七武海への加入を拒否した名前と大将赤犬との激突は世界に広く報じられた。たった1人の女を討ち取るために動員された軍の数は数百人。その指揮を採った人物が赤犬だった。誰もが赤犬を前にした彼女が、逃げ出すか、もしくは敗北することを予想しただろう。
しかしその予想は大きく裏切られることになった。名前は赤犬を前にしても決して背を向けることはせず、最期まで戦い続けたのだ。
赤犬の手が、今しがた自身の手で逃がしたドフラミンゴやクロコダイルに及ばないように。
赤犬に胸を貫かれた名前は自身の終焉を悟りながら、彼の腕を掴み、微笑んだ。その微笑みを前に、赤犬は間もなく敵ながら見事な最期を迎えようとする名前に問うた。
なにか言い残すことはないか、と。
すると彼女はとても美しく微笑み、告げた。
「愛しい男達に愛された最高の人生だったわ」
次の瞬間、名前は自身のこめかみ目掛けて引き金を引いた。すでに自由の効かないほどの致命傷を与えていたはずの左腕での凶行を赤犬は止めることができなかった。
パンッ。
乾いた音が荒野に響いた。即死だった。さすがはプロの殺し屋というべきか、寸分の狂いもなく名前は急所を撃ち抜いたのだ。
胸に貫通した赤犬の腕を支えにだらりと力なくぶら下がる彼女に赤犬は最期までしてられたと舌打ちを漏らした。
すべてが彼女の描いたシナリオ通りになってしまった、と。
* * *
◯年後。七武海の定例会議のため、海軍本部を訪れたクロコダイルは会議の開始時間までの時間を潰すためにバルコニーで葉巻を吹かしていた。葉巻に添えられた右手の薬指にはあの日名前に無理矢理与えられた○があしらわれた指輪がギラギラと光っている。
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