彼女は朝から元気である。

跳ね回るように庭を行ったり来たりする彼女を見ていると、よく体力があるものだと思ったりしてしまう。

そうして俺に纏わり付くように抱き着いてきたユースには些か幼過ぎるイメージがついていた。
まぁ、ベルドリトも年相応の行動は滅多にしないのだが。

「イェスパー! 今日が何の日か知ってる?」

質問を受け、俺は考え込む。さて、今日は何の日だったか。

「たしか…」
「うん、うんっ」
「………『世界友情の日』だったか。
 ボーイスカウト・ガールスカウトの創始者ベーデン・パウエル卿夫妻の誕生日に因んだもので、1963年のボーイスカウト世界会議で制定し、1965年から実施されているようだ。ちなみにWikipedia引用」

言い切ったあと彼女を見ると、ユースは見るからに肩を落とし、明らかに落ち込んでいた。あまりの変わりように面白さすら覚えるくらいだった。

「違うのー! 2月22日はね―――」
「『猫の日』だろう?」

彼女のが答える前に、さらりと答えてやるとユースの顔は笑顔に包まれた。嬉しそうに俺の腕に絡み付いてにっこりと笑った。

「凄ーいっ イェスパーにはあまり期待してなかったのに!」
「………先ほどベルドリトに教えられたばかりだ。わざわざ猫の耳の髪飾りを持ってな」
「わー。凄い頭にはっきりと浮かべられるその光景!
 じゃあ猫の日の由来は?」

ユースの問いに俺は1度固まる。
が、ユースが「知らない?」という視線を向たのが癪だったのでぼそと答えた。

「にゃ、ニャン<2>、ニャン<2>、ニャン<2>だから猫の日…だ。
 頼む。笑うな、あと黙るな」

片目から見えるユースが笑顔で俺を見ている。頼むから無言はやめてくれ。
そう思っていると、ユースは微笑みながら俺の頬に手を当てた。

「ニャンとか言うイェスパーが可愛い」
「………………煩い」
「イェスパーがにゃんこちゃんでも凄くいいな」
「断固拒否する」
「イェスパー、顔真っ赤だよー」
「う、る、さ、い!」

明らかに俺をからかっているユース。ベルドリトにも言えることだが、どうにも彼女達が俺をからかい始めた時、どうにも逃れることができない。
ユースは口元を押さえながら笑いを零していた。

俺は頬を触っていたユースの手を掴み、引っ張り、仕返しとばかりにユースの耳元で囁いてやった。

「……世界友情の日の別名は『愛の日』だ。
 ――――愛されたいか?」

予想通り顔を深紅に染めたユースを見返しながら、俺は口元に弧を描いた。

ユースが悔しそうに、赤い顔で俺を睨んでいた。一枚上手を取れたことが満足で仕方がなかった。


†††


それを近くで見ていたのはベルドリトだった。

「……はぁ。あんなにいちゃいちゃするなら早く付き合っちゃえばいいのに」

本人達が無意識の甘い空間。ベルドリトは手に持っていた猫耳カチューシャを寂しげに揺らした。


(猫好きな私の猫の日)

「またそーゆー人を期待させるような事を……」
「期待? 何のだ?」
「馬鹿。イェスパー馬鹿鈍感!」


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