最近、セブルスが怪しい。
待ち合わせの場所に遅れて来たり、突然いなくなったり。
それは私に隠し事をしているような…。
ただそれだけなら私も気にしないのだけれど、今までに2人の間に隠し事などなかったこともあり、やはり気になってしまう。
それを偶然図書館にいたリーマス・ルーピンと言ってみると、彼はクスクスと楽しそうに笑い、いつものチョコレートを渡してきた。
「リアはまるでスネイプと付き合ってるみたいだね」
「? 彼は私の友人よ」
確かにセブルスはいい人だけれど、彼はリリー・エバンスを好いているの。
私は応援する側だからね。恋人にはならないわ。
首を傾げているとリーマス・ルーピンはにっこりと微笑み、それ以上はごまかした。
何かもやもやとしたものが胸に広がる。
「何よ?」
「ううん。なんでも。
あ、ジェームズ!」
振り返るとジェームズ・ポッターがネクタイを緩めながら、私の隣に座った。
毎回、毎回、彼は良い意味で馴れ馴れしいと思う。
セブルスはその馴れ馴れしさが嫌いなんだろうけど。
リーマス・ルーピンが数回きょろきょろとしてから、彼に聞いた。
「シリウスはどうしたの?」
「んー…さっきまで、というか図書館の前までは一緒にいたんだけれどね」
何よ。あいつ、私の姿が見えたから引き返したわね。
私は苦笑を零しながら、ジェームズ・ポッターをチラリと見た。
「それは悪いことをしたわ」
「リアのせいじゃないって!」
慌てて私の前で両手を振るジェームズ・ポッターを少し煩く思う。
本当に私と彼の間には何もないのというのに。
溜め息と苦笑を零していると、ふと、ジェームズ・ポッターのローブに、どこで悪戯をしてきたのか赤いペンキがついていた。
私は彼のローブを引っ張る。
「どうしたのよ、これ」
「え? あ…、あぁ、さっき、ちょっとね。悪戯をしてきたんだ」
全く。物好きな人。
「…仕方ないわ。ほら、ローブを脱いで。落とせなくなるわよ」
「落としてくれるのかい? ありがとう」
にっこり笑ったジェームズ・ポッターに私も小さく笑みを返す。
杖を振るってローブの汚れを落とす。本当になんの悪戯をしてきたのだろうか。
疑問を抱きながらも、詮索する趣味もないし、面倒事は嫌い。それ以上聞くことは止めた。
「ほら、気をつけなさいよ」
「ありがとう、リア。良いお嫁さんになれるよきっと」
「余計なお世話。本当に余計。
じゃあ、私、行くわね。そろそろセブルスとの待ち合わせに遅れてしまうわ」
今日はセブルスと一緒に変身術の宿題をしようと約束していた。
立ち上がると、ジェームズ・ポッターが表情を歪めていたのを見つけ、私も怪訝そうに彼を見下ろした。
「何よ」
「リアはなんでスネイプとそんなに仲がいいんだ?」
「そんなの、私の友達だからに決まってるわ」
変なジェームズ・ポッター。いつもだけれど。
私はリーマス・ルーピンに話を聞いてくれたことに礼をいって、図書室から出た。
スリザリン寮に向かい、暖炉の前まで行くと、セブルスはもう変身術の教科書を出して待っていた。
彼はローブを脱いで、横に丸めておいてある。
「ごめんなさいセブルス、遅れたわね」
「いや、大丈夫だ。―――どうした?」
セブルスの顔をじっと見つめる。私はその髪に手を伸ばした。
確認するように静かに触れて、私は呟いた。
「………ペンキ。…ついてるわ」
「……………あぁ、本当だ」
赤いペンキ。私はこれをさっきも見た。
さっき彼のローブについていた赤いペンキ。それがセブルスにも、ついていて。
ジェームズ・ポッター、そしてあの人は何の悪戯を、『誰に』したの?
がたっと立ち上がった私の腕をセブルスが掴んだ。
「リア、やめろ」
「私、さっき、ジェームズ・ポッターのローブについていた赤いペンキを取ってあげたわ。
何をしたのか知っていたら、そんなことしなかったのに。
ねぇ、セブルス、何があったの? どうして私に言ってくれなかったの?
私だけ、何も知らないで…、私だけ呑気に…!!」
「リア、違う。リア!」
そして私は気付いた。気が付いてしまった。
ジェームズ・ポッターは、さっきまであいつと一緒にいたって言わなかった…?
「……セブルス。もしかして…あいつも…、関わってるの…?」
セブルスは深く黙り込んだ。あぁ、貴方は本当に正直な人ね。
ぎゅっと私を抱きしめるセブルスに、私はストンと腰を抜かしてしまった。
私もセブルスのことを抱き締め返す。
「…ごめんなさい……セブルス…」
囁いた私に、セブルスは顔をしかめて私をさらに強く抱きしめた。
(I'm so sorry I got you involved with something troublesome.(面倒な事に貴方を巻き込んでしまって、申し訳なく思っています))
大丈夫。お前は悪くない。