戦いは、長く長く続いていた。
少女はその戦いを長い間見つめつづけていた。
オートボットにつくことも、ディセプティコンにつくこともなく。
長い間、ずっと。中立の立場として。
どちらにもつかない理由は扱く単純で、どちらにも大切な友人がいたからだ。
元は1つの纏まりだった彼ら。そして少女は彼らが1つの纏まりであった時からこの世界にいたのだから。
彼女は、争い始め、両極端に分かれてしまったその、どちらにも付くことが出来ないでいた。
先代のプライムが途絶えてから、長い時が経ち、そして少女の周りはやがて変わってしまった。
少女は先代のプライム達が残した宝として扱われ始めたのだ。
宝をどちらかの手元におけば、戦力的に指揮はあがる。
少女――スピカにも、両軍、どちらかにつかなくてはならない時が来たのだ。
更なる争いを増やさないためにも、スピカは選ばなくてはならない。どちらかの核となる存在になるのだ。
スピカは1人、荒れた地を見つめながら、背中にかけられた声に振り返った。
「スピカ、共に来い」
ディセプティコンのリーダーであるメガトロンは言った。
スピカは、メガトロンと友人という、彼にとってはただ一つの、そして最高の地位を得ていた。
少女は静かだった。静かに荒野を見つめなおし、友人の言葉を内心で繰り返した。
暫く止まったあと、スピカはメガトロンへと手を伸ばそうとした。
静かなまま伸ばそうとする手を、スピカはぴたりと止めてしまった。
悩むように手を降ろすスピカがメガトロンの赤い瞳を見つめた。
「………行けない。
私、行けないよ、メガトロン」
「何故。
オプティマス達の方がいいというのか!!」
「違う」
スピカの即答にメガトロンの表情が怪訝そうなものへと変わる。
少女は寂しげな笑顔を浮かべていた。
辛そうな瞳をメガトロンへと向けたまま、彼の姿を見上げていた。
「……好きな奴が、いるの。オートボットには。
だから、行かないの…。行けないの。それだけ」
メガトロンの動きが止まった。睨みつけるようにスピカを見たあと、彼女の小さな身体を掌へと上げた。
従順に掌の上で座ったスピカは寂しそうにしながらもメガトロンの金属ボディに触れていた。
メガトロンは小さく囁くように少女へと語りかける。
「……くだらないな」
「えぇ。私もそう思う」
「わかっているなら、何故」
彼のその言葉に、スピカは優しく微笑んだだけだった。メガトロンの呆れた吐息。
「……くだらない。本当にくだらん。
恋も、愛も。必要ないだろう」
「貴方にはいらないかもね。
でも私は『人間』だから。弱いのよ、人間って」
「軟弱」
「ふふ。ごめん。あぁ、ごめんってば、突かないでよー」
スピカは指先でメガトロンに突かれ、くすぐったそうに、あははと笑い声をあげる。
金属生命体の彼にも小さく笑みが浮かぶ。
その力加減は柔らかいスピカを傷付けないようにされている。
それを破壊大帝の優しさととったスピカはさらに楽しげに声を上げた。
指先を両手で掴み、微笑んだまま自分の額を擦り合わせた。
「貴方はいつまでも私の友達でいてね、メガトロン」
「………あぁ、我が唯一の友」
友人だからこそ、相手を信じて、敵になろう。
(friend. 友)