「カルタ姉様、お帰りなさい!」
「久しぶりね、ルチア。」
久しぶりに私の元へ訪れたカルタ姉様はとても疲れた様子だった。
噂では今回の任務での戦績が良くなかったらしい。
おそらく、お姉様は今回のことを気に病んでるのだろう。
私には軍や戦闘のことは分からないが、どうにかして力になれないかと考えずにはいられなかった。
「少しお疲れのようですね。」
「あら、そう見えるかしら?ルチアに心配されるようじゃ、私もまだまだね。」
「お元気ならいいんです。カルタ姉様が元気なら私も嬉しいですから。」
「素直な貴女といると嫌な気はしないわね。」
聞けば、カルタ姉様はこの後すぐまた戦場に戻らないといけないらしい。
忙しい身であるはずなのに、わざわざ私の顔を見に立ち寄ってくれたことが嬉しく感じられた。
そんなカルタ姉様との楽しい時間はあっという間に過ぎ、とうとうカルタ姉様が出立する時間となった。
別れ際、別れの言葉と一緒に、静かにカルタ姉様は私に問いかけた。
「ルチア、私はイシュー家の娘として上手くやれているかしら?」
いつも自信に満ち溢れているカルタ姉様が弱音を吐くなんて本当に珍しい。
よほど、今回のことが堪えたのだろうか。
カルタ姉様の問いかけに対して、私の答えは昔から決まっていた。
「もちろんです。カルタ姉様は私の憧れです。昔も、今も。」
「ありがとう、あなたは昔からまっすぐに私を慕ってくれたわね。それでこそ、私の可愛いルチアよ。」
「私にできることなら何でも言ってくださいね。」
「ありがとう。じゃあルチア、帰ってきたらまた紅茶をいれてちょうだい。」
そう言って、一度微笑んでから、カルタ姉様はいつものように凛と戦場へと旅立っていった。
それが私が見たカルタ姉様の最期の姿になるなんて。
その時の私は想像もしていなかった。