宇宙に出て、離れていく故郷を、彼らは無言で見送っていた。

金属が溢れるその星が、遠ざかっていく。言葉はまだない。まだない。

「………スピカ、体調はどうだ?」

ラチェットの声に船員がはっと動き出した。少女は窓の縁に腰をかけ、じっと小さくなるサイバトロン星を見つめていた。
その故郷を最後まで見送ったあと、スピカはゆっくりとラチェットへ振り返った。

そして立ち上がり両手をバンブルビーへと伸ばした。バンブルビーはきゅうと音を零しながらスピカを抱き上げる。

バンブルビーの肩の上で少女は改めてラチェットに向いた。

「さっき、少しクラクラしたけど、想定内。
 さらに、無重力空間に入ったみたいだけど、体調に変化はなし。
 とっても元気よ」
「つくづく不思議な身体だ。1度本気で解剖させて――」
「やめろ、ラチェット」
「――冗談さ」

スピカに詰め寄るラチェットに、不機嫌そうな声を出すアイアンハイドが止めた。

にこにことしながらスピカはバンブルビーに身体を預け、スッとオプティマスを見上げた。

笑いながらスピカは口を開く。

「見付かるよ」
「スピカ?」
「オールスパークも、センチネル・プライムも、見付かるよ」
「それは、予言か? 期待か?」

オプティマスはバンブルビーの掌に乗った小さな少女に視線を向けた。少女の浅い笑みは変わらない。

「これは『未来』だよ。オプティマス・プライム。
 遠すぎる未来に、探し物は見付かる。
 ディセプティコンの破壊大帝も一緒にね」

笑う少女にトランスフォーマー達は押し黙った。

オールスパークが先か。メガトロンが先か。

微笑んだスピカはバンブルビーの頬に軽いキスをした。


(look into the future. 未来を見る)


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