた。
リアの頭が真っ白くなる。パニックになったまま、身動きが出来なくなった。
「ッなに」
「……小せぇ…、痩せすぎ…、抱き心地がねぇ…」
寝ぼけているのか、ぼんやりと呟くシリウスに、パニックに陥ったままのリアが、彼の頭を叩いてバッと離れた。
「ね、寝ぼけすぎよ…ッ!
わたし…、私、先に行ってるわよ!」
シリウスの身体をまたベッドに押し戻し、リアはシリウスの部屋を飛び出した。
彼女は真っ赤に染まった頬を押さえながら、階段の手すりの所で立ち止まり、しゃがみこんだ。
(びっくり…した…)
バクバクと高鳴る心臓を押さえて、リアは深呼吸を繰り返す。
寝ぼけていただけ。寝ぼけていただけ。
彼はもっとスタイルのいい美人な女の子が好みなんだから。
あぁ、私を誰と間違えたのだろう。
リアは暫くしてからまた立ち上がり、階段を降りていった。
彼女の耳は赤いままだった。
(Hold me tighter.(もっと強く抱きしめて))
息が止まっちゃうくらいに、強く。強く。