カルタの遺体を引き取りにきたルチアは目を真っ赤に晴らしていた。
「ガエリオ、ありがとう。カルタ姉様のこと助けてくれたって聞いて。」
「いや、俺は…間に合わなかった。…すまない、ルチア。」
「ううん、いいの。…それでも、ありがとう。」
悲しそうに俯くルチアを見て、カルタを助けられなかった自責の念が俺を苛む。
「ガエリオもまた戦場に戻るの?」
「ああ、俺はやらなくてはいけないことがある。カルタの仇もきっと取ってみるさ。」
「絶対に帰ってきてね。…私、大事な人がいなくなるの、もう嫌なの…。」
そう言って、彼女は祈りのような、懇願のような、そんな表情を浮かべた。
彼女のこんな姿を見てしまったら、彼女の元に戻らない選択肢などあるはずがなかった。
「ああ。お前の返事を聞くまでは死ぬものか。
帰ってきたら、この前の返事を聞かせてくれ。」
今度会った時に求婚の返事を聞く、というのが俺達の約束ではあったが、カルタが亡くなった今、そのことを話す気分にはお互いなれそうもなかった。
「…わかった。待ってる。」
心配そうに俺を見送るルチアに後ろ髪を引かれる思いをしながら、俺はアインと共に決着をつけるために、彼女の元を後にした。
*
…そうして私は戦場へと戻るガエリオを見送った。
カルタ姉様に不幸があったばかりなのに、この不幸が連鎖していくような気がして、何故だかとても嫌な予感がした。