肩にはスピカが望んだ通り、オートボットのマークが刻まれていた。
スピカはいつもの玉座で、いつものマントに包まり、長い息をついて、ただ寝転がっている。
何度か肩を摩りながら、じわじわと残る痛みを紛らわしていた。
「スピカ! スピカ!!」
そこで荒々しい声が聞こえた。
彼女は呑気にくぁと欠伸をしたあとその身体を起こした。
身に纏うマントがずり落ちそうになって、スピカはそれを肩にかけ直す。
視線を音の方へ向けると、そこにはアイアンハイドの姿が。
「どうかしたの?」
「どうかしたじゃない。ラチェットからスピカが重傷だと…聞いた、のだが」
「それで。重傷に見える?」
「いや。いつものように、元気に見える。
……ラチェットめ、あとでスクラップだな」
ガチンと腕を打ち鳴らしたアイアンハイドにスピカはクスクスと笑う。
玉座に座り直したスピカは、玉座のすぐ隣に彼を呼び、そしてアイアンハイドは従い、側に座った。
「心配してくれたんだ」
「……おかしいとは思った。
重傷ならラチェットの研究所にいるはずなのに、ここにいると聞いたからな」
「でも信じたまま来ちゃったのね」
その言葉に黙り込むアイアンハイドを、スピカはやっぱり愛しいと思う。
にっこりと微笑んで肩を竦めると、アイアンハイドの表情がさっと変わって、その大きな手がスピカを押し倒した。
マントに仰向けにされたスピカが、ぽかんとアイアンハイドを見つめていた。
「な、に…?」
「――これは何だ、スピカ」
アイアンハイドの視線はスピカの肩に注がれていた。
視線を追って仰向けのまま横を向いたスピカが「えぇ」と小さく呟いた。
ずり落ちたマントからはオートボットの刺青が白い肌に見え隠れしていた。
「いいでしょう」
「いい訳がない!! これは何だ。何故ボディに!」
怒鳴ったアイアンハイドにスピカは困ったようにオートボットのマークが入った自身の肩に唇を寄せた。
その細く、小さな腕をアイアンハイドが力強く押さえ付けている。
ギリッと歯ぎしりにも似たことをしたアイアンハイドがスピカの身体から手を離し、怒ったように背を向けた。
ゆっくりと身体を起こしたスピカがアイアンハイドを不思議そうに見つめる。
「アイアンハイド…?」
そのまま彼はスピカのいる広い空間から出て行ってしまった。
スピカは寂しげにその閉じられた扉を見つめていた。
暫くすると閉じられた扉からラチェットが姿を現わした。スピカがムスとラチェットを見つめる。
「ラチェット、嘘ついちゃ駄目よ。
私は怪我をした訳じゃない」
「別に嘘はついていない。それは怪我をしたことに変わりはないからな」
さらっと答えたラチェットがスピカの側に近寄り、片膝を付く。
気を遣うようにスピカの肩に指先を触れさせた。
「アイアンハイドは怒っただろう」
「………うん。とても。
彼って『女の子の肌に〜』ってタイプだったんだ」
肩を撫でながら呟いたスピカ。ラチェットはスピカの頭を指先で優しく撫でた。
「…あぁ、この次怒られるのは、私かな」
苦笑をこぼすラチェットにスピカは困ったように愛想笑いした。
「ごめんなさい。貴方も大人しく怒られてあげて」
(vexing. 悔しい)