「僕、リーマス・ルーピン。君は?」
「…リア。今年入学よ」
「へぇ、僕もだ。
 同じ寮になれるといいね」

リーマスはニコと笑顔を浮かべたあと、傷だらけの手でチョコレートの包み紙をあけた。
自身の指先を見つめたままのリアは瞬きを1つだけしたあと、リーマスの方を見ることなく小さくつぶやいた。

「……私はスリザリンに行くの。
 貴方もスリザリンになるとは思えないわ」
「スリザリン? …あそこ、あまりいい話は聞かないけれど…」
「家が代々スリザリンの純血なの。
 もしグリフィンドールになんか入れられたら、勘当されてしまうわ」

数回の瞬き以外の動きを見せないリアを、リーマスがのぞきこみ、突然、リアの口の中にチョコレートを突っ込んだ。リアが噎せる。

「な、何するのよ!」
「無表情なんてもったいないよ。可愛いのに」

澱みなく言い切ったリーマスの台詞にリアが目を見開く。
リーマスはニコニコと笑ったまま、もう1つチョコレートを口に含んだ。

「君がどの寮になろうと構わないよ。
 例え寮が違っても仲良くしてね」
「…………変な人」

クスとリアが小さく微笑んだ。

そして口に入れられたチョコレートを思い出す。
些か甘すぎる気もしたが、リアの口にはあっている。

リーマスへの興味が湧いたのか、リアは自身の指先を見ることをやめ、代わりにリーマスを見つめた。

「チョコレート、ありがとう。とっても美味しかったわ」
「どういたしまして。
 よければまだあるよ。僕、甘いもの好きなんだ」

満面の笑顔のリーマスに、リアは笑みを浮かべ返している事に気がついた。

素直な笑顔など、久しぶり、だった。


(so far so good.(今の所うまくいってるよ))

それは貴方に会えたから


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