「マクギリス、ごめんなさい、忙しいのに。」
「いや、かまわないさ。君の頼みなら。」
相談があるとルチアが私の元へ訪れる。
いつになく、彼女の瞳は真剣で、なにか思いつめた様子だった。
「君が相談事など珍しい。何かあったのかな?」
「あの、マクギリスに聞きたいことがあって。」
「何かな?」
「もし、私が誰かと結婚したら、どう…思う?」
「この前の話の続きかい?何か具体的な話でも?」
そういえば、この前も彼女はそんな話をしていた。
これほど気になるということは、具体的な縁談の話でも持ち上がったのだろうか。
政略結婚の多いセブンスターズ内ではよくある話ではあるが。
「ガエリオに、結婚を申し込まれて…。」
予想外の返事に、私も少々面食らってしまう。
以前から薄々感づいていたが、まさかガエリオがいきなり婚約に持ち込むとは。想定外だ。
「それで、返事は?」
「まだ…何も…。」
「なるほど。私にその事で相談したい、と。」
「もし、私がガエリオと結婚したら、マクギリスはどう思う?」
「‥君はいつも難しい話をする。」
何と答えればいいのか、考えあぐねて、二人の間に少しの沈黙が流れる。
ルチアの気持ちにはだいぶ前から気づいていたし、私もまた彼女に好意を持っている。
彼女に好きだと伝えれば、彼女を妻に迎えることは出来ないとはいえ、束の間の幸福な時間を楽しめるのだろう。
いずれは破滅を迎えるのだとしても。
アルミリアとの婚約を決めた時点で、もう道は決まっていた。
いつからか、自分の真意を隠すのが上手くなって、年々愛想笑いが板についていく。
彼女を失うことになるくらいなら、今はまだ、このままの関係でいい。
たとえ、それが自分の本心に背いても。
「ガエリオは誠実な男だ。きっと君を幸せにしてくれる。」
泣き笑いのような表情を浮かべた彼女のことは気づかないふりをして、何のしがらみもなく、彼女に好きだと告げられる友が羨ましくて仕方がなかった。