コンパートメントの中でリアは殆ど寝たふりをしていた。
リアの隣にはリーマスと、その奥にピーター。
向かいにはジェームズとシリウスが座っている。
その中で壁に身体を預け、リアはずっと目を閉じていた。
そろそろホグワーツに着くであろうという時、リアはゆっくり目を開いた。
にこりと微笑んだリーマスが顔を覗き込む。
「よかった。丁度起こそうと思ってたんだ。
リアが先に着替える? なら僕達は出ていくけど…」
「いえ、ありがとう。
私がコンパートメントを出るわ。その方がいいもの」
リアは小さく微笑むと、棚の上から小さな鞄を取り出した。中にはローブ等が入っている。
彼女がそのままコンパートメントを出ようとした時、ジェームズが後ろから声をかけた。
「エバンズ!」
は。と視線をあげると目の前には赤毛で緑の目をした、可愛らしい女の子が立っていた。
リリー・エバンズ。セブルスの幼なじみだと、リアは記憶していた。
リリーはかけられた声の主を認識すると、その可愛らしい顔を不満げにしかませた。
急にリリーに話しかけるジェームズに、リアは首を傾げてリーマスを見た。
「ジェームズ、少し彼女に熱があるみたい」
「ふぅん。なるほどね」
囁かれた言葉にリアは口元を隠し苦笑を零した。
どうやらリリーは隣のコンパートメントに乗っていたらしく、リアと同じように着替え待ち。だったようだ。
「リリー、着替え終わった――ポッター?」
「……何でスネイプが一緒に出てくるんだ?」
ジェームズの表情が怪訝そうに歪められた。リリーがそんなジェームズを払うように押しのけた。
ジェームズとセブルスが睨み合う中、リアは邪魔するようにリリーの背を追った。
途中、リアは満面の笑顔でセブルスに向いて、それを見てシリウスが苛々と舌打ちをした。
「待って。私も着替えたいの。一緒にいいかしら?」
「うん、もちろん」
振り返ったリリーは同じく笑顔を向けて、リアと一緒にコンパートメント内へ入った。
入ってから、リアは小さく呟く。
「セブルス、大丈夫かしら」
「……貴女、確かスリザリンだったわよね?」
着替えながら興味深そうにリアを見るリリーに、リアは愛想笑いをして微笑んだ。
「えぇ。
私はリア・ブラックよ」
「あ、ごめんなさい。私はリリー・エバンズ。
セブルスと仲がいいの?」
「えぇ。同じ寮だものね。
貴女は? 彼と仲がいいの?」
聞き返すとリリーは少しだけ眉根を寄せた。
困ったように微笑んでから頷くリリーに、リアは一言だけ呟いた。
「よかった」
そして着替えを終えたリアはリリーへと振り返り、彼女も着替え終わった事を確認すると扉を開け、セブルスを呼んだ。
扉の脇に背を預け待っていたセブルスを中に入れる。代わりにリアはそこから出た。
「リア? あいつらの所に戻るのか?」
「えぇ。荷物あるもの」
「そんなのあとでいいじゃない。リア、一緒に乗りましょう?」
にっこりとリアを見るリリーに、リアは少しだけたじろいた。
無邪気な笑顔に毒気を抜かれるような。リアには少し苦手な笑顔だった。
「誘ってくれてありがとう。
でもごめんなさい。また後で」
残念そうに顔を俯かせるリリー。
リアは苦笑を零して、ジェームズ達のコンパートメントに戻った。
戻った瞬間、ジェームズがリアの両肩に手を乗せてきた。
怪訝そうな顔をしたリアが冷たくジェームズを払う。
「何かしら」
「何でエバンズとスネイプが仲が良さそうなんだ?」
「仲が良さそうじゃないわ。仲が『良い』のよ」
そのまま黙ったジェームズを見たリアは再びリーマスの隣に腰を降ろす。
真っ白に燃え尽きている様子のジェームズを見て、リアは思わずくすくすと微笑んだ。
汽車がホグワーツに着き、リア達は揃って汽車を降りた。
その時、リリーが手を振ってセブルスから離れ、同じグリフィンドール寮生の友人が歩いていくのが見えた。
1人で進むセブルスを見て、リアはセブルスのみを見てジェームズ達に声をかけた。
「私、セブルスと行くわね」
「おい、待っ」
言葉をかけはじめていたシリウスには気付かずに、リアは既に駆け出していた。
セブルスの隣に並び、にこにこ笑うリアを見て、シリウスは不満げに横を向いていた。
そしてそんなシリウスの隣。シリウスの兄弟と思うかというほど仲がよいジェームズも不満そうだった。
タイミングを合わせた訳ではなかったが、2人の呟いた言葉は丁度重なった。
「「あいつ、ムカつく」」
後ろにいたリーマスは苦笑を零し、ピーターはただオロオロとジェームズ達を見ていたのだった。
(It didn't sound like a joke.(冗談には聞こえなかった))
冗談なんかじゃないからね。