「戦艦ネメシスに乗ってメガトロンを探しに行ったのは、いつものスタースクリームとブラックアウト。運転にバリケードとフレンジー。
そうそう、ボーンクラッシャーとメガザラックもいる。
もしかしたら、旅の途中で運悪く出会ってしまうかもしれないわね」
「なんでそんなに詳しいんだ?」
宇宙船『アーク』を準備している間、スピカは技術兵のアイアンハイドと話していた。
大地に座っているアイアンハイドと巨大な岩に腰掛けるスピカ。大きな身体と小さな身体が不釣り合いに並んでいた。
2つは会話をしながら働く仲間達を見ていた。巨大な宇宙船に大量の資材が運ばれていく。レッカーズが最中チェックをしているのか、所々で威勢のいい声が飛び交っていた。
そんな空間の中でアイアンハイドから発せられた疑問に、スピカはクスクスと優しく笑う。
「スタスクに直接聞いたの。仲いいんだよ、私達」
「……実はどっちの味方だ?」
「私は私の味方。
オプティマスもメガトロンも応援してる。頑張れ。って」
「……」
無邪気なスピカは再びクスと笑う。が、アイアンハイドはスピカの笑みに表情を険しくさせた。
彼にとってこれは戦争であり、敵は倒すべき、殺すべき存在だ。
その敵を、しかも地位の高い航空参謀であるスタースクリームを友達だと思っているその少女が、彼の悩みの種でもあった。
それでも少女の無邪気さに救われている兵士は少なくない。
スピカはサイバトロン星の姫君として、絶大な力を誇っていた。
それほどまでに、先代プライム達はスピカを溺愛していたのだ。
あのメガトロンですら、スピカと交友関係にあったという。
アイアンハイドもその1人ではあった。力のない、押せばすぐ潰れてしまうスピカを、守る兵士であろうと、何時の日か彼はスパークに決めていた。
それほどまでにスピカの存在はサイバトロン星に住んでいるものとしては大きなものだった。だからこそ、どうしても強くは言えないでいた。
苦い顔をするアイアンハイド。
そこで突然、アイアンハイドに金属板が飛んできた。彼の頭部に当たった金属板が響かせる鈍い音に、スピカは驚き、肩を飛び跳ねさせた。
敵襲か、とアイアンハイドが咄嗟にスピカの身体を両手で包み込む中、声が響いた。
「アイアンハイド! サボっていないで手伝え!」
彼ら達が見上げると宇宙船の近くでラチェットが苛々した様子でこちらを見ていた。
危険性がないとわかり、にこにこと微笑んだスピカは、アイアンハイドに包まれた手に軽く触れながら立ち上がり、大きく手を振る。
「あはは。怒らないでラチェット。私が働いていたアイアンハイドを引き止めたのー!」
「アイアンハイドを甘やかすな。スピカ」
「ラチェット。どういう意味だ、ソレ」
呻くアイアンハイドが立ち上がり、岩に座ったスピカから手を離して、彼女に振り返った。
スピカは岩の上に再び腰掛けて、変わらず手を振っていた。
「いってらっしゃい。アイアンハイド」
「まて、スピカはアークに乗るのか?」
スピカは微笑んでいた。
「私はこの星が好き」
アイアンハイドがほんの数瞬だけスパークを寂しく煌めかせた。
少女はついて来ないのだと思うと、立ち止まった足がもう1度動き出すのに暫く時間がかかった。
彼女を護る使命はいつの間にか終わってしまっていたのだ。
(be left over. のこされる)