04
「あ〜なんで私たち月桂冠つくってるん・・・」
もういやだよパトラッシュ。なんで社内マラソンの参加者におくる月桂冠を私達が作らないといけないのだ。
参加者みんな平等に、とか足並みそろえてゴールする保育園じゃないんだから・・・
画用紙を葉っぱの形に切りとり輪っかにしたリボンにボンドでちまちまと接着していく。
リボンは頭のサイズに合わせて調整できるように、とのことだ。
そんなの、画用紙を長方形にきって後ろを輪ゴムで止めて伸縮性を出せばいいじゃないか!なんでわざわざおしゃれにしたがるんだよ!あのクソはげおっさんも被るんだぞ!お前が被るのはカツラじゃ!!!
「公子。うるさい。黙ってやって」
「ぅぃ」
こんなにイラついている同期を見るのは、パソコン慣れしていない上司が誤って会議用の資料ファイルを削除したとき以来だ。あの時の般若顔、一生忘れません。
時間を見れば、就業後2時間は経過している。もちろんサービスである。
経費で購入すればいいものを、手作りは心がこもっているからとそれっぽいことをのたまい、社員の労働力で補おうなんぞブラック企業の神髄である。
「あーもう、無理。てか会社にいたくない。家に持ち帰りたくもないけどここにいたくない」
「同感。今日は帰ろう」
家に帰っても黙々と月桂冠を作っていた。
一位には本物の月桂樹を使ったものを使用するとかで扱いにくい枝をペンチで切って、絡ませてリースをつくり、そこに月桂樹の葉の束を針金で留めるという作業をしなければならない。
正直言ってかなり面倒くさい。手も痛い。
今日が明日になろうとしている時間帯に私は睡魔に負けた。
*
わあああああああああ
どでかいドームに人々がひしめき合い、沢山のカメラやマイクもところせましと並んでいる。
お、何々〜今日はコロッセウム的な試合がある感じ?
いつものように俯瞰の視点から近視眼的になるように、ふわふわと近づいていく。
「やっぱ注目は1−Aだよなぁ」「雄英高校の体育祭楽しみにしてたんだよね」「ママ〜チョコバナナ食べた〜い」「サイドキック候補になるような子が見つかるといいですね」「1年生で
色んな年齢層の色んな人たちが、好き勝手に話している。話している声がこんなに鮮明に聞こえるのは久しぶりだ。無音だったり、途切れとぎれだったりすることの方が圧倒的に多い。
すいーっと観衆の間をすりぬけていくと、HEEEY!オーディエンスゥ!群がれマスメディアァ!と大きい画面にごつい装備の派手な人が現れた。
「今年もお前ら大好きな高校生たちの青春暴れ馬!雄英体育祭がはじまりEvery body!?Are you ready!?」
この人YEAAAAの人じゃん!声だけじゃなくて、動きも顔もうるさいな〜。面白いと思ってたけど声がよく聞こえるのも難点になることがあるんだな〜。
てかYEAAAAAの人、その髪どうなってるんよ。鯱じゃん。おぬしのコードネームはいまからシャチホコじゃい。
ドーンドーンと花火が上がり、ファンファーレが鳴り響く。
「雄英体育祭!ヒーローの卵たちが我こそはとしのぎを削る年に一度の大バトルゥ!どうせてめぇらアレだろお!?
ほんほん、なるほど。これは体育祭なのか、とシャチホコの説明に頷く。
これだけの規模の体育祭ってすごいな〜と我が夢ながら感心する。
シャチホコは続けて、入場する組を声高々に説明していく。
観戦席の中央真上にガラス張りの実況席のようなところがあるのを見つけた。実況席とはつまり特等席である。ならば私もそこで見るしかないだろう、とふよふよと浮いてそこへ侵入した。
壁でもなんでも通過するよ〜なんてったってここは私の夢〜思うがまま〜
え!?シャチホコだけと思ってたら、ミイラがいるんだけど!?
胸郭は動いてるから、生きてはいるのか・・・?え、大丈夫?くるくるミイラの周りをまわるがレスポンスはない。
夢の中では私が主体になることは基本的にはない。それが、たまーに私の方を見てるようなみてないような、そんな目線があるときもあるのだ。今日は前者の夢のようである。
シャチホコはうるさいから、ミイラの右側から会場をのぞき込む。おほー!よき眺め!さすが実況席!
会場中央ではセクシーなお姉さんが鞭をかざして選手宣誓の生徒を呼んだ。バクゴーカツキが宣誓するらしい。
バクゴーカツキは両手をジャージのポケットに突っ込んだままという不遜な態度で壇上し、片手をあげることもなく宣誓した。
「せんせー。俺が一位になる」
不遜ー!不遜の極み!バクゴーカツキはスポーツマンシップにのっとり、正々堂々と戦うことを誓うということを小中で学ばなかったのか!?これが義務教育の敗北・・・・っ
あの子やばいね!とミイラの肩をバシバシ叩くが、もちろん無反応である。
セクシーなお姉さんの後ろのどでかい映像が現れて体育祭第一種目が表記された。
4kmの障害物競走らしい。4km走りきるだけで死ぬる〜
総勢160名の生徒が一斉にスタートし、障害物競争が始まった。